金曜日, 5月 23, 2025
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「フードダイバーシティ」で広がる、食の未来



最近耳にする機会が増えた「フードダイバーシティ」という言葉。なんとなく知っているようで、実はよく分からない…そんな人もいるかもしれません。

この記事では、フードダイバーシティの基本的な考え方と、なぜ今これほど注目を集めているのか、その背景にあるグローバルな変化や私たちの意識の動きを紐解いていきます。食にまつわる「違い」を理解し、認め合うことの大切さが見えてくるはずです。

「フードダイバーシティ」とは?

カフェのメニューで見かける「ヴィーガン対応」の文字や、ニュースで耳にする「ハラル認証ド」。私たちの周りには、食に関する様々な言葉が溢れています。それら多様な食習慣や背景に目を向け、理解しようとする姿勢が「フードダイバーシティ」の第一歩。

単なるトレンドワードとしてではなく、これからの社会でますます重要になる考え方として、まずはその意味を知ることから始めてみましょう。

大切なのは、食の「違い」を認め合うキモチ

フードダイバーシティ(Food Diversity)は、直訳すれば「食の多様性」。世界には、宗教上の決まりごと、健康上の理由、あるいは個人の信条や文化、アレルギーなど、様々な背景から特定の食品を食べられない、または食べないと選択している人々がいます。

大切なのは、そうした一人ひとりの“食の違い”を特別なこととしてではなく、個性として理解し、尊重すること。そして、誰もが安心して、心地よく食事を楽しめる環境を整えようという考え方なのです。食を通じて違いを認め合い、共に食卓を囲む喜びを分かち合う。そんな温かな視点が、この言葉には込められています。

グローバル化と意識の変化が後押し

では、なぜ今、フードダイバーシティがこれほどまでに注目されているのでしょうか。その背景には、いくつかの社会的な変化が関係しています。

海外からのゲストを迎える「おもてなし」として

大きな理由の一つが、日本を訪れる外国人旅行者(インバウンド)の増加です。コロナ禍を経て再び活気を取り戻し、2024年4月には単月で約300万人に達するなど、多くの国や地域から多様な文化背景を持つ人々が日本にやってきています。

彼らの宗教や文化は実に多様で、それに伴い食習慣も様々。たとえば、イスラム教徒向けの「ハラル」や、菜食主義である「ヴィーガン」「ベジタリアン」などへの対応は、彼らが日本での滞在を快適に過ごす上で欠かせない要素となっています。2018年時点の推計では、訪日するベジタリアン・ヴィーガンだけでも年間145万人から190万人にのぼるとも言われており、国際的な交流が再び活発になるなかで、多様な食への配慮は、まさにおもてなしのスタンダードとなりつつあります。

 

健康、環境、そして「自分らしい食」を選ぶ人が増えている

フードダイバーシティは、海外からのゲストのためだけではありません。私たちのライフスタイルや価値観の変化とも深く関わっています。

健康を意識してグルテンフリーの食品を選んだり、アレルギーのために特定の食材を避けたり。また、地球環境への負荷動物福祉への配慮から、植物由来の食品を中心としたプラントベースの食生活やヴィーガンを選択する人も世界的に増えています。食の選択が、単に空腹を満たすだけでなく、自分自身の価値観や健康、社会との関わり方を表現する手段にもなっているのです。

SDGsの目標達成にもつながる大切な視点

フードダイバーシティへの取り組みは、国連が掲げるSDGs(持続可能な開発目標)とも関連しています。特に「目標10:人や国の不平等をなくそう」は、食の制限によって誰かが疎外されることのない社会を目指すフードダイバーシティの考え方と重なります。

また、プラントベース食の推進は「目標13:気候変動に具体的な対策を」への貢献も期待されるなど、食という身近なテーマを通じて、より良い未来を作るためのアクションにつながる視点なのです。

ハラル、ヴィーガン……
知っておきたい食のスタイルいろいろ

フードダイバーシティと一口に言っても、その背景や内容はじつに様々。ここでは、代表的な食のスタイル制限について、その概要を簡単に紹介します。

宗教的な理由から、健康や思想に基づく選択、あるいはアレルギーへの配慮まで、多様な食の世界を少し覗いてみましょう。それぞれの違いを知ることが、理解への第一歩となるはずです。

「宗教」に根ざした食のかたち

特定の宗教の教えに基づいて、食べられるものや調理法に決まりがある場合があります。代表的なのが、イスラム教の「ハラル(ハラール)」。豚肉やアルコールなどが禁じられているほか、食肉の処理方法にも規定があります。

また、ユダヤ教には「コーシャ(コシェル)」と呼ばれる食事規定があり、食べても良い食材の組み合わせや調理法などが定められています。これらは信仰に基づく大切な習慣であり、敬意を持って理解することが求められます。

「思想」や「健康」から選ぶ食

個人の思想信条や健康上の理由から、特定の食品を避ける、あるいは積極的に選ぶというスタイルもあります。

たとえば「ヴィーガン」は、肉や魚、卵、乳製品、はちみつなど、あらゆる動物性食品を避ける完全菜食主義のこと。動物愛護や環境保護の観点から選択する人もいます。

同じ菜食でも、卵や乳製品は食べる「ベジタリアン」など、いくつかのタイプが存在します。これらは日本国内でも関心が高まっています。日本初のプラントベース・ポータルサイト「Vegewel」が、2023年に実施した調査によれば、ヴィーガン実践者は日本の人口の約2.4%と推計されています。

「グルテンフリー」は、小麦などに含まれるたんぱく質「グルテン」を摂取しない食事法。セリアック病という自己免疫疾患を持つ人にとっては必須の食事ですが、健康志向から選択する人も増えています。

アレルギーを持つ人への「安心」も忘れずに

食物アレルギーも、フードダイバーシティにおいて非常に重要な側面です。特定原材料(卵、乳、小麦、えび、かに、くるみ、そば)をはじめ、様々な食品がアレルゲンとなり得ます。

アレルギーを持つ人にとっては、微量でも原因物質が混入することで深刻な症状を引き起こす可能性があるため、食品表示の確認や調理環境の整備など、細心の注意が必要。誰もが安全に食事を楽しめるよう、アレルギーへの正しい知識と配慮が求められます。

ポイントは「決めつけない」こと。違いを理解するヒント

ハラル、ヴィーガン、グルテンフリー……様々な食のスタイルがありますが、「〇〇だから、きっとこうだろう」と安易に決めつけないことが大切です。たとえば、ベジタリアンの中にも様々なタイプがありますし、食事制限の度合いも人それぞれ。相手の状況を尊重し、必要であればコミュニケーションをとって確認する姿勢が、誤解を防ぎ、より良い関係を築く鍵となります。

多様な食文化を知識として知るだけでなく、相手への想像力を持つことが、フードダイバーシティの本質なのです。

世界と日本ではどう?
フードダイバーシティの今

フードダイバーシティという考え方は、世界中でどのように受け入れられ、具体的な形になっているのでしょう。海外の先進的な取り組みから、進化するフードテック、そして急速に変化しつつある日本の現状まで、フードダイバーシティを取り巻く「今」をご紹介。食の選択肢が広がることで、私たちの日常も少しずつ変わり始めているのかもしれません。

海外ではもう常識。レストランやスーパーの工夫

欧米を中心に、多様な食習慣への対応はかなり進んでいます。たとえば、スーパーマーケットでは、ヴィーガンやグルテンフリーの食品を集めた専用コーナーが設けられているのが一般的。レストランでも、アレルギー情報はもちろん、ヴィーガンやベジタリアン向けのメニューが用意されていることが多く、食事制限がある人もない人も、一緒に外食を楽しむための環境が整いつつあります。

大手ファストフードチェーンが、プラントベースのハンバーガーを定番メニューとして導入したり、国際線の機内食で様々な特別食が選べるようになったりと、選択肢は確実に広がっています。

フードテックが加速させる、おいしい選択肢の世界

フードダイバーシティの広がりを後押ししているのが、食品テクノロジー「フードテック(FoodTech)」の目覚ましい進化です。特に注目されているのが、植物由来の原料から作られるプラントベースフード。かつては「お肉の代用品」というイメージもありましたが、代替タンパク質の製造技術や、食品の味・食感をデザインする技術の進歩によって、驚くほど美味しく、多様な製品が生み出されています。

大豆ミートだけでなく、オーツミルクやアーモンドミルクといった植物性ミルク、さらには植物性のチーズやバターなど、種類も豊富に。や、3Dフードプリンターによる食品製造など、未来を感じさせる研究開発も世界中で進んでおり、美味しくて、ヘルシーで、環境にも優しい、そんな新しい食の選択肢として、世界的に市場が急拡大しています。

日本でも加速。新しい選択肢が続々

日本国内でも、フードダイバーシティへの関心は着実に高まり、様々な動きが見られます。インバウンド需要への対応はもちろん、国内のライフスタイルの変化も後押ししています。

メーカーからスタートアップまで。食卓を変える挑戦者たち

大手食品メーカーも、多様なニーズに応える製品開発に力を入れています。ハラル認証を取得した調味料や菓子、ヴィーガン認証を受けた食品などが登場し、輸出だけでなく国内市場向けの展開も増えています。また、アレルギーを持つ人向けに、特定の原材料を使わない食品を専用工場で製造する動きも。

プラントベースフードの分野も活発で、スーパーやコンビニでも代替肉や植物性ミルクなどを見かける機会が増えました。さらに、革新的な技術でユニークな代替食品を開発・提供する国内スタートアップも次々と登場しており、食卓に新しい彩りをもたらす選択肢が、より身近になっています。

地域から発信! ユニークな取り組み事例

地域レベルでも、フードダイバーシティを推進する動きが出てきています。たとえば山梨県では、「やまなし フードダイバーシティ認証」という独自の制度をスタート。ハラル、ヴィーガン、ベジタリアンに対応する飲食店や宿泊施設、商品を認証し、情報発信を行っています。地域全体で多様な食への理解を深め、受け入れ体制を整えようという先進的な試みと言えるでしょう。

 

大阪・関西万博でも体験できる

2025年に開催される大阪・関西万博でも、フードダイバーシティは重要なテーマの一つ。会場内のレストランやカフェでは、ヴィーガン、グルテンフリー、ハラルなど、多様な食習慣に対応したメニューが提供されています。世界中から訪れる人々が、それぞれの食文化を尊重されながら日本の食を楽しめる、そんな未来の食体験が展開されています。

フードダイバーシティがひらく
これからの食卓

フードダイバーシティを理解し、受け入れることは、私たちの食生活や社会にどのような変化をもたらすのでしょうか。それは単に制限のある人への配慮に留まらず、私たち自身の食の世界を豊かにし、よりインクルーシブで刺激的な未来を築くきっかけになるかもしれません。これからの食卓がもっと楽しくなる、そんな可能性を探ります。

「誰かと食べる」が、もっと楽しくなる未来

食の制限があると、友人との外食やパーティーでメニュー選びに困ったり、周囲に気を遣わせてしまうと感じたりすることがありますよね。でも、フードダイバーシティが進むことで、誰もが気兼ねなく、食べたいものを選択できる場面が増えるはず。

アレルギーを持つ子も、宗教上の理由がある人も、ヴィーガンを選択する人も、そうでない人も、同じテーブルを囲んで「おいしいね」と笑い合える。そんなシーンが当たり前になることは、コミュニケーションを豊かにし、社会全体のつながりを深めることにも繋がるでしょう。

新しい味や文化との出会いが日常を刺激する

フードダイバーシティへの関心は、私たち自身の食の世界を広げるチャンスでもあります。これまで馴染みのなかったハラル料理や、プラントベースのレシピに挑戦してみる。グルテンフリーのスイーツを試してみる。それは、新しい味覚との出会いであり、その背景にある文化や価値観に触れる機会にもなります。

多様な食を知ることは、日常に新しい発見と彩りをもたらし、私たちの食体験をより豊かで刺激的なものにしてくれる可能性を秘めているのです。

フードダイバーシティ、はじめの一歩

「フードダイバーシティのために、何か特別なことをしなきゃいけないの?」と思う必要はありません。大切なのは、日々のちょっとした意識や選択です。

たとえば、いつものカフェでオーツミルクラテを試してみたり、週末に友人と話題のプラントベースレストランへ足を運んでみたり。そんな気軽なアクションから始めてみませんか?

STEP1: 知る、そして想像力を働かせてみる

まずは、この記事で触れたように、様々な食のスタイルや背景があることを「知る」こと。そして、もし身近に食事制限のある人がいたら、「どんなことに困っているのかな?」「自分にできる配慮はあるかな?」と少しだけ想像力を働かせてみること。その小さな関心が、理解への大きな一歩になります。

 

STEP2: 外食や買い物の選択肢をちょっと広げてみる

次にできるのは、普段の選択肢を少し広げてみること。レストランを選ぶときに、「ヴィーガンメニューもあるお店を選んでみようかな」と考えてみたり、スーパーで「プラントベースの新商品、試してみようかな」と手に取ってみたり。

先ほどのオーツミルクラテのように、日常の中で無理なく試せることから始めるのも、素敵なアクションです。

多様性が彩る、新しい食のスタンダードへ

フードダイバーシティは、単なる一過性のトレンドではありません。グローバル化が進み、個人の価値観が多様化する現代において、ますます重要になる考え方です。

食における多様性を受け入れ、尊重する社会は、きっともっと豊かで、優しくて、創造的な社会のはず。特別なことではなく、誰もが自分らしく食を楽しめる。テクノロジーと人の優しさが融合し、もっと自由で、もっとクリエイティブな食の世界が広がっていく。そんなワクワクする未来を、一緒に楽しんでいきませんか?

まとめ

フードダイバーシティを知ることは、単に知識を得るだけでなく、私たちの世界を見る解像度を上げることにつながるのかもしれません。

これまで当たり前だと思っていた「食」の背景には、想像以上に多様なストーリーや価値観が存在します。違いを理解し、尊重する心がけ一つで、コミュニケーションはもっと豊かになり、新しい出会いや発見が日常を彩り始めます。

難しく考える必要はありません。ほんの少し視野を広げ、好奇心を持って食の世界を探求してみませんか? きっとそこには、あなたの毎日をより豊かにするヒントが隠されているはずです。食卓から始まるポジティブな変化を、ぜひ楽しんでみてください。

Top image: © iStock.com / SrdjanPav



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🧠 編集部の感想:
フードダイバーシティは、私たちの食文化を豊かにし、他者の価値観を理解するきっかけになります。多様な食選択が広がることで、食事を共にする楽しさが増し、コミュニケーションも深まるでしょう。新しい味や背後にある文化を知ることが、私たち自身の成長にもつながると感じます。

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