火曜日, 5月 20, 2025
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『対岸の家事』『続・続・最後から二番目の恋』 民放ドラマが描く多様化する家族のあり方


 『対岸の家事〜これが、私の生きる道!〜』(TBS系/以下、対岸の家事)が大きな反響を呼んでいる。

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 本作は、「自分は2つのことを同時にできない」という理由から専業主婦の道を選んだ主人公の詩穂(多部未華子)が、立場や価値観が異なる“対岸にいる人たち”と交流を深めていく物語。子供や仕事の有無に限らず、あらゆる生き方を肯定してくれる作品だが、その前提として現代社会に存在する対立も臆せず描いているところは特筆すべきポイントだ。

『対岸の家事~これが、私の生きる道!~』©︎TBS

 働くママ・礼子(江口のりこ)は専業主婦の詩穂を陰で「時流に乗り遅れた絶滅危惧種」と揶揄する。育休中の官僚パパ・中谷(ディーン・フジオカ)は少子高齢化や低成長に伴う社会保障制度のひっ迫を前提に「専業主婦は贅沢」と非難し、詩穂の夫・虎朗(一ノ瀬ワタル)が店長を務める居酒屋の若いバイトの女性も「男の人に甘えてる感じがする」と専業主婦への偏見を隠さない。

『対岸の家事~これが、私の生きる道!~』©︎TBS

 もちろん、そこには羨望や嫉妬、その他の複雑な感情が含まれているのだが「今や世間の専業主婦に対する風当たりはこんなにも強いものなのか」と驚かされた人が多いのではないだろうか。

 『続・続・最後から二番目の恋』(フジテレビ系)でも専業主婦として生きてきた典子(飯島直子)が、社会の中で感じている肩身の狭さを吐露する場面があった。昔から存在する「働く独身女性」と「専業主婦」の対立を挙げ、これまでは最終的に子供がいる専業主婦の方が幸せという風潮があったという典子。ところが、最近は女性も「黙っちゃいないぞ」という雰囲気があり、その中では自分だけ闘っていないような気持ちになるというのだ。

 女性の生き方は先人たちが闘ってきてくれたおかげで実に多様になった。「女性は結婚し、子供を産み育てることだけが幸せ」「女性は結婚したら家庭に入り、大黒柱の夫を支えるもの」といった考え方は廃れ、女性も社会で活躍できるようになり、結婚・出産後もキャリアを手放さなくてもいいような仕組みも少しずつ整いつつある。けれど、その結果、旧来は主流で、今も選択肢の一つとして認められるべきであるはずの専業主婦が肩身の狭い思いをさせられているというのはなんて皮肉なことだろう。

『続・続・最後から二番目の恋』©︎フジテレビ

 一方で、典子とは対照的な千明(小泉今日子)のように、かつては最先端だった「働く独身女性」も今ではもはや珍しくない。それどころか、一周回って“古臭い”生き方になりつつあるのかと思わされたのが、『対岸の家事』第6話だ。同回では、礼子が会社で行われる講演会の登壇者に、営業部時代の憧れの先輩で、社内で初めて女性管理職になった陽子(片岡礼子)を推薦する。しかし、部長は独身で子供がいない陽子を「ワークはあってもライフはない」とし、「出世するためには結婚も出産も諦めなくてはいけない」という誤ったメッセージを与えかねないという理由で却下するのだ。

『対岸の家事~これが、私の生きる道!~』©︎TBS

 共働き世帯が7割を超える現代では、礼子のように仕事と育児を両立させている女性が “ロールモデル”とされる。だが、そうやって持て囃すわりに、子供のことで仕事を早退したら同僚から白い目で見られたり、夫が家事や育児に参加してくれなかったりと、まだまだ壁があるのが現状。サブタイトルにもあるように「これが、私の生きる道!」と胸を張って言えたらいいが、どの道を選んでも間違っているような気にさせる今の社会を本作はリアリティを持って映し出している。

 ドラマは社会を映す鏡だ。女性だけではなく男性の描き方も変わってきており、『対岸の家事』の中谷は妻に言われたからではなく、自ら進んで育休を取得している。実際に2023年度の男性の育休取得率は30.1%を達成しており(※厚生労働省調べ)、筆者の周りでも夫が育休を取り、出産後早々に仕事復帰する女性が増えてきた。一方で、女性の育休取得率と比べると依然として低い状況にあり、やはりキャリアの停滞や遅れを気にする男性も多いのだろう。そのあたりの障壁も今後、ドラマで描かれるのではないだろうか。

『対岸の家事~これが、私の生きる道!~』©︎TBS

 前クールに放送された『日本一の最低男  ※私の家族はニセモノだった』(フジテレビ系/以下、日本一の最低男)では、保育士として働きながら2人の子供を育てるシングルファザーの正助(志尊淳)が「仕事をしながら子どもを育てるって、誰かが無理したり我慢したりしないと成立しないんです」と仕事と育児の両立について溢す場面があった。これもまた一昔前のドラマなら見られなかった光景だ。


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 また社会の変化や価値観の多様化に伴い、ドラマで描かれる家族像もどんどん豊かになっている。『日本一の最低男』では結婚式を夢見る男性同性カップルが直面する困難や葛藤が丁寧に描かれ、話題となっていたが、今期放送の『三人夫婦』(TBS系)では女性同性カップルの結婚式のシーンがよりナチュラルな形で挿入されていた。

 そんな同作は、男性2人、女性1人という3人での新たな夫婦の形を描く物語だ。ヒロインの美愛(朝倉あき)は彼氏の新平(鈴木大河)から提案され、元彼の拓三(浅香航大)と3人で暮らすことになる。突飛な設定のように思えて意外に理にかなっているところもあり、「1人で支える自信はないけど、2人なら支えられる気がする。経済的にも、もう1人いればグンと楽になるじゃん」という新平の主張には思わず納得してしまった。特に経済的な理由で子供を持つことを諦める人が多い今、夫と妻の 2人ではなく、複数人で子供を育てていく形もありなのかもしれないと思わされる。

『3人のカップル』©︎TBS

 同作と少しテーマが重なっているのが、『彼女がそれも愛と呼ぶなら』(読売テレビ・日本テレビ系)だ。主人公の伊麻(栗山千明)は複数の人を愛する“ポリアモリー”で、亜夫(千賀健永)、到(丸山智己)という2人の恋人と、高校生の娘・千夏(小宮山莉渚)と「全員合意の上」で共に暮らしている。本人たちが納得しているとはいえ、世の中的には1人の人間を愛することが正しいという風潮があり、反感を抱いてしまう人もいるだろう。だが、常識や独占欲・嫉妬心といった感情で相手を縛ることなく、尊重しようとする彼らの姿から学ぶことも多い。 

 今まで韓国ドラマやNetflix作品と比較され、「遅れている」「つまらない」と批判されることも多かった日本の民放ドラマだが、近年は時代の変化に合わせて、今を生きる人たちの声や新しい考え方を取り入れ、日々アップデートされている。本稿で挙げたような多くの人に共感を呼んだり、新たな知見を与えてくれたりする良質な作品も増えているので、改めて日本の民放ドラマに目を向けてみてはいかがだろうか。

■放送情報
火曜ドラマ『対岸の家事~これが、私の生きる道!~』
TBS系にて、毎週火曜22:00〜22:57放送
出演:多部未華子、江口のりこ、ディーン・フジオカ、一ノ瀬ワタル、島袋寛子、田辺桃子、松本怜生、川西賢志郎、永井花奈、寿昌磨、吉玉帆花、五十嵐美桜、中井友望、萩原護、西野凪沙
原作:朱野帰子『対岸の家事』(講談社文庫)
脚本:青塚美穂、大塚祐希、開真理
プロデューサー:倉貫健二郎、阿部愛沙美
演出:竹村謙太郎、坂上卓哉、林雅貴
編成:吉藤芽衣
製作:TBSスパークル、TBS
©TBS
©朱野帰子/講談社
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/taigannokaji_tbs/
公式X(旧Twitter):@taigan_tbs
公式 Instagram:taigan_tbs

tiktok:@taigan_tbs



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編集部の感想:
現代の家族の多様性を描くドラマが増え、特に『対岸の家事』では専業主婦の視点から現実的な対立と葛藤が描かれているのが印象的です。主人公が異なる価値観を持つ人々との交流を通じて成長する様子は、多くの視聴者に共感を呼ぶでしょう。こうした作品が増えることで、家族や生き方に対する理解が深まるのは喜ばしいことです。

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