🧠 あらすじと概要:
あらすじ
『波の数だけ抱きしめて』は、1991年公開の映画で、監督は馬場康夫。バブル時代の湘南を舞台に、恋愛と青春を描いています。中山美穂と織田裕二が主演し、彼らの大学生活と切ない恋愛模様が中心となっています。物語は、真理子(中山美穂)がアメリカに渡ることになり、小杉(織田裕二)が彼女への思いを告白できずにいる姿を描いています。ミニFM局の夢を追う仲間たちとの交流や、恋の三角関係が展開され、最後に待ち受ける苦い結末が印象的です。
記事の要約
この記事では、映画『波の数だけ抱きしめて』の感想が述べられており、バブル時代を背景にした作品であることが強調されています。特に、中山美穂の魅力や、織田裕二の役どころ、その他のキャラクターたちが醸し出す魅力が語られています。作品は青春や恋愛の葛藤を描く一方で、最終的には切ない結末を迎えることが示されています。また、音楽や小道具など、当時の雰囲気を再現する要素にも触れられ、バブル期の時代背景が映し出されています。ホイチョイ映画としての位置づけや、他の作品との関連性についても言及されています。
中山美穂の突然の訃報を聞いた前夜に偶然この映画を観ていたので、殊更大きな悲しみと喪失感にとらわれた。
彼女の美白肌が際立つ岩井俊二の『Love Letter』も素晴らしいが、日焼けした肌に派手めなメイクで健康的な魅力に溢れる本作もまた、彼女を偲ぶうえでは欠かせない一本だと思う。
共演は織田裕二。好き合ってるが、気持ちを伝えられずにいる大学生同士。仲間とサーフショップでバイトしながら、手作り感溢れるミニFM局での放送に夢中になっている。
湘南が舞台でサーフィンでは、前作とかぶっている気がしなくもない。正直、タイトルはいまだに混同する。
冒頭は1991年、真理子(中山美穂)の結婚式のシーン。参列した仲間たちの中に浮かない顔の小杉(織田裕二)。湘南までロードスターを走らせると、モノクロ映像が総天然色に変わり、回想へ。
1982年、クルマはダットサンのピックアップ。海沿いの道に”Yes, Coke, Yes”の真っ赤な看板が眩しい。
仲間や後輩には強気に出るが真理子の前ではモジモジする小杉のキャラは、当時の織田裕二の定番。
真理子はミニFM局でレコードを廻しつつ、語りも流暢にDJをこなすサーファー娘。両手の指をからめて、おまじないをする彼女の姿は、颯爽とマイクに向かって語る様子と共に輝きを放つ。
もうすぐ渡米してロスの親元で暮らさなければならない真理子。小杉が「行くな」と告白すれば、彼女も心変わりするのに、彼はその勇気が出せずにいる。
そんな真理子に軽薄な広告代理店勤めの吉岡(別所哲也)が猛攻をかけ、やきもきさせる展開。
当然中山美穂と織田裕二がメインで、次に目立つのは別所哲也だが、作品的に重要なのは、親友である芹沢(阪田マサノブ)と裕子(松下由樹)。
芹沢は送信機を作るほどの無線マニア。ミニFMの電波を次々と中継器で繋いでいくことで湘南エリアに放送を届ける彼らの夢を実現する技術班長。演じるのは個性派俳優として活躍中の阪田マサノブ。
そして本作随一の陽気で賑やかなキャラが、真理子の親友、裕子には、当時このポジションをやらせたら無双だった松下由樹。
いつもバカ笑いしている陽キャだが、小杉に恋心を抱いていることも匂わせ、気丈に笑って心で泣くピエロ的な演技には心を揺さぶられる。
要所に流れるのは松任谷由実だが、JDサウザー、ネット・ドヒニ―、カラパナ、TOTO、バーティ・ヒギンズといった、懐かしい曲が次々と流れるのも嬉しい。
輸入盤LPを開封して匂いを嗅いだり、盤面にスプレーかけたり、カセットテープに鉛筆さして弛みをとったり、小ネタも豊富。「TRIOからKENWOODへ」のポスターにも感涙。FM茅ヶ崎(KIWI)のジングルもそれっぽい。
吉岡が広告代理店のクライアントである専売公社(日本たばこですな)の夏キャン企画に、このミニFMを売り込み、中継機を繋いで放送を葉山のサムタイム(メンソールですな)の特設ステージまで届けることに。
湘南にクルマでやってくるお偉いさん連中に、真理子の放送を聴かせる。勝負企画を物語の真ん中に据えるホイチョイ映画お馴染みの手法。送信機がひとつでも壊れると電波が届かなくなるハラハラ展開。
最後にはどうにかうまくいくものの、苦い結末が待っている。ちょっとした成り行きで小杉と裕子が抱き合っているのを目撃した真理子が、大事な日の放送を録音で残し、渡米してしまうのだ。
「彼女は絶対に放送をどこかで聴いているはずだ」と吉岡に言われ、小杉はテープ放送を中断し「好きだ!愛してる!」と告白。
だが、その瞬間、クルマがトンネルに入って真理子はそれを聴けずに渡米。結果が冒頭の、他の男と結婚となるわけだ。悲恋で終わるホイチョイ映画は珍しい。
馬場康夫監督が「撮影中にバブルがはじける音を聞いた」と語っているように、これまでのキラキラした映画が、時代に合わなくなってしまったのだ。
バブル期を象徴するホイチョイ三部作の締めに相応しい余韻を残して、幕はとじる。
①『私をスキーに連れてって』(1987)②『彼女が水着にきがえたら』(1989)③『波の数だけ抱きしめて』(1991)④『メッセンジャー』(1999)
⑤『バブルへGO!! タイムマシンはドラム式』(2007)
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