日曜日, 6月 8, 2025
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『ブリグズビー・ベア』(映画)日出丸

🧠 あらすじと概要:

映画『ブリグズビー・ベア』あらすじ

『ブリグズビー・ベア』は、主演のジェームスが誘拐犯に育てられ、外界から隔離された生活を送りながら、自らのヒーロー番組「ブリグズビー・ベア」を信じて育った物語です。彼は、実の家族と再会し、自分の映画制作を通じて、新しい友人たちとの絆を深めていく中で、家族のあり方や、自身のアイデンティティを見つめ直します。

記事の要約

この記事では、著者が友人からの推薦を受けて映画『ブリグズビー・ベア』を鑑賞した感想を述べています。映画制作未経験の主人公ジェームスが、情熱をもって仲間と映画を作り上げる姿から「ものづくり」の原点を感じました。映画は、血縁に依存しない「家族」の概念や、世間知らずの主人公がもたらす社会への問いかけを描いています。ジェームスの純粋さは、周囲の人々に新しい視点をもたらし、社会の固定観念に挑戦するテーマを持っています。全体として、心温まるポジティブなストーリーが展開され、視覚的にも独特な魅力を持つ作品だと評価されています。

『ブリグズビー・ベア』(映画)日出丸

友人のアニメ監督から”この映画面白いよ”と『ブリグズビー・ベア』をオススメしてもらいました。友人は映画批評の本も書いているので、簡単には映画をオススメする人ではありません。オススメするからには、何らかの理由が必ずあります。その理由を自分なりに考えながらオススメ作品を観るのも、楽しいものです。

うれしいことに6月7日現在、ソニー・ピクチャーズのYouTubeの公式チャンネルで”本編無料公開中”となっており、ちょうど時間もあったのでさっそく鑑賞することにしました。”無料”で観れるというのがオススメの理由の第一だろうことは簡単に思いつきます。

主人公のジェームスが仲間と映画を作り上げ、劇場公開を成功させるというストーリーには感動しました。

映画作り未経験者のジェームスのただ作りたいという一心に、周りの人がその純粋な情熱にどんどん巻き込まれていき、協力せずにはいられなくなるという展開に、ものづくりの原点を垣間見ました。映画作りに大切な情熱と一途な姿勢を、この映画から学ぶ取ることができるという点でも、友人はオススメしてくれたのでしょう。友人は映画作りにプロでもあるので、そう考えたとしても不思議ではありません。

また、作中劇である「ブリグズビー・ベア」自体が、どこか懐かしく、B級感のある特撮ヒーロー物として作られており、それが作品全体のユーモアと魅力に繋がっています。特撮をうまくスクリーンのなかで現実の他のシーンになじませるために、あえて古びた映像のように編集したのだと思われますが、意外と斬新な演出です。

2018年公開の映画ですが、もっと昔の古い映画のように感じる不思議さがあるのです。あえて古っぽく見せる演出の面白さも、きっと友人のオススメの理由だと思います。

この映画は、真の家族のあり方や、世間知らずで純粋な主人公の姿を丁寧に描いていて、この2つの視点から見えてくるテーマについて、ここからは書きたいと思います。

真の家族のあり方を問う

この映画は、血の繋がりがあるかないかではなく、愛や信頼、そして共に時間を過ごすことで育まれる絆こそが「家族」を定義するというメッセージを打ち出しているように思います。

ジェームスは、誘拐犯である「両親」によって育てられました。「両親」はジェームスを外界から隔離し、ある意味でジェームスの人生を奪いましたが、同時に彼のことを心から愛し、彼の唯一の楽しみである「ブリグズビー・ベア」を創作し続けました。

一方で、実の家族は、失われた息子を取り戻そうとする愛情はありますが、25年間の空白ゆえに、ジェームスの独特な世界観を理解するのに苦労します。

物語が進むにつれて、ジェームスは実の家族との距離を縮めつつも、彼の映画制作をサポートする新しい友人たちとの間に、ある種のファミリーのような関係を築いていきます。彼らは血縁に関係なくフラットな人間関係で、共通の目標に向かってお互いを支え合うことで、強い結びつきを生み出します。

この映画は「家族」という概念を、血縁だけに限定せず、精神的な繋がりや共に過ごすことで形成される共同体的なファミリーへと広げて、問い直していると思うのです。

世間の”硬直性”と世間知らずで純粋な主人公の柔軟な姿

ジェームスの世間知らずな純粋さは、単なるコメディ要素としてだけでなく、この映画の核心的なテーマの一つとなっています。

外界の「常識」や「当たり前」を知らないで育ったジェームスの視点は、社会の規範や人々の固定観念の”硬さ”を浮き彫りにします。彼は素直で柔軟な故に偏見を持たず、他人の評価を気にせず、自分の大好きな「ブリグズビー・ベア」に対して純粋な情熱を注ぎます。その純粋さが、ジェームスと出会う人々を変え、彼らが忘れていた「素朴な遊び心」や「創造することの喜び」を思い出させるきっかけとなります。

ジェームスの世間知らずな行動は、時に周囲を困惑させますが、その裏にある一切の邪念のないまっすぐな心は、「正しさ」でがんじがらめで実は閉塞的な社会や人間関係に風穴を開け、新しい可能性の扉を開きます。

ジェームスが偽の「家族」に閉塞されていた世界は”実は”自由で創造的な世界でした。それに対して、常識的な世間の方が「正しさ」や「当たり前」で息が詰まるような世界として描かれていて、そのさりげない対象性が秀逸です。

そしてさらに、ジェームスの純粋な視点を通して、社会が「当たり前で正しいとしていること」の不条理さや、子供のような純粋な遊び心や想像力を失わせてしまうことの損失について、考えさせられる作品にもなっていると思います。

こう考えてみると、少し重いテーマを扱った映画になっているかと思うので、好みが分かれる作品かもしれません。でも、心温まるポジティブな視点で描かれた作品として、「不思議な雰囲気」と「優しい世界」を楽しむことができます。これが友人がオススメしてくれた最大の理由でしょう。



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