かつて、自分の名前が印字されたコカ・コーラ ボトルが話題を呼んだのを覚えているだろうか。2014年にアメリカで始まった「Share a Coke」キャンペーン。SNSでの拡散を巻き起こし、多くの消費者の心を掴んだ、あの現象だ。

あれから10年。スマホネイティブと呼ばれるMZ世代が消費の中心を担う時代。あの頃とは消費行動も価値観も大きく変わった。が、コカ・コーラは、このキャンペーンを大胆にアップデートし、新たなアプローチで彼らに語りかける。単なるリバイバルではない。デジタル体験を融合させ、エモ消費を刺激する、その戦略に迫る。

名前入りボトル+α
QRコードで無限に広がる「自分らしさ」の世界

今回の「Share a Coke」キャンペーンでもっとも注目すべきは、パーソナライズ戦略の進化だ。名前入りボトルはそのままに、QRコードを活用したデジタル体験をプラス。動画を作成・共有できる「Memory Maker」というデジタルコンテンツを用意し、インタラクティブな要素を強化している。

QRコードを読み込むことで、デジタルハブへGO。そこでは、動画作成、共有、パーソナライゼーション体験ツアーなど、コンテンツが目白押し。従来の「モノ消費」から、体験や感情を重視する「コト消費」「エモ消費」へとシフトする消費者のニーズを捉え、ブランドとのエンゲージメントを深める仕掛けが随所に。

グループでエモ体験
Z世代の心を掴む「リアルなつながり」戦略

今回のキャンペーンで、コカ・コーラがターゲットとするのは、デジタルネイティブど真ん中のZ世代。SNSでの共感を求めるいっぽう、リアルな体験や人との繋がりを渇望している世代だ。

キャンペーンでは、デジタルとリアルの融合を意識し、現実世界でのつながりを促進するメッセージを打ち出している。仲間たちとコカ・コーラをシェアし、特別な瞬間を分かち合う。そんなリアルな体験を通じて、ブランドへの愛着を育むことを目指すわけだ。

マーケティング業界のオンラインプラットフォーム「Marketing Dive」が、コカ・コーラのグローバル・クリエイティブ担当副社長Islam ElDessouky氏のコメントを伝える。氏は、今回のキャンペーンについて「人びとがつながるときに生まれる純粋な魔法を祝福するもの」と表現。さらには「いいねやシェアだけでなく、リアルな瞬間を増幅させる」と、その意図を明かしている。

夢からエモへ
ブランド体験をアップデート

これまで、コカ・コーラは「夢」や「希望」といった抽象的な価値を訴求するブランド広告を展開してきた。しかし、今回の「Share a Coke」キャンペーンでは、より具体的なエモーショナルな体験価値を提供しようとしているのではないだろうか。

デジタルとリアルを融合させた体験を提供することで、ブランドの価値を再定義し、消費者のロイヤリティを向上させる狙いがそこにあるように思えてならない。単なる飲料ブランドから脱却し、消費者のライフスタイルに寄り添い、忘れられない瞬間を共有するブランドへと進化しようとしているようにも思えてくる。

グローバル戦略 × ローカル最適化
世界中で共感の輪を広げる

「Share a Coke」キャンペーンは、グローバル規模で展開されつつも、各地域の文化や消費者の嗜好に合わせたローカライズ戦略がカギとなる。これにより、グローバルブランドでありながら、地域に根ざしたブランド体験を提供し、より多くの消費者に共感を呼ぶことができるからだ。

たとえば、日本では、若者の間でバズっている言葉やニックネームをボトルに印字するなどのローカライズ戦略が考えられる。さらに、地域限定のイベントやキャンペーンを実施することで、消費者との距離を縮め、ブランドへの愛着を深めることも可能だろう。

データが語る真実
成功を裏付けるデータドリブン戦略

コカ・コーラが今回のキャンペーンを展開する裏側には、データドリブンなマーケティング戦略の進化がある。WPPからPublicis Groupeへのメディア・データビジネスの移行は、データ分析に基づき、マーケティング戦略を最適化し、より効果的なキャンペーンを展開するための布石だ。

コカ・コーラの親会社は、2024年第4四半期に14%の有機的収益成長を達成。また、過去3年間で、コカ・コーラの商標ブランドの小売売上が約400億ドル増加したとも。これらの事実は、コカ・コーラのマーケティング戦略が着実に成果を上げていることを示している。

エモ消費の未来形
パーソナライズされた体験の進化は止まらない

「Share a Coke」キャンペーンは、パーソナライズされた体験を提供することで、消費者のエンゲージメントを高めることに成功してきた。今回のリフレッシュでは、デジタル技術をフル活用することで、さらなるパーソナライズの可能性を追求している。

今後は、AIやARなどの最新テクノロジーを活用し、より没入感の高いエモい体験を提供することも視野に入れているのではないだろうか。たとえば、消費者が自分の好みに合わせたコカ・コーラのフレーバーをカスタマイズできるような……よりインタラクティブなデジタルコンテンツの提供などが考えられる。

いずれにしても、デジタルとリアルの融合、パーソナライズされた体験、そしてデータドリブンなアプローチは、これからの共感型マーケティングのあり方を指し示しているのかしれない。

Top image: © iStock.com / coldsnowstorm



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