「Nexon Developers Conference 25(NDC25)」の開催期間中,NEXON Korea本社の近くにあるMINTROCKETのオフィスを見学させてもらった。
MINTROCKETといえば,海洋アドベンチャーゲーム「デイヴ・ザ・ダイバー」(PC / PS5 / PS4 / Switch / iOS / Android)の開発元として知られる。元々はネクソンのサブブランドとして発足したチームだったが,デイヴ・ザ・ダイバーのリリース後,2024年9月に法人化を果たしている。
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デイヴ・ザ・ダイバーのディレクターであり,現在はMINTROCKETのCEOも兼任しているのがファン・ジェホ氏だ。今回は合同インタビューに応じていただき,MINTROCKETの設立や法人化の経緯,さらに「デイヴ・ザ・ダイバー」におけるさまざまなコラボの選定理由などを語ってもらった。
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「デイヴ・ザ・ダイバー」公式サイト
――本日はよろしくお願いします。ファンさんは法人化後のMINTROCKETのCEOを務めていますが,MINTROCKET設立時からずっと率いる立場だったんですか?
ファン・ジェホ氏(以下,ファン氏):
サブブランドの頃はディレクターでした。とはいえトップは副社長が兼任する形でしたので,とくに誰かから管理されることもなく,けっこう自由な立場でしたね。ただ,それはそれで微妙な部分もあったので,事業と開発を統合することになり,その頃に私がリーダーということになりました。
――MINTROCKET自体は,どういった経緯で作られたのでしょうか。
ファン氏:
皆さんご存じだと思いますが,最近のゲーム業界は成功が予想しづらくなってきています。開発費が高くなる一方で,大型ゲームの打率が下がっていたり,人数の多くないチームが大成功を収めたりというように。「Balatro」や「Clair Obscur: Expedition 33」などの成功を予想できた人は,恐らくいないのではないでしょうか。先を予想して戦略を立てるのが難しいんですよね。
そうなると,大きな会社はすでに人気のあるタイトルの後継作やリメイクなど,予想しやすいものを作らざるを得なくなるわけです。
――一度の失敗のリスクが大きすぎますからね。
ファン氏:
はい。ただ,ライブサービス型のゲームがメインのネクソンの場合,そうした動きも難しくて,けっこうな投資をして新規IPを作らざるをえません。それでも,成功が見込めるジャンルにしか手は出しづらい。
ネクソンって,大規模オンラインゲームで知られていますが,同時にクリエイティブなゲームも作ってきた会社なんです。もちろん成功したケースは多くないですが,その姿勢は貫いていきたい。とはいえ失敗をずっと重ねることはできないので,それならリスクを抑えて小規模なタイトルで挑戦していこうということになり,それで立ち上がったのが「ビッグ&リトル戦略」です。ここでいう“ビッグ”は成功率が高いゲーム,“リトル”は自由に作れるゲームですね。そのリトルを担当するブランドとして作られたのが,MINTROCKETだったわけです。
――最初から,リトルのほうの担当だったんですね。デイヴ・ザ・ダイバーが,最初はインディーゲームっぽい雰囲気だったのも,意図的なものですか?
ファン氏:
いえ,むしろ我々としてはインディーゲーム感を出すつもりはありませんでした。そもそも,ネクソンで作っていてインディーも何もないわけですし。
ただ小規模なチームでゲームを作るとなると,アートスタイルやゲームシステムがユニークになりがちなので,そういった点からインディーゲームと思われていたのかなと。インディーゲームのアワードにもなぜかノミネートされてしまって,「ネクソンのゲームなのに?」とツっこまれてましたが,我々が申し込んだわけではありませんので(笑)。
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――昨年,サブブランドから法人化したわけですが,これはどういった理由があったのでしょうか。
ファン氏:
ネクソンは大型のゲームを作り,ライブサービスを運営していくことに最適化された会社です。会社の仕組みがそれに合わせてできあがっているので,小さなゲームを作っても,同じプロセスが適用されて,どうしても動きづらくなってしまうんですね。
これを経営陣に相談したところ,「それは正しい悩みだと思います」と言われ,その解決手段として法人化の話が出てきました。
――しかし待望のヒット作を,ネクソンから切り離してしまって良かったんでしょうか。しかも主戦場のライブサービス型ではなく,買い切り型ゲームとして生まれた新規IPなのに。
ファン氏:
私も驚きました。どうにかして問題を解決しようと考えてくれたんですね。やっぱりネクソンは,何よりもクリエイティブを大事にする会社ということなのでしょう。とはいえ自分がCEOをやることになるとは思っていませんでしたけど(笑)。
――MINTROCKETの名前は,どこから来ているんでしょうか。
ファン氏:
決めたのは私ではなく当時の副社長なんですが,可愛いイメージのミントと,速いイメージのロケットの組み合わせです。私は反対したんですよ? なんかおじさんのセンスじゃないですかって(笑)。
でも使っていたら馴染んでしまって。法人化するときに変えることも検討したんですが,もうMINTROCKETで覚えられているし,今から変えるのも大変だったので,そのまま使うことにしました。
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――デイヴ・ザ・ダイバーはコラボに意欲的なタイトルですが,なぜこうした方針を取っているのでしょうか。
ファン氏:
コラボは元々やりたかったことなんです。私は中世やSFよりも,現実を基盤にしたゲームのほうが好きですし,そのほうがコラボもやりやすいじゃないですか。幸いデイヴ・ザ・ダイバーが成功したので,これは今しかないなと。
何とコラボしようか考えたとき,最初に考えたのは似た時期に人気が出た釣りゲームの「DREDGE」でした。コミュニティの皆さんが推してくれて,私もいいなと思ってDREGDEのコミュニティに「コラボさせてください」って直接言いにいったんですが,反応がなくて……。どうもスパムだと思われてたみたいです。本物のディレクターが,こんなこと言いにくるわけないって。
――スパム扱いですか(笑)。
ファン氏:
結局DMで,「本人です,本当にやりたいんです」ってお願いすることになりました(笑)。それで実際にやってみたら,デイヴ・ザ・ダイバーの世界観は緩さなら,なんでもコラボできるぞということになり。それで個人的に好きな「ゴジラ」とコラボすることにしたんです。
――ゴジラコラボは,ファンさんの趣味だったんですね。
ファン氏:
私は「ゴジラ ディフェンスフォース」(iOS / Android)のディレクターをやっていたことがあるので,つながりもあったんですよ。それで連絡を取ったら,OKをいただけて。
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――ゴジラコラボはインパクトがありましたね。
ファン氏:
本当は,一番好きなキングギドラを出したかったんですけど,首が3本あって作るのが大変と言われ……。次に好きなエビラを出すことにしました。深海に潜るエビラは,デイヴ・ザ・ダイバーにも合っていますし。
――Balatroとのコラボも意外でした。
ファン氏:
あれは海外のイベントでデイヴ・ザ・ダイバーのTシャツを着ていたら,パブリッシャの方から「コラボやらない?」って声をかけられたんです。私も,たまたま飛行機の中でBalatroを遊んでいたタイミングだったので,いいですよと。
――いろいろな流れでコラボが決まるものですね。「龍が如く」はいかがでしたか?
ファン氏:
龍が如くは私が本当に好きなので,東京ゲームショウの時期にセガさんに直談判しにいって,OKをもらいました。コラボは,好きなコンテンツとやるのが一番と思っているので,私が直接動くことも多いです。
――DLCとして準備中の「デイヴ・ザ・ダイバー IN THE JUNGLE」は,どういったものになるのでしょうか。
ファン氏:
名前のとおり,ジャングルの街が舞台になります。このDLCでは,海ではなく湖に潜ることになるので,淡水魚が出てきますね。また街を自由に歩き回るような,生活系の要素も用意しています。元々は2025年の配信を予定していたんですが,いろいろと入れたら規模が大きくなってしまって,少し遅れて2026年上半期のリリースになってしまいました。
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――デイヴ・ザ・ダイバーのこれからについて聞かせてください。
ファン氏:
デイヴ・ザ・ダイバーは,これほど成功すると思っていなかったタイトルでした。早期アクセスを始めた頃も,評価は高かったですが目標としていた数値には届いていませんでしたし,ウィッシュリストやYouTubeの閲覧数もあまり伸びませんでした。それが蓋を開けてみれば600万本近い売上になり,海外のアワードなども受賞して,一番やりたかったコラボまでできました。
個人的な欲望も満たされましたし,ゲームとしては,ここで終わりというのもアリだと思うんです。ただ,MINTROCKETが法人化し,この会社のメインIPということになりましたから,今後も広げていくべきだと考えています。
今やっているのは,プラットフォームの拡大です。Nintendo Switch 2には当然対応しますし,中国ではモバイル版が開発中です。DLCも「IN THE JUNGLE」で終わりではないですし,このIPを使った違うゲームを作ってみたいとも思っています。今後もさまざまな方向に発展させていくつもりなので,ご期待ください。
――ところで,デイヴ・ザ・ダイバー自体は,そもそもどういった経緯で生まれたゲームなんでしょうか。
ファン氏:
海のゲームを作りたいと思ったのは,以前,韓国のハワイと呼ばれる済州島に住んでいたときでした。海をダンジョンに見立てて,潜るゲームにしたいなと。ただダイバーさんって,皆さん筋肉質でかっこいいじゃないですか。
僕もリードアーティストも,ちょっと変なキャラクターを作るのが好きでして,いわゆる美形なキャラクターとはちょっと違う路線を行きたかったんですよね。美形キャラは,いくらでもいるわけですから。そこで,本作ではあまり見ない太ったダイバーを主人公にすることにしたんです。デイヴの名前は,デブだからという意味を込めていたりします(笑)。
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――法人化した以上,デイヴ・ザ・ダイバーだけを作り続けるわけにもいかないと思うのですが,新規タイトルは予定されていますか。
ファン氏:
はい。実際に何件かプロジェクトは動いています。外のIPを使ったゲームもありますし,完全新作もありますね。
――規模感としてはデイヴ・ザ・ダイバーのような“リトル”なものですか?
ファン氏:
そうなります。小さなゲームで成功したから,次は大きなものを,と思うかもしれませんが,我々が得意としているのは,意思疎通がしやすい規模の人数で作る,ユニークなゲームですから。
――新作も楽しみにしたいと思います。ありがとうございました。
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「デイヴ・ザ・ダイバー」公式サイト
🧠 編集部の感想:
MINTROCKETの法人化と新作準備は、大いに期待が持てます。特に「デイヴ・ザ・ダイバー」の成功を超えた新しい挑戦が実現することにワクワクします。クリエイティブなアプローチが今後の展開につながることを期待しています。
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