ざっくり内容:
背景と概要
2021年制作の映画『NEW RELIGION』は、独特なインディペンデント・ホラー作品です。都市の片隅に潜む暗い感情や喪失を描いており、海外の映画祭で高く評価されています。この映画は2023年7月18日から日本でも公開され、話題を呼んでいます。
物語の核心
物語の主人公、雅(瀬戸かほ)は、不慮の事故で幼い娘を失った後、デリヘル嬢として働いています。彼女はある日、謎の客から「身体の一部を撮影する」という奇妙な依頼を受けます。この撮影を通じて、亡き娘の「存在」を感じ始める雅の心の葛藤が、物語の中心です。
映像と音の没入感
本作は、映像の美しさと不安感を与える音響デザインが特徴です。サウンドは常に微かに響き、観客を無意識の不安に包み込みます。静謐な映像が都市の孤独を際立たせ、観る者に喪失の痛みを感じさせる余韻を残します。
演技とその深み
瀬戸かほの静かな演技が際立ち、セリフが少ない中でも彼女の感情は強く伝わります。依頼主となる男も謎めいており、物語全体に不安定な要素を加えています。
映画のジャンルと影響
『NEW RELIGION』は、ボディホラーや心理スリラー、アートハウスホラーなど、複数のジャンルを横断しています。デヴィッド・クローネンバーグや黒沢清などの影響が色濃く、観客はジャンルに囚われず深い体験を得られます。
余韻と体験
映画鑑賞が一種の儀式のように感じられる要素もあり、観客は鑑賞後もその感覚を持続します。撮影の暴力性や死者との接触への渇望が、内面的な反響を引き起こし、観客に強い印象を残します。
『NEW RELIGION』は、シネマート新宿他で全国順次公開中です。
編集部の見解:
『NEW RELIGION』は、喪失感や孤独を深く掘り下げた独自のホラー映画であり、その映像美と音の使い方が印象的です。主人公の雅が抱える悲しみや異常な依頼の中で浮かび上がる感情は、観客も共鳴する部分が多く、ただの恐怖映画ではない深い体験を提供しています。
私自身、この映画が描く「死者との接触」というテーマに引き込まれました。特に、ボディホラー的な要素が絡むことで、肉体的な感覚が記憶や亡き存在と結びつく様子は、強烈な共感を呼び起こします。デヴィッド・クローネンバーグ映画を思い起こさせる部分は、確かに身体を媒介とした心理的な恐怖を巧みに描写しているからでしょう。
また、近年の社会においても、私たちは個人の喪失や痛みを視覚化することが増えています。SNSや映像を通じて、故人の記憶を共有することが日常化している中、この映画はその現象に対して一種の問いかけをしているように感じました。写真や映像が死者との「接触」を可能にする一方で、それがもたらす心理的影響に目を向けさせます。
この映画が持つ不気味な余韻は、ただのエンターテインメントを超え、観客に深く考えさせるきっかけを与えます。私たちの内面や感情と向き合わせる儀式的な体験として、今後も語り継がれる作品となることでしょう。映画は単なるストーリーを越えて、私たちに何を感じさせたのかを考えるきっかけを常に提供してくれるものなのですね。
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キーワード: 喪失
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