HoYoverseは5月7日、『原神』Ver5.6を配信した。同アップデートを受けて、本作のガチャにあたるシステム「祈願」の画面に推定消費金額を示す表記が加わっていると、一部のユーザーが報告している。
国内外の複数のユーザー報告を見るに、アップデート後には祈願の説明部分が変化。ピックアップ★5キャラクターを獲得するために、米ドルでの費用の目安が1.98ドル~475.2ドル(約300円~約6万8000円)になると表記されている。
ちなみに筆者が日本国内からAsiaおよびAmericaサーバーで検証したところ、いずれの場合も推定消費金額などの表記変更は確認できなかった。日本語表示・英語表示ともに変更が見られなかったため、おそらくユーザーの年齢あるいは位置情報などに基づいて表示が変更されているものと思われる。
なぜ一部ユーザー向けに突然そうした表記が加わったのか。この背景には、米国FTC(Federal Trade Commission・連邦取引委員会)が『原神』を運営するHoYoverseを擁するCOGNOSPHEREに対して今年1月におこなった指摘がありそうだ(関連記事)。FTCの1月18日の発表では、COGNOSPHEREが子供に向けたガチャ関連の積極的なマーケティング行為をおこなっていたという主張に基づき、COPPA(Children’s Online Privacy Protection Act・児童オンラインプライバシー保護法)に違反していると指摘。COGNOSPHEREが2000万ドル(約28億6000万円)の罰金を支払う和解案に合意したことが伝えられた。また、COGNOSPHEREは16歳未満の子どもが保護者の同意なしに少額課金機能を利用できないよう、措置を講じることについても合意したとされている(関連記事)。
COGNOSPHEREは合意の際の声明で、FTCの主張の多くは不正確だという見解を示しつつも、コミュニティの信頼やプレイヤーに対する透明性を確保するために和解に応じたと発表。「今後数か月以内に未成年者向けの新たな年齢確認機能、および保護者の同意機能を導入し、アメリカのプレイヤー向けに仮想通貨や報酬に関するゲーム内での情報開示を強化します」と述べていた。今回の祈願画面の表記変更は、こうした事情を踏まえたものだろう。
なお、祈願画面の推定消費金額表記のほかにも、課金周りのUIで変更された箇所があることも報じられている(DBLTAP)。FTCは先述の主張において、『原神』では有料アイテムの表記を故意にわかりにくくしており、ゲーム内通貨の交換作業によって実際に消費する金額を誤解させようとしているとの見解を述べていた。これを踏まえてか、米国では祈願に必要なアイテム「紡がれた運命」を、米ドルで直接購入する表記に変更されているようだ。
これまで米国でもほかの地域と同じく「紡がれた運命」を購入する場合、まずゲーム内通貨「創世結晶」を購入。創世結晶1個あたり「原石」1個と交換をおこない、さらに原石160個につき「紡がれた運命」1個を獲得。そうして手に入れた紡がれた運命1個あたり1回の祈願ができるというシステムになっていた。

FTCとの合意を受けた措置と思われる動きはこのほかにも存在する。HoYoverse公式発表によれば、米国のプレイヤー全員に対して年齢認証プロセスが導入されるとのこと。米国のプレイヤーは5月20日までに認証を行う必要があるようだ。もしも7月18日までに年齢が確認できる情報を提供しなかったなどして認証に失敗した場合、アカウント停止などの措置が取られるという。さらに2026年7月20日までに認証を完了しなかった場合は、HoYoverseアカウントが永久削除される。米国限定ではあるものの、早急にプレイヤーアカウントの年齢確認がおこなわれていくようだ。
今回のCOGNOSPHEREの対応は、FTCとの合意に基づいた限定的な範囲のものと思われる。しかしインターネット上での未成年者保護は、世界各国で対応の見直しが課題として指摘されている状況もある。年齢確認などについても、今後日本国内のプレイヤー向けに導入されるかどうかは注目されるだろう
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