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概要
この記事では、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)の導入によるリスクと、その対策について解説しています。特に、RPAを効果的に運用するための考え方や注意点に焦点を当て、リスクを未然に防ぐための具体的な方法を提案しています。最終的には、RPAの過度な期待を避けつつ、適切に使うことで業務効率化を図る重要性を伝えています。
要約ポイント
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RPAの魅力と問題点:
- RPAを導入することで業務が楽になるという期待は大きいが、現実には逆に作業が増えることもある。
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主要なリスク:
- 想定外の動作で止まる:
- 変化に弱く、少しの違いでエラーが発生する。
- 例外処理で混乱:
- 一貫性のないデータに対処できず、誤動作が発生する。
- 属人化:
- フローの内容を作成者しか理解できず、保守が困難になる。
- 効果が見えない:
- 期待する効果が現れないことでモチベーションが低下する。
- 万能ツールの誤解:
- RPAは何でもできるわけではないため、誤解が生じやすい。
- 想定外の動作で止まる:
-
主な対策:
- 業務選定時に安定したフローを選ぶ。
- エラー処理を組み込む。
- フローにコメントを入れ、理解しやすくする。
- 成果を定量的に示すことで評価を得やすくする。
- RPAの限界を理解し、人的判断が必要な部分を明確にする。
- 運用の心構え:
- RPAは「補助役」として使い、全自動化を目指すのではなく、少しずつ運用を広げていくことが重要。期待しすぎないことがリスク管理の鍵である。
「RPAを導入すると、業務が一気にラクになる!」
そう聞いて、ワクワクしながらPower Automateなどのツールを使い始めた方も多いのではないでしょうか。
実際、うまく使えばとても便利なツールです。
決まった手順で繰り返す作業なら、人がやるよりも早く・正確にこなしてくれます。
でも──
「思っていたより面倒なことが増えた…」
「自動化したのに、逆に作業が増えてしまった…」
そんな声も、現場ではよく聞こえてくるのが正直なところです。
RPAには確かに多くのメリットがありますが、
“導入したら終わり”ではなく、“運用していく”ための準備と心構えが大切です。
この記事では、初心者の方にもわかりやすく、
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RPA導入でよくある失敗や落とし穴
-
それを未然に防ぐための具体的な対策
を紹介していきます。
「業務をラクにしたい」はずが、逆に大変な思いをしないために。
事前に知っておくだけで、RPA導入の成功率はグッと上がります。
第2章よくあるリスク①想定外の動作で止まる・壊れる
RPAツールは、「決まった手順」を繰り返すのが得意です。
そのため、少しでも“いつもと違うこと”が起こると、途端にうまく動かなくなることがあります。
これが、RPA導入で最もよくあるトラブルの一つです。
● たとえば、こんな場面
-
昨日まで開けていたWebページのレイアウトが少し変わって、ボタンが押せなくなった
-
毎月保存していたファイル名に“(1)”という文字が入ってしまって、処理が止まった
-
Excelの列の順番が変わっていて、正しい場所に入力できなかった
どれも人間なら「まぁいいか」と判断して対応できる内容です。
でもPADは、その“ちょっとした違い”に対応できず、止まってしまうのです。
● なぜ起こる?RPAは「融通がきかない」
Power Automateは、「この画面のこのボタンを押す」「この名前のファイルを探す」など、
“想定された通り”にしか動きません。
つまり、**“優等生だけど柔軟性がない”**のです。
想定と違う画面やデータに出くわすと、何をすればいいか分からず、エラーで止まる。
これが、現場でよくある「RPAが壊れた」「動かない」という状況です。
● 対策止まりにくい業務を選ぶ&エラーへの備えを
RPAを導入する際は、次のようなポイントを押さえると安心です。
① 変化の少ない業務を選ぶ
-
操作対象(ExcelファイルやWebページなど)が毎回同じ
-
表示やレイアウトが安定している
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入力内容や保存先が固定されている
こうした業務は、“止まりにくい”自動化対象としておすすめです。
② エラーが起きたときの通知・記録をつける
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フローの途中に「例外処理」や「ログ出力」を入れておく
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動作が止まったらメールで知らせる設定を入れる
これにより、「いつの間にか止まっていた」を防ぎやすくなります。
③ いきなり100%自動化しない
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最初は「一部だけ」自動化して、止まってもカバーできる範囲にとどめる
-
慣れてきてから範囲を広げる
“完璧に全部”を目指すより、「確実に動く部分」から始めるほうが結果的に長く使えます。
▶まとめ
RPAは、とても正確で便利なツールです。
でも、「ちょっとの変化」にも弱いという一面があります。
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自動化する業務を選ぶとき
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フローを設計するとき
-
エラーが起きたときの対応を考えるとき
この「想定外への弱さ」を頭に入れておくだけで、リスクは大きく減らせます。
第3章よくあるリスク②例外処理で混乱する
「だいたい同じ流れなんだけど、たまにイレギュラーがあるんだよね」
そんな業務、あなたの職場にもありませんか?
RPA、とくにPower Automate for desktop(PAD)は、
毎回同じパターンで動くことを前提に作られています。
そのため、ちょっとでも“いつもと違う”ケースが混ざると、途端に混乱してしまいます。
● よくある例
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毎月発行する請求書のフォーマットが、1件だけ違っていた
-
ファイル名に「_修正版」などの文言が加わっていて見つからなかった
-
一部の取引先だけ、送付先のフォルダが別になっていた
こうした “例外”が混ざった業務をそのままRPA化しようとすると、
うまく処理できなかったり、誤動作を起こすことがあります。
最悪の場合、ミスに気づかないまま処理が進んでしまい、
「自動化したせいでミスが増えた…」という結果にもつながりかねません。
● なぜ混乱する?“判断”や“分岐”が多すぎると破綻しやすい
PADは条件分岐(IF)や例外処理(Try~Catch)も可能ですが、
複雑になればなるほど、管理や修正が大変になります。
たとえるなら、
「例外だらけのマニュアル」を渡された新人さんがパニックになるのと同じです。
● 対策例外は「切り分ける」ことが大事
① ルールが統一されている業務から選ぶ
まずは、例外の少ない、毎回同じ形式・処理の業務に絞って自動化するのが安全です。
「全体の8割はこのパターン」というような、大多数をカバーできる処理に絞りましょう。
② 例外は“人が対応する”前提にしておく
自動化できない部分を無理にRPAに組み込もうとせず、
「例外が出たら人が判断する」流れを明確にしておく方が、結果的に安定します。
→ 例:「フォルダが見つからない場合は、エラーとして記録して処理を止める」など
③ 分岐が多くなりすぎるなら、そもそも自動化しない
条件が多すぎてフローが複雑になりはじめたら、**その業務は“まだ自動化しなくていい”**と判断するのも立派なリスク管理です。
▶まとめ
RPAは「決まったことを、決まった通りにやる」のが得意。
だからこそ、例外が多い業務は、あえて人間のままにしておく勇気も大切です。
最初から全部を自動化しようとせず、
「自動化できる部分だけ」に集中するのが、混乱を防ぐコツです。
第4章よくあるリスク③「作った人しかわからない」属人化問題
「このフロー、○○さんが作ったやつだよね?…え?退職したの?」
RPAを導入した企業や部署で、あとからよく起こるのがこの“属人化問題”です。
つまり、「作った本人しか中身がわからない」状態になってしまうこと。
いざという時に誰も手を入れられず、結局そのRPAが使われなくなってしまう――
そんな事例は少なくありません。
● なぜ属人化してしまうのか?
主な理由は以下のとおりです:
-
作った人が頭の中だけで全体を把握している
-
コメントや説明を残していないため、他の人が読めない
-
凝りすぎて、複雑な構造になってしまった
-
フローが増えすぎて、どこで何をしているかわからない
こうした状態になると、**「ちょっとした修正すら手を出せない」**という状況に陥ります。
● 結果的に、こんな問題が…
-
フローが壊れても誰も直せない
-
関係者が増えるほど、使いづらくなる
-
引き継ぎができない/教育コストがかかる
-
「RPAは面倒」とマイナスイメージが定着する
つまり、せっかく自動化したのに“放置される未来”を招きかねないのです。
● 対策シンプルに、共有できるかたちで作る
属人化を防ぐには、次の3つのポイントを意識することが大切です。
① コメントをつける/画面に説明を残す
PADでは、アクションごとに**「コメント」を入れる欄**があります。
何をしているステップなのか、簡単な言葉で説明を入れるだけで、他の人が見ても理解しやすくなります。
② 手順書や概要図をつける
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このフローは何の業務か?
-
どんなファイルを使って、何をするのか?
-
成果物はどこに出力されるのか?
こういった**“全体像”がわかるメモやスライド**を一枚残しておくと、誰でも状況を把握できます。
③ あえて「作りすぎない」ことを意識する
複雑すぎるフローは、壊れやすく、読みづらく、直しづらくなります。
「このぐらいなら手作業でもいいかも」と思う部分は、あえて自動化しないのもアリです。
“シンプルで伝わる設計”のほうが、結果的に長く使えます。
▶まとめ
RPA導入は、作って終わりではありません。
「誰でも使える」「誰でも直せる」状態を維持できてこそ、成功と言えます。
そのためには、フローそのものだけでなく、“あとに残す工夫”もセットで考えることが大切です。
第5章よくあるリスク④効果が出ない=モチベーションが続かない
「RPAを導入すれば、すぐに業務がラクになる!」そんな期待を持って始めたものの、思ったほど効果が見えなくてがっかり…。
このように、“期待していたほどの成果が出ない”ことが理由で、途中でやめてしまうケースもよくあります。
● どうして効果が見えにくくなるのか?
理由はいくつかあります。
-
自動化できたけど、もともと手間の少ない作業だった
→ 毎月5分しかかからない作業を自動化しても、インパクトが小さい -
削減時間が「感覚的に」しか伝わらない
→ どれだけ楽になったのかを数字で示せないと、周囲から評価されにくい -
周囲に「で、何が変わったの?」と言われてしまう
→ 現場からの理解が得られないと、やる気が下がる
特に初心者が陥りがちなのは、
「まず目に見えてラクになる」業務ではなく、「技術的に簡単そうな業務」から始めてしまうことです。
それだと、せっかく自動化しても「なんか…これやって意味あったのかな?」となりがちです。
● 対策“時間削減”よりも“体感ラク”を重視する
最初のうちは、数値的なインパクトよりも、
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ストレスが減ったと実感できる作業
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毎回「うっかり」が起きやすい手間をなくす
-
面倒だった手順がワンクリックで終わる
こういった“使ってみて、気持ちがラクになった業務”を選ぶと、モチベーションが続きやすくなります。
● 「誰かに見せられる成果」を用意しておく
-
作業時間が○分短縮できた
-
ミスゼロになった
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作業件数が○件から○件に増えた
など、**第三者に伝えられる“ちょっとした成果”**があると、チーム内でも評価されやすくなり、自分のやる気にもつながります。
▶まとめ
RPAは「便利なツール」ですが、
「成果が見えない」と感じると、せっかくの取り組みが止まってしまうリスクがあります。
最初は「作業の時短」よりも、**「体感としてラクになった」「気持ちが軽くなった」**という小さな成功体験を大切に。
それが次のステップへとつながる、確かな一歩になります。
第6章よくあるリスク⑤「万能ツール」だと誤解される
RPAに興味を持った方の中には、「これさえあれば、何でも自動でやってくれるんでしょ?」
と思っている方も少なくありません。
実際に相談を受けていても、「人手が足りないから、RPAに全部やらせたい」「複雑な判断もRPAでなんとかしてほしい」
といった声をいただくことがあります。
しかし、それはRPAへの“過剰な期待”=誤解です。
● RPAは「何でも屋」ではありません
RPA、とくにPower Automate for desktop(PAD)は、
人がパソコンで行っている“定型的な操作”を代わりにやるツールです。
つまり、PADにできることはあくまで「操作の自動化」であって、
人間のように“考えて、判断して、柔軟に対応する”ことはできません。
たとえば、PADは…
-
内容を読んで判断することはできません
-
その場の空気を読んで例外対応することはできません
-
新しい業務を自分で覚えることもできません
これを知らずに、「全部任せよう」と思ってしまうと、
**うまく動かない → ツールのせい → RPAは使えない…**という負の流れになってしまいます。
● 対策「RPAができること」をチームで共有しておく
RPAは、得意なことだけを任せる“補助役”として使うのがベストです。
そのためにも、導入に関わるメンバーや上司、現場の担当者に対して、
-
RPAが何をしてくれるのか
-
逆に、何はできないのか
-
どこに人の判断が必要なのか
こういった**“できること・できないこと”の線引きを、あらかじめ共有しておくことが大切です。**
●「期待値を下げる」ことが、長く使う秘訣
ちょっと意外かもしれませんが、
RPAをうまく活用している企業ほど、RPAに過度な期待をしていません。
「これはRPAに任せて、ここは人が判断しよう」
というバランス感覚を持っているからこそ、現場に定着しやすいのです。
▶まとめ
RPAは“人の代わり”ではなく、“人を支える道具”です。
-
全部やらせようとしない
-
得意なことだけに絞って任せる
-
周囲にも「できること・できないこと」をしっかり伝える
こうした考え方が、RPA導入の成功を支える「リスク管理」の一つなのです。
最終章“期待しすぎない”が一番のリスク管理
ここまで、RPA(Power Automate for desktop)を導入する際に起こりがちな
5つのリスクとその対策をご紹介してきました。
どれも、実際の現場でよく見かける“リアルな落とし穴”ばかりです。
ふりかえりよくある5つのリスク
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想定外の動作で止まる・壊れる
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例外処理が混ざって混乱する
-
「作った人しかわからない」属人化問題
-
効果が見えずにモチベーションが下がる
-
「万能ツール」と誤解される
これらすべてに共通する本質的な原因は、
実は「RPAに期待しすぎてしまうこと」にあります。
● 完璧じゃなくていい。「一部だけラクになる」で十分
RPAは魔法のツールではありません。
でも、正しく使えば、日々の仕事をちょっとだけラクにしてくれる強い味方です。
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毎日くり返しているちょっと面倒な作業
-
「これ自動でできたらな…」と思っていたルーティン
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手作業でミスが出やすい部分のサポート
まずはそんな業務から、「意味のある一部」だけ自動化してみる。
それだけでも、あなたの仕事の中に
少しの余裕と安心が生まれるはずです。
● 小さく始めて、少しずつ育てていく
RPAは、導入して終わりではありません。
-
動きが止まったときにどう対処するか
-
フローを見直して、もっとシンプルにできないか
-
チームでどう使いまわしていくか
使いながら整えていく“成長型のツール”だと捉えると、失敗も学びに変わります。
▶まとめリスク管理とは「ちょっと冷静になること」
RPAに過度な期待をしない。
でも、過小評価もしない。
「できること」にしっかり目を向けて、
「できないこと」は無理にやらせない。
それこそが、RPAを現場に根づかせるための一番シンプルで、効果的な“リスク管理”なのです。
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