『キャスター』(TBS系)第6話では、進藤(阿部寛)と華(永野芽郁)の過去の因縁が明らかになった(※本記事ではドラマ本編の内容に触れています)。
第6話でニュースゲートが取り上げたのは臓器移植の壁。脳死の夫から摘出した肺を娘に提供できない。日本の臓器移植制度が抱える矛盾が明らかになった。親族への優先提供は書面による意思表示、移植希望の事前登録、医学的に適合するという条件を満たす必要がある。臓器移植コミュニティは、書面と登録のない藤井親子の移植を認めなかった。総合演出の華がユキノ(佐藤恋和)の臓器移植にこだわるのは理由があった。華は、子どもの頃に姉を病気で亡くしていた。
臓器移植を希望する人数は1万6千人。一方で実際に移植を受けられるのは年間およそ600人。待っている間に病気が進行し、亡くなる人もいる。悲劇としか呼びようがないが、そのような事態を回避するにはドナーを募るか、海外で高額な治療を受けるしかない。だが、違法な臓器売買を容認するわけにはいかない。やむをえず、わずかな可能性に希望を託す場合が大多数だ。
「正しいけど、受け入れられない」。天秤の片方には人命があり、もう片方に法制度がある。そこにスクープという形で報道の使命が加わって、事態はさらに錯綜する。
カギを握るのは医療サポートセンターの「ひまわりネット」。進藤が追い続けていた同一のロゴを使用する団体の一つで、華の取材対象であるユキノの母・真弓(中村アン)が相談に訪れたことで、進藤と華に共通の接点が生まれた。何を隠そう、ひまわりネットを運営する深沢(新納慎也)こそ、18年前、華の姉に違法な臓器移植をあっせんしたNPO法人「難病支援の輪」の代表であり、進藤のスクープによって警察が捜査に踏み切った経緯があった。
臓器売買というタブーに触れることで浮き彫りになったのは、目の前の一人の命と、誰もが臓器移植を受けることができる公平性のどちらを優先すべきか、という問題だ。どちらも重要で正しく、そこに決まりきった答えはないように思える。華と進藤の主張は平行線をたどるが、法律の根拠にもとづく進藤が優勢に見える。「人のものを取ったらいけない」とたしなめるような進藤の台詞もあった。
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華が藤井親子を助けようとするのは、多分に個人的な動機から発していて、気持ちはわかるものの、盲目的に突っ走るあやうさも感じた。華自身、グレーであることを自覚しており、ユキノを死なせたくない一心で自分を納得させているように見える。独自取材を続けていた進藤は、そんな華の心情も理解した上でスクープのために泳がせた。それを察知した華は、真弓と示し合わせて先手を打った、はずだった。
対立する進藤と華に挟まれていたのが本橋(道枝駿佑)だ。本橋は華に同行してひまわりネットに潜入する一方で、市之瀬(宮澤エマ)や山井(音尾琢真)たちニュースゲート取材班の一員として華に密着する。では単純に二重スパイかというとそうではなく、本橋の中で公正な報道と命の重さはどちらも失われていいものではない。その上で、同僚として華に過ちを犯させるわけにいかないという責任感が伝わってきた。
第6話は第7話に続く内容だった。華と真弓が直面する葛藤は、かけがえのない命を個人の側から見るか、社会の側から見るかの違いと言い換えられる。報道はどちらが正しいとジャッジするのではなく、現行制度を擁護しながら、その矛盾を鋭く突く。ある意味、究極の二枚舌だが、視聴者に判断材料を提供することが使命であり、そのこと自体に問題はない。大事なのは真実を伝える意志と、それが誠実で真摯なものかだ。進藤と華にその姿勢はあるだろうか。
テレビ局の報道番組を舞台に闇に葬られた真実を追求し悪を裁いていく社会派エンターテインメント。圧倒的な存在感で周囲を巻き込んでいく型破りで破天荒な主人公・進藤壮一が、視聴率低迷にあえぐ報道番組『ニュースゲート』を変えていく。
■放送情報
日曜劇場『キャスター』
TBS系にて、毎週日曜21:00〜21:54放送
出演:阿部寛、永野芽郁、道枝駿佑、月城かなと、木村達成、キム・ムジュン、佐々木舞香、ヒコロヒー、山口馬木也、黒沢あすか、堀越麗禾、馬場律樹、北大路欣也(特別出演)、谷田歩、内村遥、加藤晴彦、加治将樹、玉置玲央、菊池亜希子、宮澤エマ、岡部たかし、音尾琢真、高橋英樹
脚本:槌谷健、及川真実、李正美、谷碧仁、守口悠介、北浦勝大
音楽:木村秀彬
プロデュース:伊與田英徳、関川友理、佐久間晃嗣
演出:加藤亜季子、金井紘
©TBS
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/caster_tbs/
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編集部の感想:
このドラマ『キャスター』の第6話は、臓器移植の厳しい現実と、それに伴う人間ドラマを深く掘り下げていて感動的でした。進藤と華の対立が、単なる視点の相違に留まらず、命の重さや法制度の矛盾を照らし出している点が素晴らしいです。個人的な感情と正義の狭間で揺れるキャラクターたちが、よりリアルな物語を紡いでいます。
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