金曜日, 5月 23, 2025
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「天気予報AI」が世界の天気予報センターの”予測精度を上回る”


「天気予報を見て週末の予定を立てたのに、雨が降ってがっかりした」

そんな経験が一度はあるのではないでしょうか。

私たちが普段利用している天気予報は非常に精密で信頼性が高いですが、それでも外れることはあります。

特に、数日先の予報になると、その誤差は少しずつ大きくなっていきます。

しかし今、その限界を超えようとする驚異のAIモデルが登場しました。

その名は「Aurora(オーロラ)」。

このAIは、Microsoft Researchが開発したもので、これまでの気象予測の常識を覆すような成果を上げています。

Auroraは気象予報だけでなく、大気汚染や海洋波、台風の進路予測までも一つのモデルで実現しており、既存の世界的な予報センターの予測精度を大きく上回ったのです。

この研究成果は、2025年5月21日付で科学誌『Nature』に掲載されました。

目次

  • 天気予報AI「Aurora」が開発される
  • 従来の天気予報モデルを超えた!天気予報AI「Aurora」の性能とは

天気予報AI「Aurora」が開発される

現在の気象予報の多くは、「数値予報モデル(NWP)」と呼ばれる、物理法則に基づいたコンピュータシミュレーションに依存しています。

例えば、ヨーロッパ中期予報センター(ECMWF)が運用するIFS(Integrated Forecasting System)では、大気を格子状に分割し、気温や気圧、湿度、風速などの初期値を用いて、時間ごとの変化を計算しています。

数値予報モデル / Credit:Wikipedia Commons

こうした数値モデルは非常に高精度ですが、同時に非常にコストがかかる方法でもあります。

膨大な計算量を処理するためにスーパーコンピュータが必要です。

さらに、大気汚染や海洋波、台風の進路といった個別の課題に対しては、それぞれに特化した別のモデルが必要とされる場合もあり、開発や運用には大規模なチームと資金が必要です。

こうした現状を打破するために開発されたのが、AIモデル「Aurora」です。

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天気予報AI「Aurora」が開発される / Credit:Generated by OpenAI’s DALL·E,ナゾロジー編集部

Auroraはまず、気象衛星、レーダー、地上観測所、既存のシミュレーションや予報データから得られた、合計100万時間以上にも及ぶ気象データを使って、一般的な天気パターンの学習を行います。

Microsoftによれば、これはAI気象モデルの学習に使われたデータとしては過去最大規模です。

この段階でAuroraは、わずか数秒で天気を予測する能力を獲得。

その後、波の高さや大気汚染などの特定分野に合わせて少量のデータで微調整を施すことで、さまざまな用途に対応できるようになりるのです。

では、このAuroraは自分の性能に関してどんな結果を残してきたでしょうか。

従来の天気予報モデルを超えた!天気予報AI「Aurora」の性能とは

Auroraの最大の特徴は、複数の気象・環境分野において、既存の最先端予測システムを超える性能を発揮している点です。

研究者らは、Auroraが約10平方キロメートル規模での10日間の世界予報において、92%のケースでヨーロッパ中期予報センター(ECMWF)の従来のモデルを上回ったと報告しています。

またAuroraは、台風の進路予測でも驚異的な精度を示しました。

2022~2023年における台風の5日間の進路の予測において、Auroraは世界の主要予報センター7つの公式予報を平均で上回り、誤差を最大25%も修正したのです。

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台風の進路に関して、AIが公式予報を上回る / Credit: Microsoft

特に、2023年の台風「Doksuri 」では、Auroraが4日前の時点で正確にフィリピン上陸を予測したのに対し、複数の予報機関は台湾沖への進路を想定していました。

こうした結果から、Auroraはもはや「研究用AI」ではなく、「実用レベルの地球予測AI」としての立場を確立しつつあると言えます。

しかも、学習済みのこのモデルはGPU1枚でも運用可能であり、スパコンを必要としません。

Auroraの計算コストは従来のモデルと比べて、数百倍も低いとさえ言われています。

これは、先進国だけでなく、資源の乏しい地域や自治体でも、気象・災害予測が高度化できることを意味します。

今後、AuroraのようなAIモデルは、農業、再生可能エネルギー、防災、物流、さらには医療といった領域にも、安価な形で広がっていく可能性があります。

地球規模のシミュレーションが「民主化」される時代が来るのかもしれません。

全ての画像を見る

参考文献

New AI Weather Tool Outperforms Global Forecasting Centers
https://www.sciencealert.com/new-ai-weather-tool-outperforms-global-forecasting-centers

From sea to sky: Microsoft’s Aurora AI foundation model goes beyond weather forecasting
https://news.microsoft.com/source/features/ai/microsofts-aurora-ai-foundation-model-goes-beyond-weather-forecasting/

元論文

A foundation model for the Earth system
https://doi.org/10.1038/s41586-025-09005-y

ライター

矢黒尚人: ロボットやドローンといった未来技術に強い関心あり。材料工学の観点から新しい可能性を探ることが好きです。趣味は筋トレで、日々のトレーニングを通じて心身のバランスを整えています。

編集者

ナゾロジー 編集部



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🧠 編集部の感想:
AI「Aurora」が従来の天気予報を超えたのは革新的です。これにより、より正確で迅速な気象予測が可能になり、特に災害対策や農業などに大きな影響を与えるでしょう。進化したAI技術が地球規模の予測を「民主化」する未来が楽しみです。

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