VLCの開発者が手がける超低遅延動画ストリーミングを可能にするオープンソースキット「Kyber」
（2025年08月04日 21時00分配信）
VideoLANプロジェクトのリード開発者、ジャン＝バティスト・ケンプ氏が新たに発表した「Kyber」は、リアルタイムで動画を伝送するために設計されたオープンソースのSDKです。従来のストリーミング技術では重視されていた品質や映像と音声の同期にボトルネックが生じる中、Kyberは遅延を可能な限り削減することを目指しています。
Kyberの目的と特長
Kyberはクラウドゲーム、ロボット工学、ドローンなど、超低遅延が求められるアプリケーション向けに設計されています。単なるストリーミングライブラリではなく、クライアントとサーバー、ネットワークスタックまで幅広くカバーする包括的なソリューションが特徴です。映像だけでなく、入力デバイスからのデータ伝送にも対応しており、数十ミリ秒という極限まで遅延を抑えることに成功しています。
驚異の低遅延
デモ映像では「ストリートファイター6」がキャプチャされ、約33ミリ秒の遅延で伝送されることが確認されました。また、240Hz環境下では8ミリ秒という最小限の遅延を実現しています。
技術的なアプローチ
KyberはWebRTCを使用せず、新たに設計されたFFmpegのプッシュモードを活かしています。映像と音声は単一のソケットを通じて、効率的に伝送されています。ネットワークの揺らぎ（ジッター）を検知し、ビットレートを調整する機能も持ち、常に安定したストリーミングが可能です。
入力処理の革新
KyberはRustで構築された専用サーバーにより、ゲームパッドやマウスの動き、ファイル転送などの高機能をサポート。これにより、リモートデスクトップ環境においても遅延をかけずに操作が可能になります。
オープンソースと商用ライセンスの両立
KyberはAGPLライセンスの下でオープンソースとして公開される予定ですが、商用利用の場合はデュアルライセンスモデルを採用します。これにより、コミュニティの発展と企業にとっての持続可能性を両立させたいという意図が示されています。
将来の期待
今後の展望として、JB氏は次世代コーデックであるVVCに対して懐疑的な見解を示しつつも、FFmpegやVLCの目指す「すべてをサポートすること」を考慮した開発を続けています。
Kyberの開発は、ストリーミング技術の未来に新しい風を吹き込むものとして、多くの期待を寄せられています。
🧠 編集部より：
Kyberの基本情報
Kyberは、VLCの開発者ジャン＝バティスト・ケンプ氏によって設計された超低遅延動画ストリーミングを可能にするオープンソースのリアルタイム制御SDKです。この技術は、クラウドゲーミング、遠隔操作のロボット、ドローンなど、多様な双方向アプリケーション向けに特化しています。
遅延削減の特徴
Kyberの最大の特徴は、遅延を極限まで削減することに重きを置いている点です。従来の技術が品質や同期を重視するのに対し、Kyberはその実装が難しい双方向のストリーミングも支持します。具体的には、映像伝送の遅延は数十ミリ秒にとどまり、240Hz環境ではわずか8ミリ秒という数値も達成しています。
プロトコルと技術
Kyberは、QUICやWebTransportを使用して全てのデータを単一のソケットで効率的に伝送します。通常のストリーミングプロトコルでは失われたデータを再送信しますが、Kyberは「RaptorQ」技術を活用し、パケットロスに即座に対応します。この手法により、致命的な遅延を抑えることができるのです。
オープンソースの観点
KyberはAGPLライセンスに基づいて公開される予定ですが、企業向けには商用ライセンスも用意される予定です。このデュアルライセンスモデルは、技術の普及とコミュニティの成長を促進する狙いがあります。
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豆知識
Kyberが開発される背景には、現代のリモートワークやオンラインゲームの増加があります。特に、遅延が生じると快適な操作体験が損なわれるため、その技術的進化が期待されています。また、FFmpegやVLCプロジェクトが支持され続けているのは、オープンソースコミュニティによる貢献の賜物でもあり、多くのユーザーに利用され続けています。
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キーワード: Kyber
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