第78回カンヌ国際映画祭で映画「ルノワール」が公式上映され、監督の早川千絵、キャストの鈴木唯、石田ひかり、リリー・フランキーがレッドカーペットに登場。ワールドプレミアとなった上映は、約6分間にわたるスタンディングオベーションで迎えられた。
「ルノワール」はカンヌの最高賞パルムドールを争うコンペティション部門に唯一選出された日本映画。1980年代後半の夏、11歳の少女フキが大人の世界をのぞきながら人々の心の痛みに触れていくさまが描かれる。
フランス現地時間5月17日、上映に先立ち行われたレッドカーペットには、早川がLEMAIRE(ルメール)の黒いワンピース、鈴木がComme des Garçons Girl(コム・デ・ギャルソン ガール)の白ジャケットに赤のチュールスカート、石田が桜模様の黒地の着物、リリーがBERLUTI(ベルルッティ)のミッドナイトブルーのタキシードで登場。海外映画祭初参加の鈴木は無邪気に飛び跳ね、海外メディアの視線を集めていた。
満席の上映会場シアター・リュミエールでは本編終了後エンドロールに入るやいなや拍手が巻き起こり、観客が約6分間のスタンディングオベーションを送る。日本メディア向けの囲み取材で、早川は「一番大きいリュミエールで上映するのは初めてでしたが、場内の熱気が段違いで、胸がいっぱいになりました」と感無量の様子。鈴木は「俳優を始めてたった2年でカンヌに行けてしまい、びっくりしています。自分が想像していた以上に観客の皆さんが反応してくれたり、『ユイ』って声を掛けてくれたり、(今までに自分が)見たことがないぐらいの数の人に映画を観てもらえて、すごくうれしかったです」と笑顔で語った。
石田は「海外の映画祭に参加するのは35年の俳優人生で初めての体験。海外の観客の『映画を観てやるぞ』という意気込み、クレジット1つひとつに拍手が起こることに驚きました。映画に対する真摯さと温かさを感じました」とコメント。リリーは「スタンディングオベーションをいただけるのはうれしいのですが、いつも『座持ちがしないな』と思っていたんです。でも唯ちゃんがいると何分でもできるなって、楽しかったです」と振り返った。
鈴木の魅力を尋ねられると、石田は「まだ幼いので深いところで本作のことを理解することはできない部分もあるでしょうが、ただただ自転車を漕ぐとか、そこに存在することができるところがとっても素敵だと思います」と絶賛。リリーは「撮影当時11歳で、何かになりかけている、その一瞬の夏を監督が切り取ったからこその生々しさと彼女の演技力がすごくマッチしている。演技だけではなかなか成立しない魔法の一瞬を早川監督が収めた、まれな映画だと思います」と語る。早川は「子供に演出をするのは難しいだろうなと覚悟を持って挑んだのですが、何も言わなくても演技をしてくれて、監督としては非常に楽でした。どうやったらこんなふうにできるんだろうなって思うことばかり。唯ちゃん様々でした」と、その才能に驚きを隠さなかった。
「ルノワール」というタイトルについての質問に、早川は「(前作の)『PLAN 75』がわりと作品の説明になるタイトルだったので、今回はそういうところから離れたいなと思い、意味をタイトルに持たせたくなかったんです」と回答。また「海外のメディアの取材を受けた中で『この映画はいろいろなエピソードがあって、点がどんどんつながっていき、全体像が見えてくる。そういったところが、印象派の絵画のようだ』とおっしゃっていただき、面白いなと感じましたね」とうれしそうに話した。
「ルノワール」は6月20日より東京・新宿ピカデリーほか全国でロードショー。
映画「ルノワール」予告編
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編集部の感想:
映画「ルノワール」がカンヌで初上映され、スタンディングオベーションを受けたことは非常に感動的です。鈴木唯さんの俳優としての成長と、その作品が異文化で評価される姿に期待が高まります。早川監督の独自の視点が描かれたこの映画、ぜひ観てみたいです。
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