🧠 概要:
概要
『ベートーヴェン捏造』は、ベートーヴェンの伝記を手がけた秘書アントン・フェリックス・シンドラーが、不正に改竄した可能性を追及する実話を描いた書籍です。著者は、音楽家たちの人間的側面を浮き彫りにしつつ、シンドラーの動機やその時代背景を探ります。軽快な語り口で、読者を引き込む内容となっています。
要約(箇条書き)
- 著者:かげはら史帆、河出文庫から出版
- 内容:ベートーヴェンを巡る秘書シンドラーの伝記の改竄疑惑に焦点を当てた実話
- シンドラーが使用した会話帳が後から改竄された可能性がある
- 1977年に「国際ベートーヴェン学会」でこの事実が発表された
- ミステリー的な要素と著者の軽快な話術で読者を惹きつける
- ベートーヴェンの周囲の音楽家たちや、彼自身の人間的側面を描写
- 彼の遺産に関して、黒字決算で人生を終えようとしていたことが紹介される
- シンドラーの心の内を生き生きと語り描写
- クラシック音楽の巨匠としてのベートーヴェンの一面を人間的に感じさせる
- 映画化もされ、バカリズム脚本による期待が高まる
- ベートーヴェンが住んでいた部屋の記念館「パスクァラティハウス」の写真も含まれる
ベートーヴェンの秘書だったアントン・フェリックス・シンドラーという人物が書いたベートーヴェンの伝記は、一次資料の一つとして、耳の聞こえないベートーヴェンが日常使っていた筆談用の会話帳が元になっているとのこと。そのシンドラーはあろうことか、その会話帳に後から手を加えて改竄したようだ・・という研究結果が、実際に1977年に当時東ベルリンで開かれた「国際ベートーヴェン学会」で発表された。
その事実の紹介からこの本は始まる。
いったいどうして?なにをどんな風に?で結局どうなったの?そんな謎と興味を引くミステリー的な話の進み方と、著者の話術の軽快さに、わくわくしながら一気に読んでしまった。
語り口はまるで講談を聴いているようで、ときに漫談のような面白さも満載で、本当に面白くて、読み心地がいい本だった。
ベートーヴェンの周りにいた人々として、あのチェルニーやシューベルト、リストなども登場する。様々な文献や資料に残る事実に基づいて描かれているので、音楽家としての顔以上に、一人の人間としての側面がリアルに想像できて面白い。
ベートーヴェン本人の残した事実の一つとして遺産があるけれど、その事実一つとっても、
『ベートーヴェンは借金まみれで死んだ先輩モーツァルトとは違って、なんとか黒字決算で人生を終えようとしていた。』(電子本文p108)
・・とのことで、まあまあちゃんと稼げていたんだな・・なんてことがわかる。
シンドラーがどうして捏造するに至ったかはこの本の核だからここには書かないけれど、まるで本人が乗り移ったかのようにその心の内を生き生きと著者が語ってくれるのを聴くと(読むと)、シンドラーの目からみたベートーヴェン、その周りの音楽家たち、その時代の雰囲気がリアルに感じられた。
クラシック音楽の巨匠といえども一人の人間。いろいろな人に囲まれ、影響しあい、すったもんだしながら生きていたのだなあと思いを馳せた。
熱情と捏造の危うい関係がうかがえる。
映画化の脚本をバカリズムさんに依頼した人に、個人的に勝手に拍手を送りたい。そして古田新太さんのベートーヴェン像(顔)が秀逸。ここまで寄れてるのがすごい。
映画すごく楽しみ。
今日の写真は、ウィーンでベートーヴェンが住んでいた部屋が記念館になった「パスクァラティハウス (Beethoven Pasqualatihaus)」の入り口。
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