「リーダーの仕事」をオーケストラに例えると?「マネジメントの父」ドラッカーの答えにぐうの音も出ない…Photo:PIXTA

「マネジメントの父」と呼ばれ、経営学の大家であるピーター・ドラッカー。彼は個人が自らをマネジメントするという「マネジング・ワンセルフ(Managing Oneself)」を提唱した。このマネジング・ワンセルフをもとに、CIO(最高情報責任者)養成講座(日経BP主催)はじめ多数の講座で人気講師である森岡謙仁氏が、管理職の果たすべき役割や、組織運営の本質について解説する。※本稿は、森岡謙仁『ドラッカーに学ぶ!管理職 養成講座』(日経BP)の一部を抜粋・編集したものです。

自らをマネジメントする
「マネジング・ワンセルフ」

 マネジング・ワンセルフは、「より公的な自分をつくる」ことです。MSC(編集部注/マネジメント・スコアカード。ドラッカーが1954年に開発。組織の基本計画を定義するための5つの重要な質問と、その計画の成果を測定するための8つの重要領域目標を合わせたもの)は、経営者や管理者がマネジメントの役割を実践するときに役立つフレームワークでありツールです。MSCは「担い手」を選びません。

 しかし、会社が課した利益目標の達成にばかり汲々としている管理職は、MSCを使いこなすことはできません。組織やチームの成長を志向しより良い社会を創るという、ドラッカーが唱える普遍的価値観に基づくマネジメントの長期的な目標を真摯に受け止め、その実現に貢献しようとの志を持つ人(真摯な貢献人)にこそ役に立つものです。マネジメントの担い手になる方法が、マネジング・ワンセルフです。

図表1:MSC基本書式同書より転載
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 ドラッカーが説いたマネジング・ワンセルフは、『明日を支配するもの』(1999年発行)と『マネジメント』で体系化されたマネジメントの基本と原則を踏まえて理解する必要があります。

 例えば、同書の第34章「自己目標管理」にある、3人の石工の話もその1つです。ある石切り場で働いている3人の石工は何をしているかを問われて、第1の石工は「暮らしを立てている」、第2の石工は「石切りの最高の仕事をしている」、第3の石工は「教会を建てている」と答えました。今風に言えば、それぞれ第1の石工は「生活のために金を稼いでいる」、第2の石工は「技術を磨いている」、第3の石工は「社会のために働いている」となります。