映画にしろドラマにしろ、“良い作品”とされるための重要な要素は何だろうか。それぞれの作品の根幹をなす脚本はもちろんのこと、やはりそれを体現する俳優の存在が欠かせないのは言うまでもないだろう。とくに、彼ら彼女らの“チームワーク”が作品の良し悪しを左右するものだ。
放送中のドラマ『人事の人見』(フジテレビ系)は、このチームワークというものが非常に際立っている作品だ。常識なんかに囚われることのない主人公・人見廉(松田元太)を中心に突飛な展開が連発するのだから、チームワークこそが物を言う。そんなチームの中でも目を引く存在が、新納慎也が演じる須永圭介である。

『人事の人見』©︎フジテレビ
Travis Japanの松田元太が主演を務める本作は、大企業の“人事部”にフォーカスしたオフィス・エンターテインメント。古い体質の残る「日の出鉛筆」の人事部に、おバカでピュアな青年(=人見廉)がやってきたところから物語ははじまった。彼は海外企業からヘッドハンティングされた超エリートなのだと噂されていたが、一般的な常識さえ欠けている変わり者。しかしこの社会の“当たり前”などお構いなしな彼のユニークな発想が、人々の凝り固まった価値観に風穴を開けていくのである。
そんな本作で新納が演じる須永圭介は、なかなかのダメ男だ。やり手のビジネスマンを装っているが、まったくと言っていいほど仕事をしない中堅社員。面倒なことはすべて他人任せで、人見が提案する突拍子もないアイデアにはひとまず苦言(不満)を呈する。ところが「日の出鉛筆」のお偉い方が人見のアイデアを気に入れば、すぐさまそちらへとなびく。現金な人物である。

『人事の人見』©︎フジテレビ
こう記しているといかにも須永が卑しい存在に思えてくるが、そういうわけでもない。普通の企業であれば仕事をしない人間なんてもってのほかだが、須永のダメな部分をほかの者たちが補完することで、本作がドラマとして成立していたりもする。まさにチームワークがあってこそのキャラクター。そのうえクセの強いキャラクターでもあるから、作品のアクセントにもなっている。それでいて新納のパフォーマンスは柔軟で軽やかだ。
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本作は各話ごとにメインとなる登場人物が変わる。第5話は“新納慎也=須永圭介”が主役の回だった。須永が自分のことを「人事部長」なのだと家族に嘘をついていたことが、やがて人見たちを巻き込むドタバタ喜劇へと発展していたったのだ。いつもはこの作品のアクセントだが、こういったときに演じ手の力量が表れるもの。新納はチームのトップに躍り出て、やはり柔軟かつ軽やかなパフォーマンスで魅せた。
この回で須永が関わる登場人物の数は、過去最多だっただろう。演じるプレイヤーたちは、年齢が違えばキャリアも違う。その一人ひとりに対して微妙にプレイスタイルを変え、さまざまなタイプのパスを出し、受け取り、物語を前へと進めていった。何度も書いているように、この作品で重要なのはチームワーク。各キャラクターの感情よりも、ドラマの全体像が視聴者にとってどう映るのかがカギである。むしろ一人ひとりの演技が、柔軟かつ軽やかなものでなければならない。主演の松田元太が座長として奮闘しているところへ、新納が先輩としての背中を見せた回だったともいえるのではないだろうか。

『キャスター』©TBS
新納といえば演劇ファンにはお馴染みの存在であり、名だたる演出家たちのもとで数々の名作誕生に貢献してきた。いっぽう、映像作品にも数多く出演しているものの、その評価は演劇シーンほどにはまだ追いついていない印象だ。『はたらく細胞』(2024年)でヴィランを“怪演”していたことが記憶に新しいが、あの“快演”をできる者が、どれだけいるだろうか。演劇人が立て続けに出演しては骨太な展開を繰り広げる日曜劇場『キャスター』(TBS系)にも登場。演劇だけでなく映像の世界でも、あらゆる作品のチームにおける重要な柱だと認識されつつあるだろう。
古い熱血体質の残る大企業を舞台にした人間ドラマ。おバカでピュアすぎる主人公・人見廉と、会社を変えたいと願いながら日々奮闘する真野直己が、個性豊かな人事部の面々と共に会社の中で巻き起こる社員のさまざまな問題と向き合いながら、「現代人の悩み」に立ち向かっていく。
■放送情報
『人事の人見』
フジテレビ系にて、毎週火曜21:00~21:54放送
出演:松田元太(Travis Japan)、前田敦子、桜井日奈子、新納慎也、ヘイテツ、松本まりか、小野武彦、鈴木保奈美、小日向文世ほか
脚本:冨坂友
音楽:カワイヒデヒロ
主題歌:宮本浩次「Today -胸いっぱいの愛を-」(ユニバーサルシグマ)
演出:河野圭太、山内大典
編成企画:草ヶ谷大輔
企画・プロデュース:後藤博幸
プロデュース:橋本芙美、高橋眞智子
制作:フジテレビ
制作著作:共同テレビ
©︎フジテレビ
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編集部の感想:
新納慎也さんが演じる須永圭介のキャラクターは、作品にユニークなアクセントを与えており、彼の柔軟な演技力が光ります。チームワークが求められる中で、彼のダメ男としての一面がドラマをより魅力的にしています。『人事の人見』は、個性豊かなキャラたちの掛け合いで見応えがあり、楽しめる作品です。
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