熱狂的な人気を誇る「ラーメン二郎」
1968年に創業して以来、熱狂的な人気を誇る「ラーメン二郎」。
東京・三田の慶応義塾大学近くに本店を構え、現在では全国に44店舗の直系の店が存在する。ラーメン二郎の特徴といえば、自家製の極太麺に、分厚いチャーシュー、そして好みに合わせて無料で大盛りのトッピングができること。また「コール」と呼ばれる呪文のような注文方法など、独特のルールが多いことでも知られている。
ビジュアル、味ともにインパクトが絶大で、ほかのラーメンとは一線を画した存在として君臨し、世代問わず多くの熱狂的ファンを生み続けているのだ。そしてラーメン二郎には、「二郎」の看板を掲げた直系の店ではない“二郎インスパイア系”と呼ばれる派生形の店も数多く存在する。
近年は初心者でも挑戦しやすい形で、店員全員が明るく愛想のいい二郎インスパイア系や、食券購入時に細かい好みの指定まで可能で店員との会話が不要な二郎インスパイア系も出てきており、二郎系ラーメンは一般層にまでその認知度が広まってきているのだ。
photo by gettyimages
SNSでの「炎上」が頻発
だがその一方、二郎系ラーメン店における客と店のトラブルがたびたびSNSなどで炎上しているのをご存じだろうか。今年9月にXにて、埼玉県蕨市にある二郎インスパイア系ラーメン店を訪れたところ、注文したはずの内容と違うトッピングがされていたため、その旨を店員に報告すると、店員から「うるせぇなバーカ」、「文句言ってんじゃねえ」などと暴言を吐かれ、返金も拒否されたという客によるポストが話題となった。
ポスト主はのちに店名を明かしたが、該当の店からは特にその後謝罪などの対応はない様子であった。こうしたトラブルによって店の評判が下がるかと思いきや、トラブル後もXでは、話題となった店に対する好意的なレビューが新たに続々と追加されているのだ。
SNSで炎上するトラブルは、店員や店主の態度が問題になることが多いが、なぜ店の評判が落ちることはないのだろうか。トラブルがありつつも、二郎系ラーメンの人気が続くワケについて、フードアナリストの重盛高雄氏に解説してもらった。(以下「」内は重盛氏の発言)
ゆきぽよが語っていた二郎系のトラウマ
まずはこれまで話題となった二郎系ラーメンに関するトラブルを紹介しよう。
冒頭の蕨市にあるラーメン店のトラブルのほかにも、今年7月、直系である「ラーメン二郎 府中店」では、店の公式Xで《お食事は最大で20分以内にお願いします》と告知し、その後の客とのやり取りで店側が高圧的な態度を取ったことにより、SNSで炎上。結果的にラーメン二郎 府中店側が謝罪に追い込まれる事態となった。
さらに、二郎系ラーメン店ならではの高圧的な接客態度に、トラウマを覚えたという芸能人もいる。
タレントのゆきぽよ(28)は、今年3月に出演したネット番組『ABEMA的ニュースショー』(ABEMA)内で、二郎系ラーメン店を訪れた際のエピソードを披露。
「食券買って、普通のラーメン屋さんだったら『すいません』って店員さんにお願いするじゃないですか。『すいません』て声かけたら『今じゃねえ』って怒られちゃって」
と語っていたゆきぽよは、そのトラブルの後、二郎系ラーメン店に行けていないとも告白した。
本来であれば店主が客を怒鳴りつけたり、店員が高圧的な態度を取ったりすることは、店の評判を落としかねないリスクある行為だと認識するのが普通だろう。
二郎系ならではの“独自の世界観”とは?
なぜ二郎系ラーメン店は、こういったリスキーな接客を行うのか、重盛氏にそのワケを聞いた。
「二郎系ラーメン店は普通の飲食店とは違い、二郎ならではの“独自の世界観”が築かれているんです。例えば、“店員や店主が堅物で怖い”といったこともそうですが、食べているときは喋らずに黙食することが基本、注文は店員が声をかけるまで待つなど、独特なルールや雰囲気を含めて二郎という店の世界観が出来上がっているんです。
そうした世界観のなかで店も客も生きているので、客に高圧的な態度を取ったとしても、店側はそれが普通のことだとしか思っていないんじゃないでしょうか。客側もそうした態度を受け入れていて、むしろそれを“二郎らしさ”だと主張する人もいるかもしれません。いいか悪いかは別にして、ある種こうした接客態度の悪さも二郎のブランディングになっていると言えるでしょう」
photo by gettyimages
二郎系ラーメン店の接客態度の悪さは、マイナスに働くこともある一方で、むしろそれが二郎ブランドを構築してきたという側面もあるということのようだ。
さらに重盛氏は、二郎系ラーメン店のトラブルが目立っている背景には、これまでコアなファンが好んでいた二郎系ラーメンが大衆化したことも原因にあると指摘する。
「コロナ禍で店舗への客足が減ったことを背景に、有名ラーメン店がこぞってコンビニなどで自身の店が監修するオリジナルの商品を発売するようになりました。二郎系ラーメンも例外ではなく、多くの有名店がコンビニとのコラボ商品開発に力を注ぎました。こうして一般層にまで二郎系ラーメンが広がったことで、二郎系ラーメン店全体の注目度が上がり、炎上しやすい土壌が出来上がったとも考えられます。
もちろんこれまでも客とのトラブルは存在していたと思いますが、コアなファンが多かったがゆえに隠されてしまっていたか、SNSが発達したことで徐々に可視化されるようになったのでしょう」
ちなみにセブン-イレブンは、二郎インスパイア系「ラーメン雷」を監修する「中華蕎麦 とみ田」とコラボし、2019年に「中華蕎麦とみ田監修豚ラーメン(豚骨醤油)」を発売してからその後、何度も商品をリニューアルして人気商品となっている。ファミリーマートでも2020年から、駒場東大前の人気二郎インスパイア系ラーメン店「千里眼」とコラボした二郎系ラーメンの商品を発売している。
記事後半は【「二郎系ラーメン店」が炎上してもノーダメージな理由…店と「コアな二郎ファン」の独特すぎる関係性】から。
🧠 編集部の感想:
ラーメン二郎の人気が大衆化する中で、客と店員の間でトラブルが増えているのは興味深いです。特有の接客スタイルがブランドの一部として受け入れられている一方、その高圧的な態度が炎上を招く原因にもなっているのは皮肉です。今後の二郎系ラーメン店の運営や客との関係性がどのように変化するのか、注目したいです。
Views: 0