金曜日, 5月 30, 2025
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「iPhoneの次のデバイス」はどんな形をしているのか?竹内大貴

🧠 概要:

概要

この記事では、次世代アイフォンやAIデバイスの可能性について考察しています。著者は、iPhoneがどのようにインターネットを一般人向けに使いやすくしたかを振り返り、現在のAI技術が抱える課題を討論しています。特に、OpenAIと伝説的デザイナーJony Iveのタッグによって新しいAIハードウェアが開発される可能性と、その影響について言及しています。

要約の箇条書き

  • スティーブ・ジョブズがiPhoneを発表してから20年、タッチスクリーンは一般的な機能になっている。
  • スマートフォンのデザインは洗練されてきたが、過剰性能のカメラやボタン配置に悩まされている。
  • ChatGPTなどのAI技術は革命的だが、ユーザビリティが低い。
  • 誰でも使いやすいAIデバイスの必要性が叫ばれている。
  • OpenAIがJony Iveのデザインファームを買収し、AI向けデバイスの開発を発表。
  • 新生きなデバイスは、個人データを統合し、生活のなかに自然に溶け込むことを目指す。
  • 予想されるデバイスは、スマートイヤフォンや眼鏡などのファミリー製品。
  • iPhoneのようなデバイスが現れることは難しいが、既存スマートフォンと共存する新しい提案が可能である。
  • 著者は、自身のプロジェクトに対しても期待を寄せている。

「iPhoneの次のデバイス」はどんな形をしているのか?竹内大貴

竹内大貴

20年前、スティーブジョブズが携帯電話にメディアプレイヤーとコンピューターを統合し、タッチスクリーンで操作できるようにするという文字通り世界を変えた画期的なインターフェースを世に広めてから、我々は今もスマートフォンを使っている。

しかし、当時画期的だったタッチスクリーンはもはや極めて平凡な一機能に成り下がり、今やカーナビに腕時計、冷蔵庫にすらタッチスクリーンが付いている時代だ。

iPhoneのデバイスデザインがあまりにも洗練されすぎていた結果、各社スマホブランドのプロダクトデザインチームはこの20年、必要以上に高性能なために肥大化し続けたカメラや、無駄なボタンたちをどう配置するかを考えることだけが主な仕事になっている。

ーーそんな中、ChatGPTが登場した。

まるでそこに生きた人間がいるように人の言葉を理解し、ソフトウェアのバグ修正から上司への返信案、存在しないかわいい動物の画像まで、魔法のように答えを生成する。まさしくインターネット登場以来の技術革新である。

しかし、当時のインターネットがそうだったように、未だ技術の本質的価値を理解し、使いこなせている人は圧倒的に少数派だ。ChatGPTはまだ難しすぎる。

パソコンを開き、ChatGPTを開き、自分の生成したい物を言語化し、キーボードでプロンプトを打ち込む。ーーこんな複雑で、日常の中で何の役に立つかわかりづらい作業が出来るのは、一部のエンジニアや、技術オタクや、如何に楽して単位を得るかを考えている大学生くらいな物だ。彼らは安くもないお金を毎月払ってまでそんなことをしている(僕もChatGPTの三万円のプランに加入している)これではマスには届かない。

こうなれば騒がれるのは、”次のiPhone”である。

かつてiPhoneがインターネットを誰でも直感的に操作できる形に落とし込んだように、ハードウェアの観点から、誰でもAI使いこなせる新しいデバイスが必要なのだ。

そして、数日前OpenAIから衝撃の発表があった。

衝撃のタッグ

thrilled to be partnering with jony, imo the greatest designer in the world.

excited to try to create a new generation of AI-powered computers. pic.twitter.com/IPZBNrz1jQ

— Sam Altman (@sama) May 21, 2025

数日前、OpenAIが、スティーブジョブズと共にiPhoneやiPadのデザインを手がけた伝説的なデザイナーである、Jony Iveが率いるデザインファーム、Love Fromを約1兆円という破格の値で買収したということが大々的に発表された。

そして同時にOpenAIの代表であるSam Altmanと、Jony IveによるAIのためのハードウェアの開発会社、ioの設立が発表されたのである。

AI技術に一番初期から関わり続けているOpenAIと、あのiPhoneのデザインの根幹を作り上げた”伝説”Jony Iveがタッグを組み、生成AIのためのデバイスをともに作り上げるというのだから、どんなデバイスを作っているのか期待せずにはいられない。

次のiPhoneはどんな形をしているのか?

※AI生成画像

iPhoneは何がすごかったのか?

次のiPhoneを考えるにあたって、改めて思い出したいのは、なぜ初代iPhoneがあれほどの衝撃をもたらしたのかという点だ。

ずばり、iPhoneの革命は、インターネットという数十年に一度の技術革新を、一般人にも使えるような形に落とし込んだことにある。

実際のところ、”人類が出来るようになったこと” を考えると、iPhoneが出来た後も前もさして変わらない。iPhoneが出来る前から当然電話は出来たし、パソコンを使ってユーチューブを見たり、SNSで水着の美女の写真にいいねを押すこともできた。

これらはインターネットの発明によって生まれた物だ。しかし、 僕らが今当たり前に使っているこれらの機能は全て、パソコンからしかアクセスできなかった。

パソコンは複雑だ。

合理的ではなく慣習的に並んでるキーボードの配列を覚えて、無骨で不親切なファイルの構造をラーニングしないと簡単なネットサーフィンすら満足にできない。ブロードバンド化されて、通信コストがどんどん安くなり、いつでもどこでもインターネットが繋がる世界が出来ていっても、この学習コストが大衆化を阻む大きな要因になってしまっていた。

そんな流れの中で登場したのがiPhoneだ。

タッチスクリーンにマルチタッチ。危険ないまでに直感的なインターフェースのおかげで、今やようやく歩き始めたような子供も当たり前のようにYouTubeを漁り、歩けなくなったお年寄りも「みてね」で孫の成長をタップひとつで追える時代になった。

インターネットと接続し、色々なことが出来るスマートな携帯という概念自体はiPhoneが初めではないものの、当時の携帯のデザインの常識を完全に否定して、その先の人類が半世紀は使い続けるであろう体験を作り上げてしまったのがiPhoneであり、スティーブジョブズが死後も評価され続けている理由なのだ。

ChatGPTはなぜ今のままではダメなのか?

さて、前述したが、ChatGPTは今まさに当時のインターネットと同じような立場にある。すさまじいイノベーションではあるものの、大衆は使い方をよくわかっていない。

そしてその理由はやはりインターフェースにある。
いくら生成AIが良くても、結局のところパソコンはゴミだ。

僕らは今どうやってChatGPTを使っているだろうか?
今この記事を書いてる時も、いちいちタブを切り替え、カタカタプロンプトを入力しては、数秒の間虚無の時間を過ごし、やたら長い前置きを飛ばし読みしながら回答を確認して、あーでもないこーでもないとまたカタカタプロンプトを打ち込み、「今度はモデルを変えて、PROモードならいけるかな?」とモデルを切り替えてまた数分待ち、さらに長くなった前置きを飛ばし読みしながら、まぁいっかと妥協してコピーし、またこののタブに戻ってきて文章を張り付けている。

めんどくさすぎる。

もっとiPhoneのような滑らかな体験をするには、まずユーザーのラーニングコストをゼロにする、スムーズなタッチポイントを作るというこの二つが必要。

例えばハードウェアではなくて、アプリケーションレイヤーだとこれが少しずつ実現している。

Cursorは開発者向けツールのため、AIの学習コストはゼロに等しいし、いつもの開発環境の画面端にコンテキストが共有されたAIが居ることで、切り替えや状況説明が必要なく、タッチポイントが非常にスムーズだ。他にも、最近はGoogle WrokspaceにGeminiがインテグレートされて、メールの返信の生成やドキュメント→スライドへの変換などが非常にスムーズになってきている。

しかし、生成AIの技術的インパクトはそんな程度で終わって良い物ではない。

僕らがHerやアイアンマンのJARVISで思い描いていた、人のように話し、人より賢く、様々なものと統合されるAIを、まだまだ実現できていない。それどころか、多くの人にとって、まだまだライフスタイルが変わるような体験を創れていないのだ。

これを実現するには、AI前提で設計されてないスマホというハードウェアの上に成り立っているソフトウェアだけではなく、もっと根本的にハードウェアの側から見直す必要がある。iPhoneにおけるタッチスクリーンのような、AIを使うのに最も適してるインターフェース、そして同時に、大多数の人にとっての日常に溶け込む身近なタッチポイントを作る必要がある。かつてiPhoneが新しい携帯として売り出したように。

AI Pinの失敗

残念ながら、現状のデバイスたちはそれをしっかり叶えてるとは言えない。例えば、先月HPに買収されて、事業撤退をやむなくされたAI Pin。文字通りAIの搭載されたピンバッヂのようなデバイスで、音声による操作と、搭載されているLEDで、手のひらにスクリーンを作ることも出来るデバイスだ。最初は元Appleのデザインチームが作ったその未来的で洗練されたデザインと、Sam Altmanなどの大物が出資したで注目されたが、純粋にユースケースが無く、値段設定も高すぎた。

Humane AI Pin

デバイスデザインとしての問題点はやはり、インターフェースにあるだろう。音声自体は非常に良いインターフェースだ。自然言語による曖昧な指示を具体的なタスクに落とし込める生成AIの特性をフルに生かせるし、話すだけなので誰でも簡単に使える。

しかし、ただ話せるだけなら結論スマホで良い。むしろタイプ出来たり、OSレベルでほかのデバイスとの連携が出来る事を考えるとスマホの方がいい。

さらに言うと、音声自体、プライバシーやセキュリティ上の問題から公共の場で使うには憚れる。例えばこのAI Pinをスマホのように使うのを想像してみて欲しい。電車で帰宅中、家まで後何分で着くかを調べたいとき、「AI pin、(家の住所)まであと何分?」と聞くのだろうか?スタバでなんだか意識の高そうな本を読んでいるとき、「AI Pin、イニシアチブってどういう意味?」とか聞くのだろうか?

この辺りのプライバシーが守れるようになるまでは、音声はなかなか難しい。

AlexaやGoogle HomeがSiriに比べて普及しているのも、こういった側面があると思われる。家の中で好きに使う分にはまだしも、常に持ち歩き、公共の場で使うのは憚れる。

ioのデバイス予想

さて、ではSam AltmanはAI Pinの失敗を経て、伝説のデザイナーJony Iveを引き連れ、一体どんなデバイスを考えているのだろうか。ここではAIハードウェア起業家として、完全に個人的な予想をしていく。こういう時間が一番楽しい。
※僕らが開発しているAIデバイスについても、もうすぐ発表する予定があるのでぜひXをフォローしてお待ちください(https://x.com/shitaGanbaro

コンピュータの限界を超えるプロダクト

”僕たちが今ChatGPTに何か聞きたいとき、僕らはどうするだろう?パソコンを取り出して開き、ブラウザから入力を始め、前提を説明し、エンターを押して、待ち、ようやく返信がくる。これがパソコンの限界だが、僕たちのテクノロジー(ChatGPT)にはもっと良いものがあってもいいはずだ。”

OpenAI公式Youtube Channel

壮大なイントロと、自分たちのキャリアをほめるターンが一通り終わった後、そして次の自分たちの内面をほめるターンが始まる前、Sam Altmanがoiが開発中のデバイスが解決する課題について少しだけ触れている。

当然ではあるがOpenAIも、この入力のインターフェースについての課題を認識していて、それを解決するデバイスが、ioからは生まれることになる。

予想:A Family of AI products.(AIプロダクトのシリーズ)

気になるのは、動画が始まってすぐ、「A Family of AI products.」という文字が映し出されている点。動画上でSam Altmanも、今回のデバイスはFirst productであるということが強調しており、iPhoneのようなアイコニックなプロダクトを一つ出すというよりは、複数のプロダクト、例えばイヤフォンや眼鏡、服、ネックレスなど、そもそも複数のプロダクトが出される前提で、様々なプロダクトのファミリー全体にAIを溶け込ませるというような発想かもしれない。

※AI生成画像

そのデバイスファミリーすべてから得られる全てのデータを統合し、今まで必要だったコンテキストの共有が必要なくなり、全てが一体化されたシームレスな体験を少しずつ作り始めるイメージ。ハードウェア自体のテクノロジーが革新的で、新しいものというよりは、様々なデバイスがまるで意識を持っているかのように能動的に連携し、ユーザーの体験を助けるというそこに革新性がある。

例えば、最初はスマートイヤフォンのようなデバイスから始まり、次第に眼鏡、時計、衣服へと拡張され、さらに冷蔵庫やベッド、シャワーといった生活インフラにも入り込んでいく。これらのデバイスがユーザーの状態や文脈を共有し合うことで、起床の時間に合わせてカーテンが開き、コーヒーが淹れられ、ToDoリストが耳元で読み上げられるといった、無意識のうちに日常が支援される未来が見えてくる。

そしてさらに進めば、複数のユーザーが所有するAIデバイス同士がネットワークを介して相互に学習・最適化を行い、スマートホームどころか、街や社会全体がAIによって有機的に連携・制御されていくようなビジョンすら想像できる。

Jony IveとSam Altmanは次のiPhoneを作れるのか?

結論から言えば、NOだ。

少なくとも、iPhoneは作れない。

例えば僕の予想が的中したとして、AIが僕らのデータを全てトラッキングして行動を最適化したとして、高度なコンテキスト理解によって音声で全ての操作が完結したとして、僕らはやっぱりタッチスクリーンが欲しい。

単純に動画やSNSをビジュアルで見たいし、音声で指示を出すにしても、結果を受け取る時は音声情報より、テキスト情報の方が早い。(GPTのVoice modeで話すと、返答にだらだら時間を掛けるのがイライラする)

じゃあスクリーンのためにARゴーグルのようなものが流行るかと言えば、そういう訳でもない。画面上で自分のやりたいことを音声で説明するより、スマホのアプリ上のボタンを押す方が早い。

こちらが操作したままに画面が動き、アウトプットが出力される。タッチスクリーンのシームレスで、直感的で、中毒性のある操作感は、いくらAIが頑張っても絶対に淘汰できない。そうなればiPhoneを含むスマートフォンのようなデバイスは引き続き存在し、仮に僕の予想が的中しても、その他のAIデバイスたちを管理するハブのような存在として生き続ける。

もし仮にiPhoneがこの世からなくなる時があるとすれば、その時僕らは脳みそにマイクロチップをさして、永遠の幻覚を見続けていることになるかもしれない。まぁスクリーンを通して自分の目で見るか、脳から直接見るかの違いだけではあるけれど。

ioはどうなる?

ただしこれは、「ふたりの取り組みが失敗する」という意味ではない。重要なのは、iPhoneをリプレイスする存在にならなかったとしても、新しいAIデバイスの形を生み出す可能性は大いにあるという事。iPhoneだって、パソコンをリプレイスしたわけでは無い。

僕はJony Iveの手掛けてる物はもちろん、Appleのデザインを心底尊敬しているし、そこにOpenAIの技術力と調達力が加われば、きっと僕なんかが到底想像も出来ない完全に新しいデバイスを作り上げて、この世界を変えてしまうのかもしれないとそういう期待もしている。

ただ、これは信仰の問題ではあるが、僕はSam AltmanはNext Steve Jobsだとは思えない。僕はSam Altmanも大好きなのだけど、その理由は、彼が関わる技術とその可能性の規模感にワクワクさせられるし、心の底から人類の全体の発展というゴールを見据えているように見えるからだ。

Steve jobsのような狂信的なデザインや体験への執着は感じられない。もしそれがあれば、ChatGPTはもう少し使いやすかったかもしれない。

もしかしたらその部分をJony Iveが補うのかもしれないが、Jony IveのApple的なミニマリズムがいつまでも最先端だとも思わない。むしろ近年のテックデザインのトレンド的には、少しずつ色とデザインを取り戻してきている気がする。

しかし、もしも彼らが既存のスマホを置き換えるのではなく、「スマホと共存しながら、ユーザーの生活や仕事を根本から変える」提案をするのだとしたら——それはもしかしたら、かつてのiPhoneのように、私たちの想像を超える体験をもたらしてくれるかもしれない。

我々Verne Technologiesも、当然負けるつもりはありません。彼らに出来ないやり方で、AIデバイスの未来を作ります。繰り返しにはなりますが、Xのフォローよろしくです!(https://x.com/shitaGanbaro

竹内大貴

株式会社Verne Technologies CEO。「音声AIインターフェースの実現」を掲げて、AIネイティブなウェアラブルデバイスの開発を行ってます。SFが好きです。

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