🧠 あらすじと概要:
映画『火星大王、来たる ―ノストラダムス予言録より―』のあらすじ
1999年7月、東京は異様な静けさに包まれ、空には未知の飛翔体が現れます。少年・ハルオは祖父の家で「火星大王」と印刷された玩具を手にし、祖父が解読している予言書を思い出します。その後、巨大な火星大王が東京に降り立ち、静寂を破って凄まじい破壊を開始します。自衛隊は迎撃を試みるものの、火星大王の力に敵わず、都市が壊滅的な被害を受けます。
祖父はこの現象が、ノストラダムスの予言に基づくものであると考え、かつて彼が設計した巨大兵器「月光機」を起動することを決意。ハルオはその操縦者として、火星大王に立ち向かう運命を背負います。果たして、彼は火星大王に対抗し、自らの意志を示すことが出来るのか?
記事の要約
映画では、未来の東京で“火星大王”が降り立ち、直面する人類の恐怖と戦いの構図が描かれています。少年・ハルオが祖父の導きで古い予言書を結びつけ、対抗手段を見出すストーリーが進行。火星大王の威力に対抗するため、「月光機」を起動し、熾烈な戦闘が繰り広げられます。映画は予言や意志、破壊と再生をテーマにし、クライマックスではハルオが見せる人類の意志の強さが強調されます。最終的には、未来への希望が描かれ、物語は余韻を残したまま幕を閉じます。
1999年7月、東京は異様な静けさに包まれていた。
例年なら猛暑とセミの声が支配するこの季節。だがその日、空は灰色に濁り、まるで何かが降ってくるのをじっと待ち構えているかのようだった。新宿の高層ビル群が不気味な静寂の中に立ち尽くし、人々の視線はテレビの画面に釘付けになっていた。
「……繰り返します。現在、東京上空に未知の飛翔体が確認されました。大きさはおよそ200メートル……ええ、今までにないスケールの人工構造物です……」
報道キャスターの声が震えていた。
そのとき、少年・ハルオは祖父の家で古びた玩具を手にしていた。塗装の剥げたブリキ製のロボット。胸に「火星大王」とプリントされている。
祖父は軍事研究に関わっていた科学者で、退役後も天文観測と「予言書」の解読に没頭していた。
「これか……あの“恐怖の大王”ってのは……」
ハルオは玩具を見つめながら呟いた。
テレビでは、もはや正体不明の飛翔物体が新宿上空に達したと速報を伝えていた。その直後——雲が割れ、巨大な影が地上を覆った。
第二章:火星からの使者
空から降りてきたのは、まさしく火星大王だった。
その姿は、レトロ玩具そのままに、だが数十メートルに巨大化したブリキの巨神であった。鉄のような赤と黒の装甲、胸の砲門、無表情な双眼レンズ。玩具のような形態にもかかわらず、その存在には確かな「悪意」があった。
ビル風が狂ったように吹き荒れ、警報が鳴り響く。
「対空ミサイル、発射許可! 目標、火星大王!」
自衛隊の特機部隊が迎撃を開始するも、すべてが遅かった。火星大王の胸部が開き、光子砲のような閃光を放つ。
新宿の一角が一瞬にして蒸発し、アスファルトがガラスのように溶ける。
映像は全国に生中継された。
まるで、それが人類への「見せしめ」であるかのように。
第三章:予言の成就
祖父はその映像を見ながら立ち上がった。
「……来たのだな。“空から恐怖の大王が降りてくる”……マルス、すなわち火星の意志が、我らの文明を試しに来たのだ」
彼は書斎から、擦り切れた一冊の古文書を取り出す。ノストラダムスの予言詩集『諸世紀』——
その一節にはこうある。
L’an mil neuf cens nonante neuf sept mois,Du ciel viendra un grand Roy deffraieur,Resusciter le grand Roy d’Angolmois,
Avant apres Mars regner par bon heur.
「“アンゴルモアの大王”とは……古き兵器の象徴。そして火星とは戦いを意味する星。火星大王は、我々の過去の業を象徴する存在だ」
そして彼は、家の奥からある設計図を取り出す。
「これを使うときが来たのかもしれん……“月光機・試作零号”を……」
第四章:東京陥落
火星大王はその後も進撃を続けた。
新宿、渋谷、銀座——
かつて繁栄を象徴した街並みは、次々と踏み潰され、燃え落ちていく。
しかも、火星大王は一体ではなかった。
空が再び割れ、赤い稲妻が走る。
そして二体目、三体目の“兄弟”が飛来。
青銅のような装甲をまとい、レーダーのような耳をつけた別型火星大王が、それぞれ異なる兵装を持って現れる。
都市機能は完全に麻痺し、自衛隊のレールガン部隊も陥落。
これは戦争ではなかった。浄化であるかのようだった。
第五章:月光機、起動
東京湾岸の地下施設に、今も忘れられたまま眠る巨大兵器があった。
それは、かつて冷戦下の極秘計画で建造され、廃棄されたはずの人型兵器——月光機・試作零号。祖父・牧野博士が若き日に設計し、核の代替兵器として葬られた「非現実の巨兵」である。
「起動コード、入力完了……点火シーケンスへ移行!」
ハルオが祖父の指示のもと、操作盤に向かってコマンドを叩き込む。施設内の照明が赤く明滅し、巨大なカーボンチューブが液体水素を送り込む。
静寂の中、マグネティック・リフトの音が重低音で響く。
格納庫の扉が開き、月光機がゆっくりと立ち上がる——
その姿は火星大王とは対照的だった。白銀に輝く滑らかなフレーム、滑空翼と推進装置、そして胸部には**封印された魔導炉(アーク・ハート)**が鎮座していた。
「……月光機、出撃準備完了。出るぞ、ハルオ!」
「俺が、操縦するの?」
「これはお前にしか動かせない……“適合者”なんだ」
第六章:新宿上空の戦い
真夜中、新宿上空に光の残像を引きながら、月光機が飛来した。
破壊されたビルの合間、数体の火星大王が列を組んで前進している。まるでパレードのように、都市を破滅の静けさで塗りつぶしていた。
「ここから先には……行かせない!」
ハルオの声と共に、月光機がブースター全開で滑空する。
第一撃——エネルギーブレードを展開し、火星大王の一体の肩部装甲を削ぎ落とす。
第二撃——背中のスタビライザーから光子ランチャーを連射、赤い火星大王の視覚センサーを破壊。
「見たか……これが人類の“意志”だ!」
ハルオの体が震える。だが、火星大王たちは怯まない。
すぐに三体が連携し、砲門を一斉にハルオへ向けた。
その瞬間、祖父の声が通信機から響く。
「ハルオ、心を無にしろ。アーク・ハートは“感応”する……信じろ、月光機はお前と一つになる!」
第七章:最後の光線、そして撤退
三体の火星大王が一斉発射を開始する。
だが、ハルオは目を閉じ、操縦桿を離す。
すると、月光機の胸部が淡く光を放ち始める。アーク・ハートが開放され、結晶化したエネルギーが空間を歪めた。
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そして放たれる、最後の光——
「ルナ・インパクト」
夜空が裂け、音なき閃光が三体の火星大王を包み込む。
装甲が溶け落ち、空へ吸い上げられるように、彼らは粒子となって消えていった。
……残ったのは、初めに降りてきた“本体”の火星大王だけだった。
その巨体はハルオを見据えると、まるで意思があるかのように一歩退き、
光の柱と共に空へ舞い戻っていった。
彼らは敗北したのではない——ただ「観察を終えた」のだ。
第八章:その後、そして予言の続き
翌日。
東京の空は晴れ渡り、セミの声が戻ってきた。都市は半壊していたが、奇跡的に死者は少なかった。
ニュースでは、原因不明の“自然災害”と報じられている。
ハルオは祖父と共に、静かに火星大王の玩具を机に置いた。
「ねえ、じいちゃん……予言って、本当に当たってたの?」
「正確には“当てた”んじゃない。“起きうる未来を描いた”だけだ。そして人は、それを信じることで行動する。火星大王も……その意志の投影かもしれん」
ハルオは空を見上げた。
もし彼らが再び来るとしたら——
今度は、地球が試される側ではなく、応える側になっていたいと願った。
終章:予言の書、最後のページ
祖父の机の引き出しに、もう一枚の予言が隠されていた。
そして二度目の赤い空のとき、黒い月の王が地球を覆わん。人々は再び問い直す。
戦うのか、それとも——変わるのか。
ページの端に、誰かの走り書きがあった。
「火星大王、また来る」
(完)
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