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「書いて覚える」は本当?タイピングと手書きはどちらが識字能力を高めるか検証した結果


学生時代の勉強方法といえば、「書いて覚える」だったという人は少なくないでしょう。

しかし、デジタル機器が普及した現代、子どもたちは幼い頃からタイピングに触れ、鉛筆で文字を書く機会は減少しています。

では、本当に「書く」ことは学習においてメリットがあるのでしょうか?

タイピングとの違いはあるのでしょうか?

スペイン・バスク大学(UPV)の研究チームは、識字能力の発達に重要な5~6歳の時期に、手書きとタイピングが及ぼす影響の違いを科学的に検証しました。

研究は2025年2月4日付で『Journal of Experimental Child Psychology』に掲載されました。

目次

  • 手で書くことが学習や識字能力にもたらす影響とは?
  • 「書いて覚える」は正しかった!タイピングよりも一貫して識字能力を高める

手で書くことが学習や識字能力にもたらす影響とは?

読み書きのスキルは、子どもたちの言語能力や学力形成に直結する重要な能力です。

とくに「読み」は、他者とのコミュニケーション力、自己表現力、そして情報の獲得手段の根幹を担っています。

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識字能力の発達に効果的な学習方法とは? / Credit:Canva

そんな識字能力の発達において、これまで多くの教育者や研究者が「書くことの重要性」を指摘してきました。

なかでも注目されてきたのが、「手書きが脳の学習プロセスを活性化させる」という仮説です。

タイピングでは単一のキー入力で文字を表現するのに対し、手書きでは一文字ごとに複雑な運動が求められるため、より多くの感覚が動員されると考えられています。

本研究では、こうした仮説をより精密に検証するため、2つの要素に焦点が当てられました。

1つ目は、「手を動かす行為そのものが学習に貢献しているのか」という点です。

2つ目は、「手書きによる文字の見た目の違いが文字の本質的な理解を促進するのか」という点でした。

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「手書き」と「タイピング」を比較 / Credit:Canva

研究には、スペインのバスク地方に住む平均年齢5.4歳の子どもたち50名が参加しました。

彼らはまだ読み書きを習得していない段階にあります。

まず、子どもたちは見慣れない9つの文字(アルメニア語やジョージア語など)と、それらを使って構成された2音節の造語16個を学習するよう指導されました。

その際、学習方法は4つのグループに分けられました。

自由に文字を書く「自由な手書き」、点線をなぞる「なぞり書き」、フォント1種類を用いた「単一フォントタイピング」、複数のフォントを使った「多様フォントタイピング」です。

このようにして、手を動かす効果と見た目の違いによる効果を、それぞれ独立して比較できるように設計されました。

子どもたちはそれぞれの方法で、文字と単語の形、音、つづりを練習し、その後に読み、書き、識別のテストを受けました。

「書いて覚える」は正しかった!タイピングよりも一貫して識字能力を高める

テストの結果、最も高い学習効果を示したのは、手書きによる学習を行ったグループでした。

彼らは文字の見た目を正しく認識するだけでなく、音を聞いて文字を書き出す能力や、新しい単語を正確に読む・書く能力においても、一貫してタイピングのグループを上回っていました。

これは、手を動かすこと自体が脳に文字の形や音の情報を統合させる助けとなっていることを示しています。

「書いて覚える」はタイピングよりも効果的であり、識字能力の発達に役立つ可能性が高いのです。

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「手書き」は「タイピング」よりも識字能力を高めると判明 / Credit:Canva

そして、同じ手書きでも、「自由な手書き」の方が「なぞり書き」よりも高い成績を収めました。

これは、同じ文字でもいろいろな見た目で見ることで、文字の本質をつかむ能力が高まる可能性を示唆するものです。

この研究は、書くことによって文字の深い理解が促されること、そして見た目のバリエーションがより強固な文字認識を育てるという仮説を実証的に裏付けたものとなりました。

この研究結果は、子どもだけに限らず、大人の学習にも応用可能です。

何かを覚えたいとき、キーボードでメモを取るより、実際に手でノートに書き写したほうが記憶に残りやすいと考えられます。

未だに「ノート派」が多いのも、これが理由の1つかもしれません。

また、教育の現場においては、早期からコンピュータで学習を進めるよりも、まずは鉛筆で書く体験を大切にすることが重要だと言えます。

指先を動かすことは、脳を育てることにつながります。

あなたも、久しぶりにノートとペンを取り出して、「書いて覚える」体験をしてみませんか

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参考文献

New study shows handwriting boosts early reading skills more than typing
https://www.psypost.org/new-study-shows-handwriting-boosts-early-reading-skills-more-than-typing/

Writing by Hand Helps Children Learn Letters Better
https://neurosciencenews.com/hand-writing-learning-28806/

元論文

The impact of handwriting and typing practice in children’s letter and word learning: Implications for literacy development
https://doi.org/10.1016/j.jecp.2025.106195

ライター

大倉康弘: 得意なジャンルはテクノロジー系。機械構造・生物構造・社会構造など構造を把握するのが好き。科学的で不思議なおもちゃにも目がない。趣味は読書で、読み始めたら朝になってるタイプ。

編集者

ナゾロジー 編集部

フラッグシティパートナーズ海外不動産投資セミナー 【DMM FX】入金

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