「SNSで炎上する奴、だいたいスベってる」ウエストランド・井口がムカつく現代社会とは?毒舌じゃなく世直しをしたいだけ!?の画像一覧
6月25日に宝島社から発売された「書籍!! 今月のお笑い ウエストランド井口と作家飯塚のお笑い界ひねくれ大解説」。2022年から「お笑いナタリー」で連載されていた、ウエストランド井口浩之さんと構成作家の飯塚大悟さんの対談を書籍化したものです。書籍についての宣伝として井口さんに語っていただきましたが、ご本人はあまりこの書籍を「売りたい!」気持ちはないようで……?
「矢継ぎ早にそれっぽいことをしゃべる人」が評価される世の中がムカつく
――「書籍!! 今月のお笑い ウエストランド井口と作家飯塚のお笑い界ひねくれ大解説」(以下、「書籍」)には2022年5月から2025年1月まで約3年分の連載が掲載されていますが、この3年間を振り返ってみていかがですか?
井口「この3年の間で僕自身はそこまで変わってはいないと思いますけど、M-1では令和ロマンが2連覇して、そこからくるまが力を持って、信じるヤツが増えましたね。『なんか新しそう、すごそう』っていうだけで崇めるようになっちゃって、日本は終わりだと思います。YouTubeでも矢継ぎ早にそれっぽいことをしゃべる人がすごい人気だったりするじゃないですか。実は僕みたいな人間の方が言っていることは正しいのに。この書籍を読んでもらえばわかると思いますけど」
――「矢継ぎ早にそれっぽいことをしゃべる人」と井口さん、本質的には何が違うのでしょうか?
井口「『新しくてすごそう』っていうだけで食いついちゃうのは要注意ですよね。もっとちゃんと突き詰めて何がすごいのかをよく考えてみてほしい。たとえばダウ90000の蓮見くんをすごいって言う人は多いですけど、賞レースの決勝に行っているわけでもないし、なにがすごいんでしょうね?僕らは優勝しているから、『すごい』ことが証明されているんですよ!」
――ちゃんと結果を出している人が評価されるべきなのに、なぜ井口さんは評価されないのでしょう?
井口「色々考えたけど、結局見た目なんだと思います。Tverでも再生数が重視されますが、そのためにはサムネが大事らしくて。どんなサムネだと再生数が伸びるかというと、結局“エロいやつ”らしいんですよ。僕にエロを感じない人が多いから評価されないんじゃないですか?お笑いでエロを満たそうとすんなよ、と」
――お笑いもエロい目線で見られてるということですか?
井口「結局そうなんじゃないですかね。だからみんな、僕のことは好きじゃない。本当は僕とか高野(きしたかの)みたいな、一見エロくない奴のほうがすごい頑張ってるんですよ!」
SNSで炎上する奴、だいたいスベってる
――書籍内では、2024年9月に気になる話題を聞かれた井口さんが「若い人に覇気がないことが気になる」とお話されていました。若い人が覇気を持つためにはどうしたら良いと考えていますか?
井口「僕は嘘ばっかりつく人が多い世の中で『真実を知ってほしい』というムカつく想いが覇気の原動力になっていますけど、若い人はそもそもムカつくこと自体がないんでしょうね。正直な人が増えれば僕もこんなにムカつかないですよ。たとえば吉本の若手が『僕らは結構お金に恵まれています』って公言してくれるとか。でも、彼らは絶対に認めない」
――この記事を読んでいる読者の方の中にもムカつく気持ちや覇気が湧き上がってこない人がいると思いますが、どうしたらいいかアドバイスをいただけますか。
井口「視野を広く持つと腹が立つはずなんですよ。人と人のつながりを意識しながら、いろんなことを諦めない気持ちを持つようにしてほしい。……なんて言っても結局、僕の言うことなんて誰も聞いてくれないんですよ」
――書籍内で若者にもかなり刺さるかも?と思ったのは、M-1予選でウケたのに落ちてしまった方の話題の中で、「社会のルールとか法律に反していることの話題を出すのは、いくら面白いと思っても排除したほうがいいんじゃないかと思う」とお話されていたことです。ウエストランドのネタでは「めちゃくちゃ言っているようで、実はその線を超えることは言ってない」とも。最近は一般人でもSNSで度を越した投稿で炎上することが多いですが、アウトなこととアウトじゃないことはどう線引きしたら良いでしょうか?
井口「政治家の人とかもそうですけど、炎上する人って全員スベってるだけなんですよ。何が面白いか、何がウケるかって考えたら、本来ルール内のことしかウケない。たとえば『自転車で2人乗りしてた時にこんな面白いことがありました!』って話がめちゃ面白いエピソードでも、まず『えっ、2人乗り?』となるじゃないですか。その見積もりが甘いんじゃないですかね。
僕もよく『最近はコンプライアンスが厳しくて大変じゃないですか?』とか言われますけど、逆にコンプラのような制限がなかったら何も面白くないじゃないですか。むしろコンプラやルールが厳しくなればなるほど、僕はやりやすいですよ」
生まれ変わるなら東京に生まれて吉本に入りたい!?
――書籍では2022年12月のM-1優勝直後の井口さんの話も収録されていました。井口さんは『アナザーストーリー(M-1ファイナリストたちに密着するドキュメンタリー)』について、密着スタッフが“素の井口”を引き出そうとする中、『僕はずっと“井口”をやってた』とお話されていました。テレビでは特に“毒舌の井口”を求められると思いますが、素の井口さんはどんな方なのでしょう?
井口「毒舌のつもりはないんですけどね、僕はただ世直しをしたいだけで。ライブよりその後の飲み会の方が僕は悪口を言いますから。後輩たちは『裏では優しいはず』って勝手に信じてたみたいで絶望的な顔をしてました(笑)。だから変わらないですね、素も。『この番組ではこういうキャラ』『この番組ではこういうことを言う』って使い分けてたらしんどいじゃないですか。それで大変な想いをしている人もいるので。でも僕の場合どこに行っても言うことは一緒なんで、そういう意味では楽ですね」
――確かに、どの場面でも変わらず井口さんは世の中で盲目的に賞賛されているものに立ち向かうイメージが強いです。
井口「それは昔から本当にそうで。たとえばアンチ巨人なんですよ。物心ついた頃から、なんで巨人の試合ばっかり放映されるんだろうとか、なんで巨人ばっかりこんなにもてはやされるんだろうとか思っていました。Jリーグが開幕した時も当時はヴェルディが圧倒的に人気で、そういうのほんとに嫌いでしたね。だから吉本に対しても色々言いますけど、まぁ吉本は揺るがないし僕ごときがわーわー言ったってどうにもならないんで、そういう存在がいてくれる方が芸としてはありがたいですけどね。
……でも生まれ変わるなら東京に生まれて吉本に入ってやってみたい気持ちもあります(笑)。一度くらいど真ん中の王道を行ってみたい。」
――意外です……!いま、ちょっと井口さんの素が垣間見えた気がします。
井口「いや、でも特に最近は盲目的に賞賛されているものが多すぎるのでムカつくことの方が多いですよ!たとえばくるまの謝罪動画(注:オンラインカジノ賭博の騒動に関する動画を事務所の許可なく投稿したこと)、あれはどの事務所でもクビだから!あれに関しては吉本が正しいですよ。でも世の中の人は絶賛するんですよね~。最近だとバッテリィズのエースとか松井ケムリ(令和ロマン)が実は結婚していたことを内緒にしてた件、あれも祝福の声ばかりですけど、いやいや、1回嘘ついてるからねと。おめでたい話ではあるけれど、まずは謝れよ!と思いますけどね」
――じゃあ、井口さんは世の中に対して一切嘘はついてない?
井口「はい。いや、でもこれから嘘ついてきたいですね、そんな風に許される世の中なら。でも、どうせ僕が嘘ついた時に世の中の人は怒るわけじゃないですか。だから、エースやケムリを祝福するなら僕に対しても絶対怒るなよ!とは言っておきたいですね」
書籍“唯一”の読みどころは?!
――書籍には多くの芸人仲間のお話が出てきますが、特に多かったのが太田光さん(133回)、モグライダーともしげさん(59回)、三四郎小宮さん(29回)、でした。
井口「そんなに話していましたか?!……僕は本当に狭い範囲でしか生きてないですね、その3人ぐらいとしか接してないんで。太田さんの名前が133回も出てきてるっていうことは、困った時には常に『太田さんがこんなことを言ってた』みたいな逃げ方してるんでしょうね」
――太田さんとの書籍限定鼎談も収録されていますしね。
井口「まぁ正直言うと、この書籍の内容って僕は全然覚えてないんですよ。やれって言われて仕事でやってることなんで、絶対に売るんだ!という強い想いもないです。でも唯一、原稿チェックで読んだのが太田さんとの鼎談部分。かなり読み応えがあるものになっているので、その部分だけでも買う価値があると思いますね。
たとえば2022年6月の章ではスーパー3助(にゃんこスター)さんのヤバさについて語ってますけど、あの人3年経っても何にも変わってないですから。本編は本当どうでもいい話ばっかりなんですよ」
ウエストランド・井口 浩之
1983年5月生まれ、岡山県出身。中学、高校の同級生だった河本太と2008年11月にお笑いコンビ「ウエストランド」を結成。フリーで活動を開始し、オーディションライブから預かり期間を経て、2011年4月の「オンバト+」(NHK総合)に初出演&初オンエア獲得と共に正式にタイタン所属となる。結成5年目で「笑っていいとも!」(フジテレビ)のレギュラーに抜擢され、最終回まで不定期で出演した。2012年から3年連続で「THE MANZAI」認定漫才師(予選通過50組)に。2020年に「M-1グランプリ」で初めての決勝進出を果たし、翌年は準々決勝敗退を喫したものの、2022年に優勝して18代目王者となった。
「書籍!! 今月のお笑い ウエストランド井口と作家飯塚のお笑い界ひねくれ大解説」
著者:井口浩之、飯塚大悟 編集:お笑いナタリー編集部
発売日:2025年6月25日
価格:¥1,760(税込)
判型:四六判
ページ数:288P
ISBN:978-4-299-06655-8
🧠 編集部の感想:
井口さんの意見には共感する部分が多いです。SNSが表面だけの評価を重要視する現代は確かに問題がありますね。真剣に考えたり、結果を出している人がもっと評価される社会になってほしいです。
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