土曜日, 5月 24, 2025
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『新世紀ロマンティクス』ジャ・ジャンクーとチャオ・タオ、人々の回復力を信じ続ける


『新世紀ロマンティクス』あらすじ

新世紀を迎え、未来への期待に溢れていた2001年。長江・三峡ダムのため、百万人以上の故郷が湖に沈んだ2006年。目覚ましい経済発展を遂げた2022年…。チャオは大同(ダートン)を出て戻らぬ恋人ビンを探して奉節(フォンジエ)を訪ね、ビンは仕事を求めて経済特区・珠海(チューハイ)を訪れる。時は流れ、ふたりはまた大同へ―。

索引

新たな命を吹き込む


 ウォルター・サレス監督によるドキュメンタリー映画『ジャ・ジャンクー、フェンヤンの子』(14)の中で、ジャ・ジャンクーはカメラへの感謝の言葉を述べている。カメラがなければ人生を知ることはできなかったであろうと。2001年から2022年までに撮られた映像で構成された『新世紀ロマンティクス』(24)は、まさしくカメラという機械への感謝に関する映画といえる。本作は自作の映像やアウトテイク、撮り溜めてきた映像、新たに撮られた映像等で構成されている。ジャ・ジャンクーは過ぎ去った時間を再構成して現在にバトンをつなげることで、過去のキャラクターに新たな命を吹き込んでいる。その中心に、ジャ・ジャンクーの長年に渡るパートナー、チャオ・タオがいる。ジャ・ジャンクーはカメラを介して最愛のパートナーの加齢を見つめている。移り行く中国の風景を見つめている。

 ジャ・ジャンクーはとにかく人の顔を撮るのが好きな映画作家だ。ジャ・ジャンクーが撮る無名の人々の顔は、主要なキャラクターと等価か、それ以上に深い印象を残してきた。ジャ・ジャンクーが市井の人々へ向けるまなざし、その愛情は、監督自身の人懐っこい印象をまるで裏切らないものだ。そして都市や地域との対話は、この映画作家がフィルモグラフィーを通して真摯に取り組んできたテーマでもある。たった22年の間に変わってしまった中国の風景。人々はこの地域から消えてしまった。労働者たちの映像の中には、既にこの世にいない人も含まれているかもしれない。ジャ・ジャンクーは、かつてそこにいた人たちを生き返らせていく。映画の中に“蘇生”させていく。しかしこの映画はただのノスタルジーに収まっていない。ジャ・ジャンクーが撮ってきた有名無名の人々の顔に新たな価値が付加されていくからだ。再構成された映像には、現在の地点から振り返るからこそ感じることができる、生き生きとした人生の断片がある。つまりジャ・ジャンクーは、かつてここにいた人々の顔に“名誉”を与えている。それこそがカメラという記録装置への感謝となる。

『新世紀ロマンティクス』© 2024 X stream Pictures All rights reserved

 本作には、ジガ・ヴェルトフの『カメラを持った男』(29)へのオマージュとして、『デジタルカメラを持った男』という仮題がつけられていたという。この映画には2001年から2022年の間に起きたカメラ技術の進化がそのまま投影されている。北京の都市風景を俯瞰するドローン撮影は2001年には見られなかったものだ。ジャ・ジャンクーやチャオ・タオが年を重ねていくように、都市やカメラ技術も年を重ねていく。何が可能になり、何が失われつつあるのか。進化への熱狂と退化の影がコインの裏表のような関係にある。ダムの建設により水没しつつある地域を描いた傑作『Yangtze川の感情』(06)のように、ジャ・ジャンクーの最大の関心は、解体とそこからの回復力にある。

チャオ・タオとの22年

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編集部の感想:
『新世紀ロマンティクス』は、時代の移り変わりと人々の存続を描いた感動的な作品です。ジャ・ジャンクー監督のカメラを通じて、過去の面影を蘇らせる手法が非常に印象的でした。人間の回復力と変化を見つめる視点に、深い感銘を受けました。

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