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概要
この記事は、東京都在住の小学3年生、佐藤大悟くんが視覚障がい者支援のために開発した「スマート白杖」について紹介しています。彼は視覚障がい者が自由に移動できる社会を目指し、技術のサポートを受けながら、必要な機能を持つ白杖の開発を成功させました。最終的には「小中学生トコトンチャレンジ2024」で最優秀賞を受賞し、今後の夢を語ります。
要約
- 対象: 視覚障がい者支援アプリ「Eye Navi」と関連する大悟くんのストーリー。
- 発端: ブラインドサッカーを通じて視覚障がい者の支援に興味を持つ。
- アイデア: 好きなおにぎりを選べるための機能を持つ「スマート白杖」を開発することを決意。
- 開発過程:
- 「小中学生トコトンチャレンジ2024」に応募し、開発を開始。
- ラズベリーパイを使用し、プログラミングを学ぶ。
- 4つの機能(時刻読み上げ、障害物検知、文字読み上げ、白杖発見機能)を実現。
- 受賞歴: 最優秀賞受賞により、多くの評価を得る。
- 連携: NHKの放送をきっかけに「Eye Navi」チームと協力、プログラミングの技術サポートを受ける。
- 将来の夢: 古生物学者になり、再生能力の研究を進める。
- メッセージ: Eye Naviチームへの感謝を表明し、今後の改良に意欲を見せる。
この記事は、若き科学者の成長とその挑戦、そして他者との協力の重要性を強調しています。
スマートフォンひとつで、道案内と障害物検出、歩行レコーダー機能を備えた歩行支援アプリ「Eye Navi」。
これまでEye Naviは視覚障がい者の方を中心に、「誰もがどこへでも、自由に楽しく移動できる社会の実現」を目指して、サービスを提供してきました。
今回お話を伺ったのは、東京都に暮らす小学校3年生(2025年2月現在)の佐藤大悟くん。彼は2024年5月のNHKおはよう日本の放送をきっかけに「Eye Navi」に興味を持ち、私たちに連絡をくださいました。
「生活に必要な機能を搭載したクールな白杖を作りたい」という大悟くんの目標を知った開発チームは、彼の白杖開発に協力させていただくことに。
プログラミングに悪戦苦闘していた彼が、私たちの技術協力を得て視覚障がい者向けのスマート白杖を完成させたストーリーや彼が抱く将来の夢についてご紹介します。
大悟くんが開発したスマート白杖
佐藤大悟(さとう・だいご)
東京都に暮らす小学校3年生。2年生の時に視覚障がい者との交流をきっかけに、視覚障がい者支援に興味を持ち、現在は生活に必要な機能を搭載した「スマート白杖」の開発とプラナリアの再生能力を活用した視神経再生研究に取り組む。また、小中学生向けの科学雑誌「子供の科学」が提供する「小中学生トコトンチャレンジ2024」に応募し、「スマート白杖」の開発で最優秀賞を受賞。将来の夢は古生物学者。
視覚障害があっても、好きなおにぎりを選べるようになってほしい。そんな願いから「スマート白杖」を発想
――まず、簡単に自己紹介をお願いします。
大悟くん:
小学校3年の佐藤大悟です。僕は小さいころから生物学が大好きで、特に古代生物に興味があります。現在はラズベリーパイを使った視覚障がい者向けのスマート白杖の開発と、プラナリアという生物の再生能力を研究しています。
――白杖の開発を始めたきっかけを教えてください。
大悟くん:
2年生のとき、ブラインドサッカーを通じて、視覚障がい者の方と交流をしたことがきっかけです。僕は古代生物のなかでも「アノマロカリス」が好きなのですが、アノマロカリスの目には3万個以上のレンズがついていたとされるほど、優れた複眼を持っている生物なんです。
そんなアノマロカリスについて調べていくうちに、「どうして人間は複眼じゃないんだろう?」と不思議に思って、小学2年生のときに夏休みの自由研究で人間の視覚について調べてみることにしました。
調査するために、ボランティアで視覚障がい者の方と一緒にブラインドサッカーを体験したのですが、そのときにコンビニでおにぎりを買うときの経験を聞いたんです。
「コンビニでおにぎりを買うとき、中身が梅だったらあたり、さけだったらはずれ。一期一会なんだ」
そう笑って話されていたのを聞いたことが心に残っています。だから、最初は「好きなおにぎりの中身を選べるようになってほしい」という想いで、視覚障がい者が日常的に使う白杖に新しい機能を加えることで、役立てないかと考えたんです。
ーーそこから、どのように開発を進めていったのでしょうか?
大悟くん:
ちょうどそのアイデアを思いついたとき、「子供の科学」が主催する「小中学生トコトンチャレンジ2024」というプログラムが開催されていることを知って、迷わず応募しました。
このプログラムは、雑誌「子供の科学」の創刊100周年記念事業「キッズスタートアッププロジェクト」の一環として、自分の好きなことを追求したい小中学生を応援してくれるものなんです。
そして、僕が応募したアイデアを採択してもらうことができ、本格的に開発がスタートしました。
でも、最初はどうやって作ればいいか全然わからなくて。図書館で本を借りて、ラズベリーパイという小型コンピューターを使ってみることにしました。
ーー想いを形にするために、たくさん勉強をしたんですね。
大悟くん:
はい!でも、初めてのプログラミングだったので、本を読んでも理解できないことだらけでした。
そんななか、どんな機能があると視覚障がい者の方に役立つか考え、「時刻を知らせる機能」「障害物を検知する機能」「文字を読み上げる機能」、そして「災害時に白杖を見つけるための機能」の4つを実現したいと思ったんです。
4つの機能を搭載した「クールな白杖」が完成!「小中学生トコトンチャレンジ2024」の最優秀賞を受賞
ーー実際にどんな白杖ができあがったのか教えてください!
大悟くん:
実際の白杖では、最初に構想していた4つの機能を実現することができました!まず、1つ目はフチにあるボタンを押すと現在の時刻を読み上げてくれる機能です。
次に、ウルトラソニックセンサー(超音波を利用した非接触型のセンサー)を使って障害物検知してくれる機能。
センサーが障害物までの距離を測り、近いほど警告音のテンポが速くなります。自分で持って試しながら、1mと70cmという2段階で警告が出るよう設計しました。
3つ目は、ボタンを押すとカメラで文字を読み取って、音声で読み上げる機能。そして最後に、災害時などに白杖を見失った場合のために、キーホルダー型リモコンからブザーを鳴らせる機能も追加しました。
キーホルダー型リモコン。大悟くん本人がCADと3Dプリンターを駆使して作成した
ーー4つの機能をすべて搭載することができたんですね!
大悟くん:
そうなんです。「小中学生トコトンチャレンジ2024」では、最優秀賞の一つに選んでもらうことができました。約8ヶ月間何度も失敗しながらやっと完成した白杖をたくさんの人に評価してもらえて、本当に嬉しかったです!
NHKの放送を見て「Eye Navi」に出会い、メールを送ったことが開発協力のきっかけに
ーーそんな大悟くんはどうしてEye Naviと出会ったのでしょうか?
大悟くん:
スマート白杖を開発していて大きな壁にぶつかっていたときに、偶然NHKでEye Naviが紹介されていたのを見たのがきっかけです。
そのときは初めてPythonを使ったプログラミングに挑戦したのですが、カメラで撮影した文字を読み上げる機能がどうしても動かなくて。手ぶれが激しいとエラーが出たり、文字認識の精度が低かったりして、何度も書きなおしていました。
3ヶ月以上もエラーと格闘する日々が続いていて、「このままだとクールな白杖を完成できない」と何度も諦めそうになっていたんです。「僕の白杖を待っている人がいるかもしれない」という想いだけで頑張っていました。
そんなとき、朝のニュースで「Eye Navi」を見たんです。AIと画像認識を活用して視覚障がい者の歩行を支援する仕組みに「これだ!」と直感しました。
ニュースを見たときは飛び上がるほど嬉しくて、すぐに「連絡したい!」と思い、お母さんに頼んでメールを送ってもらったんです。それからすぐに返信をもらえたときはとてもびっくりしたし、嬉しかったです。
ーーメールにはどんなことを書いたのですか?
大悟くん:
僕が「スマートな白杖」を開発したいことや、その開発に苦戦していること、Eye Naviを知ったきっかけなどを書きました。
そうしたら、実際にEye Naviを開発しているエンジニアの槙さんから、プログラミングでつまずいていた部分について相談に乗っていただけることになり、そこからやり取りが続いていきました。
普段はメールでやり取りしていたのですが、特に難しい問題があるときはZoomで直接教えていただくこともあって。
ーー槙さんと一緒に開発しているとき、特に印象に残っていることはありますか?
大悟くん:
一度、開発をしていたときにラズベリーパイの画面が全く違う表示になってしまい、何が起きたのかわからなくなったときがあります。
慌てて槙さんにメールで相談したところ、すぐにオンラインミーティングを設定してくださって、リモートで問題を解決してくれました。画面共有しながら一行一行コードを見てくださって、原因を特定してくれたんです。
僕みたいな小学生のアイデアでも真剣に受け止めてくれて、専門家として丁寧に向き合ってくださる姿勢には本当に感謝しています。尊敬の気持ちでいっぱいです。
ーー槙さんのサポートが大悟くんにとって大きな助けになったんですね。
大悟くん:
槙さんがいなかったら、白杖は完成しなかったと思います。プログラミングの技術的なことはもちろんですが、「どうすれば使いやすくなるか」という視点を教えてもらったことがすごく嬉しかったです。
白杖に搭載するボタンの数を減らしたり、障害物を発見するための警告音のテンポで距離感を表現したりするアイデアも、槙さんとの対話から生まれました。
それに「小中学生トコトンチャレンジ2024」の成果発表会の前には、発表の仕方についてもアドバイスをもらったんです。
槙さんのアドバイスのおかげで、発表では「クールな白杖を使って目の不自由な方の役に立ちたい!」というテーマをしっかり伝えることができ、そのおかげもあって多くの方に評価してもらえたと思います。
展示会場に会いに来てくれた大悟くん。開発協力をした槙さんとツーショット!
将来は古生物学者になりたい。プラナリアに希望を託し、視神経再生について研究中
――「小中学生トコトンチャレンジ2024」最優秀賞受賞おめでとうございます!そんな大悟くんのこれからの夢を教えてください。
大悟くん:
将来は古生物学者になりたいです!特にアノマロカリスをはじめとする古代生物の進化の謎を解明するのが夢です。カンブリア紀に「カンブリア爆発」と呼ばれる現象があって、急に目を持った生物が増えたんですけど、なぜそうなったのかまだ解明されていなくて、それを調べたい。
また、今は白杖開発と並行して、「プラナリア」という生物の研究もしています。プラナリアはすごい再生能力を持っていて、体を切断されても1週間で失った部分をすべて再生することができるくらい。
今はロートこども未来財団の支援を受けて、プラナリアの第一人者・安形清和先生の指導のもと、視神経再生の可能性について研究しています。いつか中途失明者の方の視神経を再生できる方法を見つけたいんです。
白杖開発で学んだ「諦めない気持ち」や「専門家に相談する勇気」が、この研究にも活かされています。Eye Naviとの出会いがなければ、こんなに大きな夢を持つことはできなかったかもしれません。
――大悟くんの夢を心から応援しています!最後に、Eye Naviチームへのメッセージをお願いできますか?
大悟くん:
Eye Naviチームのみなさんが小学生の僕にも真剣に向き合って、さまざまなサポートをしてくださったおかげで、白杖プロジェクトを完成させることができました。これからもスマート白杖の改良を続けていきます。本当にありがとうございました!
一通のメールから始まった小学生エンジニアとのコラボレーション。佐藤さんの純粋な熱意と行動力に触れ、私たちEye Naviチームも多くのことを学びました。
技術的なサポートを超えて、夢を持つ若き科学者の成長に少しでも貢献できたことを嬉しく思います。
このような出会いこそが、「誰もがどこへでも、自由に楽しく移動できる社会の実現」というEye Naviの理念を広げる原動力となります。佐藤さんの今後の活躍を、チーム一同心より応援しています!
(取材・執筆・撮影 目次ほたる (@kosyo0821))
視覚障がい者歩行支援アプリ「Eye Navi」について
Eye Naviは、スマートフォンひとつで、道案内と障害物検出、歩行レコーダー機能を備えた歩行支援アプリです。
2023年4月にリリースされ、リリース開始から4ヶ月ほどで1万ダウンロードを突破しました。
Eye Naviの特徴は、AIを活用した「障害物・目標物検出」と、視覚障がい者に寄り添った「道案内」が組み合わさっていること。
この2つを実現することで、目的地までの方向や経路、周辺施設、進路上の障害物、歩行者信号の色、点字ブロック等を音声でお知らせできるアプリになっています。
Eye Navi公式ページ
アプリのダウンロードはこちらから
株式会社コンピュータサイエンス研究所 ホームページ
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