その5分間、映画「ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション」のベンジーになった気分だった。もっとも、ウィーン国立歌劇場でスマートグラスをかけてトム・クルーズの声を聞く代わりに、筆者は開発者会議「Google I/O」で約1.5m四方の木製の小屋に立ち、AI「Gemini」の声を聞いていた。
筆者が体験したのは、「Android XR」搭載スマートグラスの試作品だ。右のレンズには小さな白い文字で時刻と気温が表示されている。午後2時24分、華氏73度(摂氏23度)。
もしスマートグラスがこれだけの機能しか持たなくても自分は満足していたはずだ。だが、これはホーム画面にすぎなかった。
次にこの試作品で写真を撮り、そのプレビューを片方のレンズにフルカラーで表示した。写真と現実の風景を同時に見る体験は衝撃的だった。この未来的なフレームは、GoogleがサムスンおよびQualcommと共同開発しているAndroid XR搭載スマートグラスのごく初期の試作品だ。
見た目は一般的な度付きメガネとほとんど変わらない。実際、Googleは製品版フレームのデザインでWarby Parker(筆者がここ数年愛用しているブランド)や韓国のメガネブランドGentle Monster(ビヨンセやリアーナが使っていることで知られる)と協力すると発表した。
一般的なメガネと違い、このフレームにはテクノロジーが詰め込まれている。Geminiに話しかけるためのマイクと応答を聞くためのスピーカーがあり、テンプル上部には物理的なシャッターボタンも付いている。フレーム側面に触れて操作することもできる。さらに各種センサーが動きを入力として解釈し、例えば「Googleマップ」なら、自分がどちらを向いていても経路案内を表示できる。
これまで筆者は他のスマートグラスを軽視して避けてきた。労力や価格に見合わないと感じたからだ。だが、今回のモデルは転機になるかもしれない。GoogleはMetaの「Ray-Ban Metaスマートグラス」の代替品を求めるアーリーアダプター以外にも関心を広げようとしている。筆者は短時間の体験の中で、もっと広い層に訴求できる可能性を感じた。操作はAndroidスマートフォンの延長のように直感的だった。数年後には眼科で、ブルーライトカットと同じ調子でAndroid XRとGeminiのオプションを付けるかを尋ねられるかもしれない。
特に印象的だったのは、右のレンズにある小型ディスプレイだ。しかし、その仕組みを説明するのは困難なので助けを借りた。自分にはAR・VR機器に精通した米CNETの同僚であるScott Stein記者がいる。彼は2024年に同様のプロトタイプを試していたことが分かった。
Stein記者は、「このメガネには右レンズに1つのディスプレイがあり、アームに搭載されたMicro LEDチップを通して、レンズガラスの小さな四角いパッチ上のウェーブガイドに投影される」と説明した。
このディスプレイこそが魔法の源だ。Android XRのインターフェースやアニメーションを表示できるだけでなく、撮影した写真を含めカラーで表示できる。また、直接操作していないときはUIが消える点にも感心した。Android XRにはGoogleのGeminiが組み込まれているので、視界に入った物について質問できる。筆者は小人の家のようなデモ小屋で、壁に掛かった絵についてGeminiに質問した。回答はテンプルに内蔵されたスピーカーから自分だけに聞こえ、周囲には聞こえなかった。本当にスパイになった気分だった。

提供:Google
次にGoogleマップを試した。道案内がこんなに楽しいものだとは思わなかった。丸い地図に、ストリートの名称と進む方向を示す矢印が表示される。自分が動くと地図も回転し、ゲームのカメラをコントローラーで動かして視点を変えるような感覚だった。
これでデモは終了だ。スマートグラスへの懐疑心は完全に消えた。しかし疑問も残る。1回の充電でどのくらい持つのか。これは日常用のメガネとして使うべきなのか。充電中に視力を補うため、普通のメガネをもう1つ持つ必要があるのか。価格はいくらか。レンズの情報に気を取られて壁にぶつかる人が増えるのではないか。Googleはまだほとんど情報を明かしておらず、詳細はこれから数カ月から数年のうちに分かるだろう。
この記事は海外Ziff Davis発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
🧠 編集部の感想:
Googleの新しいAndroid XRスマートグラス体験は、テクノロジーの未来を感じさせました。特に、現実とデジタル情報が融合する感覚は驚くべきもので、自分の視界に新たな可能性を加えました。しかし、実用面での疑問も残り、日常で使うにはまだ解決すべき課題があるようです。
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