金曜日, 5月 16, 2025
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『肉体の冠』ジャック・ベッケル~牧歌的な風景から絞首台へ~ヒデヨシ(Yasuo Kunisada 国貞泰生)

🧠 あらすじと概要:

あらすじ

『肉体の冠』は、1952年のフランス製のモノクロ映画で、物語は美しい自然の中で始まります。ボートで歌いながら川を漂う娼婦たちと、彼女たちに絡むギャングたちの姿が描かれ、特に女主人公マリー(シモーヌ・シニョレ)と大工のマンダ(セルジュ・レジアニ)の関係に焦点が当てられます。マリーの恋人であるギャングのロランとの間で引き起こされる嫉妬や対立が、ついに致命的な結果に結びつきます。二人は逃避行の中でゆっくりと変わりゆく運命に翻弄される中、自らの選択がもたらす影響を味わうことになります。

記事の要約

この記事では、ジャック・ベッケルの映画『肉体の冠』についての感想が述べられています。映画の最初は、牧歌的な光景から始まり、徐々に緊迫した状況へと変化していく様子が描かれています。物語の中心には、娼婦マリーと大工マンダの恋愛関係、そして彼らが直面する暴力や裏切りの結果が展開されます。特に、マンダが自首する選択をする姿や、衝撃的な結末が印象深く、恋愛と運命の重みが対比されています。映画全体を通じて、愛の虚しさや罪の重圧が描かれ、美しい風景から暗い結末への移行が強調されています。

『肉体の冠』ジャック・ベッケル~牧歌的な風景から絞首台へ~ヒデヨシ(Yasuo Kunisada 国貞泰生)

© 1952 STUDIOCANAL

フランソワ・トリュフォーをはじめとするヌーヴェルヴァーグの監督たちに敬された数少ないフランス人監督の一人であるジャック・ベッケル。ジャン・ルノワールの助監督も務めたそうだ。ジャック・ベッケル作品をあまり見ていないので、何本か見ようと思う。1952年のモノクロ作品だ。

川をボートで歌を歌いながら漕いでくる集団。牧歌的で長閑な始まり。女たちが先に降りて酒場まで走って競争する。明るく平和そのもの。ただ彼女たちは娼婦たちらしく、客が眉をひそめる。そして後からやって来る男たちはギャング団の連中らしい。その娼婦の一人マリー(シモーヌ・シニョレ)が酒場のステージを作っていた男、大工のマンダ(セルジュ・レジアニ)のことが気になる。男と踊りながら、くるくると回転しつつマンダに視線を送る続けるマリー。ダンスの回転と一点を見つ続ける視線が特徴的に演出されているのが面白い。マリーの恋人であるギャングのロラン(ウィリアム・サバティエ)はマンダに嫉妬し、転ばせてからかう。マンダもロランの顎に腕で殴りお返し。後日再び酒場で出会った二人は決闘することになる。ギャングのボスのルカ(クロード・ドーファン)の仕切りで、1対1のナイフでの決闘。そしてマリーはロランを殺してしまう。誰かの密告で警察がやって来て、死体を始末する前に見つかってしまう。マンダは、大工の棟梁のもとで働いていたが、警察に捕まることを怖れてマリーと共に町を離れ、川沿いの田舎の家に身を寄せて二人は暮らしはじめる。大工の棟梁の娘が、娼婦であるマリーとマンダがキスしているところを見咎めて、「マンダには婚約者がいるのよ」と邪魔をするシーンが前半にある。娼婦やギャングたちと一般市民との隔たりが描かれている。マンダという男は寡黙で真面目な男。かつてはギャングたちの集団に属していたが、今は大工として真面目に働く一般市民。しかし、娼婦のマリーや旧友との出会いから、堅気の世界からギャングたちの世界へと戻っていく話だ。マリーが朝起きたときに隣のベッドにマンダがいない。しかし、マンダは早起きして庭でコーヒーを入れていた。このアクションが後で反復される。二度目にマリーが起きてマンダが隣にいなかった朝が反復されたときは、マンダは警察に自首しに行ったのだ。マンダは親友のレイモン(レイモン・ビュシェール)がロラン殺害の容疑で逮捕されたことをボスのルカから聞く。マリーに好意を寄せるルカが仕組んだ罠なのだ。親友を身代わりに出来ないとマンダが自首することを狙ってレイモンが犯人だと嘘の密告したのだ。マリーはルカに助けを求め、自らの肉体を差し出すが、ルカは最初からそんな気はなかった。刑務所に護送中にマリーの助力により脱走したマンダとレイモンだったが、レイモンは銃で撃たれて死んでしまう。そしてマンダはルカの策略とマリーがルカと寝たのを知って、警察まで逃げてきたルカを撃ち殺してしまうのだ。警官の銃を奪い、ルカに何発も銃弾を撃ち込むマンダ。しかしその撃つ場面は手元の銃を画面に入れずマンダのアップのままに銃声。壁の囲まれた密室での銃殺シーンは見事だ。最後は、マンダが町の広場でギロチンにかけられるのを、2階の窓から見つめるマリーで終わる。

川とボートは冒頭で長閑で幸福な風景として使われ、マリーとマンダが田舎で過ごす場面でもボートは使われる。そんな川での幸福感から始まって、最後は町の広場での絞首刑である。両極端だ。終り方がなかなかシビアで暗い。酒場でのダンスシーンも何回か出てくるが、くるくると回転する男女もの姿として象徴的に描かれる。最初の出会いで、マリーとマンダはダンスを踊っており、ラストでその情景がイメージとして繰り返される。ブロンドの髪に光を当てられたシモーヌ・シニョレのアップが何回かある。美しいというよりも、なかなか貫禄のある強い女性といった感じがした。

1952年/フランス/98分原題または英題:Casque d’or監督:ジャック・ベッケル脚本:ジャック・ベッケル、ジャック・コンパネーズ音楽:ジョルジュ・バン・パリス

キャスト:シモーヌ・シニョレ、ガストン・モド、セルジュ・レジアニ、クロード・ドーファン、レイモン・ビュシェール、ウィリアム・サバティエ、ダニエル・マンダイユ



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