5月のIGN Firstでは『ELDEN RING NIGHTREIGN』について様々な情報をお届けしている。この記事では、本作のリードバトルデザイナーである宮澤拓也氏へのインタビューをお届けしよう。
――フロム・ソフトウェアでゲームを作って、『ELDEN RING』や「NIGHTREIGN」といったタイトルに携われるのはどういったお気持ちでしょうか。
自分自身がソウルシリーズなどのいちファンであることも含めて、こういったタイトルに携わらせていただけるのは非常に光栄です。多くのファンがいらっしゃるので、身が引き締まると言いますか、緊張して臨ませていただいております。
――「NIGHTREIGN」の戦闘は『ELDEN RING』本編と異なるメカニクスも多いですね。スピーディなマルチプレイ体験によりマッチさせるために、どのようにチューニングしたのでしょうか。
「NIGHTREIGN」は『ELDEN RING』をベースに開発を進めています。『ELDEN RING』を土台として作ることでコストを抑えながら、新しいゲームルール、プレイヤーキャラクター、ボス敵により注力してコストをかけており、プレイヤーの皆さんがそれらを楽しめるように開発してきました。

『ELDEN RING』をベースにはしているのですが、実はゲーム性に結構大きな違いがあります。『ELDEN RING』はゆっくりと多くの時間をかけて探索していくゲームになっています。一方で、「NIGHTREIGN」は1セッションが40分~50分程度という、限られた時間のなかで遊ぶ作品です。我々は本作をショートRPGと呼んでいるのですが、RPGの面白さを凝縮して楽しんでもらうところに重きを置いています。『ELDEN RING』のシステムをただそのまま持ってくるだけでは「NIGHTREIGN」で楽しんでもらいたいゲームの流れがクリアに感じられないので、ゲームルールに修正を行う必要がありましたし、いくつかの要素を追加しました。
例えば、落下ダメージや移動制限がそうですね。「NIGHTREIGN」では高所から飛び降りても落下ダメージが発生しないし、壁に対してジャンそててよじ登ることもできるようにしています。より上軸にプレイヤーが大きく移動できるようにして、縦横無尽にハイスピードでマップを駆け巡ることができるようになっています。
ステータスの割り振りについて、「NIGHTREIGN」では出撃をするプレイヤーが探索を行うにあたって、8種類のキャラクターから選ぶところから始まります。キャラクターを選んであとはプレイヤーレベルが上がるごとに、キャラクターの種類に応じてステータスが自動的に伸びるようになっています。例えばタンクであればHPが伸びます。これはいくつかの狙いがありまして、ひとつは各キャラクターに応じてロールプレイをより楽しんでもらうための策になっています。もうひとつは、探索を行っている間に、できるだけメニューとにらめっこしている時間を減らしたいという思いがありました。敵とのバトルやフィールド探索により時間を使っていただこうということで、過去作にあったいくつかの要素を修正しています。
もちろん過去作のステータスの割り振り、あるいは落下ダメージが好きだったユーザーもいるのかもしれません。しかし、今作では『ELDEN RING』とはまた別の面白さを目指しています。抵抗がある方もいらっしゃるかもしれませんが、せっかくなので「NIGHTREIGN」の新しい遊び方を楽しんでいただけるとうれしいです。
――IGN Firstでは「夜の魔、リブラ」というボスのゲームプレイ映像を公開しているのですが、このボスの特徴について教えてください。
「NIGHTREIGN」ではボスの個性を重視しており、3日目に挑むことになる8体の大ボスについてはかなり際立った要素を意識して実装しています。「リブラ」については、戦闘前に取り引きができるという要素が特徴としてあります。「リブラ」は怪しい商人という設定もありまして、戦闘前にプレイヤーに取り引きを持ちかけてきます。取り引きの内容は強力な武器を手に入れるとか、過去作の「生まれなおし」に当たるようなステータスの再割り振りとか、多岐にわたります。もちろん、悪魔との取り引きなので、必ずしもプレイヤーにメリットがあるわけではありません。どのようにリブラの裏をかくかといった番外戦術ができることが大きな特徴のひとつですね。
もうひとつの特徴として、「リブラ」は二面性のあるキャラクターとなっています。戦闘中は強力な魔術師として魔法をトラップのようにいくつも配置して攻めてくるときもありますし、かと思えば今度は激高したパワーファイターのようにごりごり攻めてくるという、対極にあるような戦い方をしてきます。
――「リブラ」戦では仲間と協力しながらボスの攻撃を避けていくのが印象的で、MMOにおけるレイドバトルを彷彿とさせました。ボスデザインにおいてMMMOから影響を受けている部分もあるのでしょうか。
はい、いくつかのゲームを参考にしています。もちろん過去作のような、プレイヤーとボスの1対1の死闘感が味わえるデザインは今作においても心がけてはいますが、マルチプレイのゲームとして、それぞれのプレイヤーがボスと相対するときに脅威を感じられるように、より規模の大きな攻撃や、それに対してそれぞれが役割意識を感じられるような戦闘に仕上げるように意識しています。
また、いくつもの魔法が組み合わさっていくなかで、一番安全なところはどこなのかというパズルのような要素も取り入れています。アクションを見切るだけでなく、少し知的な戦い方が要求されるデザインになっています。
――「NIGHTREIGN」におけるキャラクタークラスのデザインについて教えてください。最初から特定のアーキタイプを目指しているのか、それともキャラクターデザインから入るのでしょうか。
オーソドックスな作り方をしています。魔法使いやタンクに技量戦士など、過去作にあったような、RPGにおけるいくつかのロールタイプを想定しています。いくつかのアーキタイプを選出して、それを元にディレクターからキャラクターのイメージを作ってもらって、そこからキャラクター作成をする形となっています。
スキルやアーツの個別の要素から入っていくよりも、最初に大きいレイヤーから考え始めます。ネットワークテストにも登場した「隠者」を例に説明すると、コンセプトは「魔法使い」で、まずプレイヤー目線で「魔法使いはどういった遊び方がしたいのか」、「どういった要素を求めるか」などを考えていきます。大量のアイディアを検討して、次の段階で必要なものに絞っていき、だんだんとゲームデザイン的な思考を入れていきます。例えば、高威力の魔法をたくさん打ちたいわけですが、では魔法を使用するためのリソース(FP)はどのようなシステムが望ましいのかといったことを考えていきます。複数の魔法を状況に応じて使い分けたいというプレイヤーの欲求を満たすためにはどういったシステムが必要なのかなど、プレイヤー目線からゲームデザイン側の思考によせていきます。
マルチプレイならではの楽しさも、各キャラクターに感じられるように意識しており、これを「便乗する楽しさ」と呼称しています。例えばネットワークテストにも出てきた「レディ」というキャラクターには「リステージ」というスキルがあり、直近で発生したダメージを再度、敵に与えることができます。これはもちろん、味方の行動を意識しなくても使用できますが、味方がアーツなどで大きくダメージを与えたときに、「リステージ」をあわせて使うことでより大きなダメージを与えることができます。味方のプレイに便乗する形でスキルを使うとより効果が得られるわけです。このように、マルチプレイならではの面白さがそれぞれのキャラクターに感じられるようにアイディアを盛り込んでいます。
――「レディ」の「リステージ」のように、ほかのプレイヤーのスキルと組み合わせて使うといった、キャラクター同士のコンボはほかにどんなものがありますか。
例えば、無頼漢はアーツによって自身の足元に岩の壁を作ることができます。これを敵に当てることでダメージを与えられるのですが、岩壁の上に弓使いのキャラクターが登ることで高台の上から安全に敵に攻撃できます。また、瀕死のプレイヤーを岩壁の上に運んでから安全に救助を行うといった、幅のある使い方が可能です。
僕のお気に入りのコンボとしては、「隠者」のアーツを使用すると敵に烙印をつけて、その烙印がついた敵を攻撃することで自身のHPとFPを回復できます。これを応用することで「アズール彗星」などのような高威力の魔法をFPを回復しながら打ち続けることができます。「隠者」を使うときはぜひ試してみてください。
――フロム・ソフトウェアのゲームとして、キャラクターにつきスキルやアビリティが最初から決まっているのは今作が初めてだと思います。これによって、ボスや敵のデザインに何か変化は現れたのでしょうか。
本作のプレイヤーキャラクターはそれぞれスキルやアビリティにアーツなど固有の要素がありまして、それらは等しく強力なものになっています。かといって、敵やボスに対して大きくそれを意識してデザインすることはやっていないです。プレイヤー側のアクションレベルと敵側のアクションレベルをあわせることも重要ではあります。しかし、プレイヤー側に用意された新しいアクションに対して敵側も追いつくような形で調整すると、せっかく用意された楽しいアクションを十全に楽しめなくなってしまうという懸念があったので、あまりプレイヤーのアクションを潰すような行動は意識して取り入れないようにしています。
ただ、せっかくプリセットされたキャラクターを選んでいただくので、よりキャラクターのロールを感じていただけるようにしています。例えばボス戦においてタンクのキャラクターならみんなを守ってあげるとか、戦いのなかでそれぞれのキャラクターが自分の役割を感じていただけるようにデザインを意識しました。
ボス戦も過去作の例に漏れず、非常にハードコアなものになっています。プレイヤー側が3人でボスに挑むわけですから、ボスも黙ってはいられず、過去作に比べても規模の大きい攻撃を繰り出してきます。例えばネットワークテストに登場していた「夜の獣 グラディウス」であれば分裂してそれぞれのプレイヤーにタイマンを持ち込んだりして、より脅威を感じられるように意識しています。
――宮澤さんが「NIGHTREIGN」において最も好きなキャラクターや、プレイヤーに楽しんでほしいビルドを教えてください。
僕自身が好きなキャラクターは「守護者」ですね。いわゆるタンクロールで、大盾を装備してがっつりと防御を固めてプレイしていくスタイルになります。初心者にも向いていると思います。アビリティとして、盾を構えているときに、追加で入力を行うことによって多くの敵の攻撃を受け止めることができるようになります。回避で敵の攻撃をジャストで受けることができるプレイヤーにとっても、安心して使えるキャラクターになっていると思います。
「このキャラクターを使ってしまうとこのボスには勝てない」といったことがないように調整していますので、好きなキャラクターを使っていただければと思います。これは古くのRPGから鉄板だとは思いますが、タンクロールがひとり、近接攻撃がひとり、魔法使いがひとりといった形で、バランス良いパーティの方がいろんな状況に適応できるので勝率が高くなるとは思います。ただ、ボスごとに個性があるので、とあるボスは遠隔のキャラクターが有効なのかもしれないし、別のボスでは遠隔のキャラクターだけでは非常に苦戦を強いられるといったこともあるかもしれません。
ボスにもプレイヤーにもそれぞれ非常に個性があるわけなので、例えば「隠者」でとあるボスを倒したら、今度は「守護者」で倒してみる、あるいは「隠者」3人で挑んでみるといった遊び方も試してみてもらえると非常にうれしいですね。
――最後に、宮澤さんの最も好きなゲームを教えてください。
先程も申し上げたようにソウルシリーズはいちファンとして非常に楽しませていただいていますし、他社タイトルですとスクウェア・エニックスさんの『ファイナルファンタジーXIV』を長い間、楽しませていただいています。
――ありがとうございました。
『ELDEN RING NIGHTREIGN』についてもっと詳しく知りたい人は新クラス「鉄の目」と「無頼漢」のインプレッション記事、ストーリーテリングについての紹介、ゲームマップがどのように変化するのかについての記事、それから大ボス「夜の魔、リブラ」のプレイ映像も確認してほしい。
🧠 編集部の感想:
『ELDEN RING NIGHTREIGN』の新しいバトルメカニクスには大いに期待が高まります。特に、短時間で楽しめるショートRPGとしての工夫や、マルチプレイの要素を取り入れている点が興味深いですね。従来の『ELDEN RING』とは違う体験ができそうで、ファンとして楽しみにしています。
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