エナジードリンクと言えば、深夜の勉強や残業、あるいはスポーツで気合を入れたい時など、「ここ一番」の場面で手に取るイメージが強いかもしれない。
しかし、その常識を覆すかのように、「朝食代わり」をコンセプトにしたエナジードリンク「ZONe POWER MORNING ENERGY」が登場した。
レッドブルが日本に上陸してから20年、拡大を続けるエナジードリンク市場で、なぜ今「朝」なのか?『日経XTREND』のインタビューを基に考察してみよう。
朝の購入者が4割? 意外なデータから生まれた新発想
2025年4月8日に発売された『ZONe POWER MORNING ENERGY』(以下、朝食エナジー)は、その名の通り、忙しい朝のエネルギー補給を主眼に置いた商品だ。
最大の特徴は、エナジードリンク特有の炭酸が含まれておらず、りんご、もも、オレンジ、バナナ、マンゴーの5種類の果汁を15%配合している点。
バナナピューレによる自然な甘みと、とろりとした滑らかな舌触りは、まるでミックスジュースのよう。カフェインやアルギニンといったエナジードリンクの主要成分で覚醒を促しつつ、果汁由来の糖分で脳の活動もサポートするという、効率的なエネルギーチャージを目指した設計となっている。
開発を手掛けたZONeブランド担当者によると、意外にも「エナジードリンクの4割以上が朝5時から10時の間に購入されている」という調査結果があるという。
「慌ただしい朝の通勤や通学中に、コンビニエンスストアや駅の自動販売機でエナジードリンクを購入し、効率的に一日のスタートを切りたい若い世代が一定数いる」と担当者は分析する。
もちろん、購入者全員がその場ですぐに飲んでいるとは限らないが、この時間帯の購入動向は、「朝向け」というコンセプトに十分な勝算があることを示唆していた。
エントリー層拡大への挑戦
物価高と若年層の取り込み
しかし、なぜZONeは「朝」という新たな飲用シーンに活路を見出そうとしているのだろうか。背景には、エナジードリンク市場全体の成長鈍化という課題がある。
ZONeブランド担当者によれば、2022年以降、市場の成長は緩やかになっており、その一因として近年の物価高騰の影響で、特に10代後半の新規層が流入しづらくなったことが挙げられるという。
「エナジードリンクの主要な購買層は10代から20代。お小遣いで購入する学生にとって、200円近い価格は高価に感じられ、購入を控える動きも出ている」と担当者は語る。
一方で、既に飲用習慣が定着しているヘビーユーザー層の購入量は大きく変わっていない。
そこで、これまでエナジードリンクを飲む習慣がなかった30歳以下の「エントリー層」を拡大するため、より気軽に手に取ってもらえるよう、フルーツミックス味で無炭酸という、ジュースに近い味わいを採用したのである。
ZONeブランドの傾向を見ても、伝統的なエナジードリンクの風味よりも、果汁入りのフレーバーの方が若年層に選ばれやすいという。
ZONeはこれまでも、乳性ソーダ飲料風の「HYPER ZONe WHITE SODA」や、スパイスを効かせた刺激的な「HYPER ZONe BLACK PUNCH」など、多様なフレーバーを展開し、普段ジュースや炭酸飲料を飲んでいる層が自然に移行できるような商品開発を進めてきた。「朝食エナジー」も、このエントリー層拡大戦略の一環と位置付けられる。
エナジードリンク市場は、購買層の年齢幅が比較的限定されている。20代後半になると、コーヒーなど他のカフェイン摂取手段を知り、エナジードリンクから離れる傾向が見られる。
特に女性は、年齢とともに健康意識が高まり、比較的高カロリーで糖類を多く含むエナジードリンクを敬遠しがちだという。
それゆえ、市場を維持・拡大するためには、絶えず新たなエントリー層を発掘し、同時に既存顧客一人当たりの飲用機会を増やすマーケティング戦略が不可欠となる。ZONeは、カフェイン含有量に応じた飲用に関する注意喚起(朝食エナジーはカフェイン75mg)を明記し、適正な飲用を推奨しつつも、新たなニーズを開拓するために知恵を絞っている。
「朝の一本」は、国内市場の拡大を実現するか
発売から間もない「朝食エナジー」だが、ZONeの他の製品と比較しても、エントリー層からの反応は良好で、狙い通りの動きを見せているという。
若い世代にアプローチできれば、それだけ長期間ブランドを愛用してもらえる可能性が高まる。業界後発組であるZONeにとって、10代後半を中心とした若年層ターゲット戦略は理にかなっていると言えるだろう。
レッドブルが日本市場に参入してから約20年。
多くのブランドがひしめき合い、市場全体の成長がかつてほどではない現在、競争は激化の一途をたどる。「朝食エナジー」のような、従来のイメージにとらわれないフレーバーやコンセプトの商品が次々と登場しているのは、まさにその証左である。
この新しい「朝の一本」が、エナジードリンク市場にどのような変化をもたらすのか、注目される。
🧠 編集部の感想:
新しい「朝食エナジー」の登場は、忙しい現代人のニーズに応える斬新な試みですね。炭酸がなく、フルーツミックスの味わいは、ジュース感覚で気軽にエネルギー補給ができそうです。今後、この新しい飲用スタイルがエナジードリンク市場の成長を促進するか、注目したいです。
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