『Beyond Citadel』体の一部が吹き飛んでも抵抗してくる者たちに、悪趣味を通り越して畏敬の念を抱いた。背徳を極めた傑作FPS【おすすめゲームレビュー】
 ファミ通.comの編集者&ライターがおすすめゲームを語る。今回、NeverAwakeManが『Beyond Citadel』を紹介する。

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NeverAwakeManのおすすめゲーム

  • プラットフォーム:PC(Steam)
  • 発売日:2025年1月3日発売
  • 発売元:doekuramori
  • 開発元:doekuramori
  • 価格:1700円[税込]
  • 対象年齢:―
  • 備考:日本語未対応

【こういう人におすすめ】
  • 世紀末的ダークを味わいたい
  • 銃器をリアルに操作したい
  • FPSが好きで好きで仕方ない!
 本当にすごいゲームを遊ぶとき、そこにはいつも衝撃と畏怖が伴う。
 すなわち、「こんなゲームが存在するのか!」という衝撃と「こんなゲームが存在していいのか?」という畏怖だ。
 今回紹介する『Beyond Citadel』というゲームは、まさにそうした作品だ。後にも先にもこんなFPSは遊べないんじゃないか? そう思わせるようなスゴみが、このゲームには存在する。

殉教の道をゆけ

 黙示録の時代。人類の文明の最後の瞬き。争いはなおも続いている。
 “喇叭吹き”と呼ばれる悪魔的存在が天より舞い降り、地球人口のうち
99億9985万6000人を滅ぼした。抗おうとした者たちは、喇叭吹きの放つ啓蒙波によって自我のない傀儡にされた。まだ正気を保っているごくわずかな生き残りはシタデルと呼ばれる場所にとどまり、いつしかそこはサンクチュアリと呼ばれるようになった。
 人類種の黄昏。衛星軌道上のポッドで永い眠りについていた少女が目を覚まし、荒廃しきった地上に降り立った。彼女の名前は
殉教者、またの名を聖遺物919号。その名が示すとおり、殉教者には天命が与えられている。シタデルの地底を支配する7体の喇叭吹きを滅ぼし、7つのアーティファクトを集めて人類を救うという天命が。

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 ……このあらすじでおおよそ察せられると思うが、
『Beyond Citadel』はすさまじくダークなゲームだ。
 いや、ひとくちにダークなゲームといってもいろいろある。たとえば、アッパーな暴力性がウリの『
DOOM』もダークといえばダークだし、高難易度でおなじみ『ダークソウル』は神話ファンタジー的なダークさが魅力だ。では『Beyond Citadel』はどうかといえば、世紀末的な救いのなさを予感せずにはいられないダークさが全編に漂っている。世界を救えと言われても、もう世界は壊れきっているじゃないか。思わずそう口にしたくなるような、ひどく不穏でじめついた破滅を思わせる。

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 本作は3Dのマップに2Dのオブジェクトを組み合わせた、いわゆる2.5DタイプのFPSだ。画面中央にまっすぐ構えた銃器と古めかしいスプライト表現は、一見するとチープな懐古趣味に見えるかもしれない。だがひとたび遊べば、そんな油断はあっさりと裏切られる。退廃的で、謎めいて、おぞましく、
いろいろな意味で非人道的なビジュアルをひっきりなしに浴びせられ、すっかり圧倒されてしまうからだ。
 とりわけ目を引くのは
ゴア表現だ。
 本作のそれは、ただ首や手足がちぎれて血が飛び散るなどといった生ヌルいものではない。頭を撃てば頭の半分だけが吹き飛んだり、胴を撃てば肋骨とはらわたが半端に飛び出たり、榴弾が爆発すれば上半身だけえぐり取られたりする。壊れていく人体は多段階に細かく描かれるし、ゲームオーバー時には殉教者の臓物が画面いっぱいにぶちまけられるという、ほとんど執着に近いこだわりゴア表現だ。

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 喇叭吹きに操られた者は生半可なことでは死ねないらしく、まだ使いものになるほうの腕で銃を握って弱々しく抵抗してきたりする。耳をすませば、息も絶え絶え目も虚ろになったそいつがヒュウヒュウと息を切らす音すら聞こえてくる。この、
いっそきれいに始末してやるほうが情け深く思えるほどの陰惨さといったら!
 悪趣味などという次元を軽く飛び越えて、どこか畏敬の念すら抱いてしまう。

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さっきまで命だったものたち。
 酸鼻を極める盛大なエログロを文字通り骨の髄まで味わえる。それが『Beyond Citadel』だ。
 遊んでいるところを他人に見られるのが憚られるほどにインモラルなこのFPSは、しかしそれゆえに、このうえなくユニークでおもしろい。もし仮に
、”血ゲーム”というジャンルがあったとしたら──Steamにはそのタグが実在する──『Beyond Citadel』はきっと、『DOOM Eternal』や『F.E.A.R.』といった名だたる血ゲームたちとその頂点を争う資格がある。

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“血ゲーム”。

コッキングが奏でる黙示録

 ビジュアル面だけでも十分すぎるほど異色なこのゲームを、システム面でも唯一無二たらしめるのが、偏執的なほどに細かく作り込まれたガンプレイだ。
 一般的なFPSであれば、リロードはワンボタンで完了する。ある程度リアル志向のゲームであれば、タクティカルリロード(ざっくり言うと、残弾数のところに30+1発などと書かれるアレ)や、マガジンを捨てるとその中の弾丸ごと捨てるといったリアルな要素が現れる。『Beyond Citadel』における銃器の操作は、こうしたリアル志向を限界まで尖らせたものといっていい。

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使用するキーがとても多い。
 どういうことかと言うと、このゲームではマガジンや弾丸の排出、装填、コッキングといった銃器にまつわる操作が、なんとそれぞれ別々のキーに割り振られている。プレイヤーは場面に応じて、これらをマニュアルで操作しなければならない。
 たとえば、西部劇に出てくるようなレバーアクションライフル。最序盤で手に入るこの古風な武器は、名前の通り、一発撃つごとにレバーを操作して排莢/装填を行う銃だ。これを手にして初めて複数の敵を相手にするときは軽いパニックに陥りかねない。なにしろ、
左クリックをいくら連打しても弾は一発しか発射されず、トリガーを引く虚しい音しか聞こえないのだから。

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 この場合、プレイヤーは右クリックでコッキングして空薬莢をエジェクトし、つぎの弾丸を薬室に送り込まなければならない。要するに、左クリックと右クリックを交互に押し、射撃→コッキング→射撃→コッキングとすることで、やっとまともに連射できるという寸法だ。リロードする際も、キーを1回押すごとに1発ずつ弾をこめることになる。
 こうしたコッキング周りの操作は、あとから使えるようになるポンプアクション式のショットガンやボルトアクション式の対物ライフルでもだいたい同じだ。なので、第一印象から想像するよりずっと早く操作を習得できる。
 その一方で、対戦車ライフルの長く重いボルトは右クリックを二度押して前後にガションガションと動かす必要があるといった、細かな違いもある。これが
武器ごとの手触りの違いを生み、没入感をより深めてくれる。

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対戦車ライフルは人体にも極めて有効だ。
 いちいちコッキングなどとまどろっこしいことやってられない! というなら、アサルトライフルやサブマシンガンといった脱着マガジン式の銃を使うという手もあるだろう。多勢を相手にするならフルオートでバリバリ撃てる銃のほうが頼りになるし、しかも痛快だ。
 けれど、今度はマガジン管理を慎重に行わなければならない。
 これは当然といえば当然だが、景気よくマガジンを捨てまくっていると、いざというときに素早くリロードするためのマガジンがなくなるからだ。よほど切羽詰まった状況でなければ、マガジン排出用のキーを押して弾丸を込め直し、マガジンを再利用したほうがいい。

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マガジンの状況は画面左下に表示される。
 もうひとつ重要なアドバイス。弾丸を撃ちきってリロードするときは、必ずコッキングして初弾を装填するのを忘れないようにしよう。さもなくば、敵を目の前にしながら弾が出ず返り討ちにあうという無様をさらすハメになる。
 射撃、コッキング、リロード、そしてコッキング。慣れてくると、これらの操作が生み出すリズムが気持ちよくなってくるはずだ。可動部の多いおもちゃをガチャガチャやっているときのような、プリミティブな快感がそこにはある。

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弾が詰まったときはコッキングを連打しよう。

上達のためのリアリティー

 ゲームにおけるこの手の”リアル”なシステムは、手応えがあるというよりただ煩雑なだけのプレイフィールをもたらしがちだ。重量制限や空腹度など、あまりに乱用されていて見るだけでアレルギーが出そうになるシステムもある。
 だが、『Beyond Citadel』のリアリティ溢れるガンプレイはそうした煩わしさとは一線を画している。なぜなら、それはただリアルなだけでなく、
プレイヤーに上達の余地をもたらしてくれるからだ

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 たとえば、射撃とコッキングのリズムを正しく刻めるようになったとき。撃ち尽くしたマガジンを捨てずに懐に戻し、遮蔽物に隠れてリロードする動きが身についたとき。
 あるいは、弧を描く弾道を予測して、長距離の狙撃を決められるようになったとき。トリガーを引きっぱなしてコッキングを連打することで、西部劇のガンマンのように銃を連射できることに気づいたとき。
 こうした瞬間すべてに学びと発見があり、上達の喜びがある。
 ぎこちなかったはずの操作がだんだんと手になじみ、いつしか、自転車に乗るように自然と銃器を動かせるようになる。ゲームシステムを頭に叩き込んでなんとか消化し、手と目の協調で敵をさばけるようになる。アクションゲームでもっともうれしいこの瞬間を、本作は何度となく提供してくれる。
 確かに、ブッ飛んだビジュアルとゲームシステムを持つ『Beyond Citadel』にはマニアックな難しさや緊迫感がある。しかしその一方で、
たどたどしさや理不尽さといったノイズはまるでない。なんともおそろしいことに、おそろしく複雑なシステムが、おそろしく整然とまとまっているのだ。

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溢れ出す、FPS愛

 本作の優れた点を数えだすとキリがない。
 たとえば、
どのステージも立体的かつ迷いにくい設計をしているところ。しばしばゴール地点からスタート地点がずっと遠く低くに見えるようにできていて、自分のたどってきた足取りの長さに驚かされる。接近戦から狙撃戦へとなめらかに接続されていたりと、ほかのFPSではふたつのステージに分けられていてもおかしくない要素がひとつのステージにぴったり収まっているのもじつに巧みだ。
 ゲーム全体のペース配分がとてつもなくうまいところも見逃せない。ただ平坦に難しくなっていくのではなく、大火力の戦車やメックを操縦できるステージに、疾走する列車を飛び渡るステージ、さらにはジェットパックで飛行しながら戦うステージまで、手を変え品を変えてプレイヤーを楽しませてくれる。

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 そして、殉教者のステータスとプレイヤーの腕前の双方が上がってくる終盤ともなると、戦闘の流れ自体も大きく様変わりしていく。遮蔽物を使ったスローな撃ち合いから、走りまくって撃ちまくるハイスピードな銃撃戦がくり広げられるようになるのだ。FPSにはいくつものサブジャンルがあるけれど、それを大きく横断して遊べるという点で、本作はある意味とてもオトクだといえる。

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重機関銃で弾幕プレイもできる。
 このゲームは効果音も念入りに作られていて、敵の攻撃の直前にはなにかしら特徴的な音で知らせてくれる。たとえば、銃を構えるジャキッという音であったり、ロックオンのピーッという電子音であったり。これらの効果音があるおかげで、FPSにおいて曖昧になりがちな「自分はどこから撃たれていて、いつ隠れればいいのか」が直感的に理解できる。さりげないが、これも本当によく練られた仕様だと思う。
 また、いかがわしい雰囲気からはおよそ考えられないほど間口が広く作られているのも、『Beyond Citadel』の美点のひとつだ。エログロ表現や銃器操作といった本作を定義づける要素すら、設定からオン/オフをこまかく切り替えられる。
 そのため、「ゴアは好きだけれどFPSは苦手」という人も、「FPSは好きだけれどグロいのは嫌」という人も、本作を手に取ってみることはできる。尖ってナンボのインディーゲームの中にあって、これほど幅広いプレイヤーに寄り添ってくれる作品はそうそう見られない。

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ゴア表現を”検閲”できる。
 ……『Beyond Citadel』を遊んでいてひしひしと感じたのは、FPSというジャンルそのものに対する愛情と造詣の深さだ。
 グロテスクでありながらも爽快で、複雑なのにわかりやすく、クセがあるけれど極めがいもある。過去の名作FPSをリスペクトしつつも、悪いところや遊びにくいところは大胆に調整し、ディープで独創的なFPSとして見事に成立している。その完成度といったら、作者のdoekuramori氏がどれほど多くのFPSを遊び、どれほど長くFPSについて考え続けてきたのか、うかつに想像すらできないほどだ。

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 もしあなたがFPSを好きであれば、『Beyond Citadel』のこともきっと好きになる。
 もしあなたがFPSをまだ好きでないのであれば、『Beyond Citadel』を遊ぶことできっと好きになれる。
 背徳的な傑作。人前では口にできないオールタイムベスト。このゲームを褒める言葉はまだまだ尽きそうにないが、ひとまず、このあたりでおしまいにしておこう。

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『Beyond Citadel』体の一部が吹き飛んでも抵抗してくる者たちに、悪趣味を通り越して畏敬の念を抱いた。背徳を極めた傑作FPS【おすすめゲームレビュー】

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