🧠 あらすじと概要:
映画「カラオケ行こ!」のあらすじ
舞台は大阪。ある事情から歌が上手くなりたいヤクザの男(綾野剛)は、中学生の合唱部員・さとみくんに歌の指導を頼むことになります。コメディー調の物語は、ヤクザと素直な中学生との心温まる交流を描きながら、彼らの周囲にいる人々との関係性や、それぞれの「愛」の形を探求します。
記事の要約
本記事では、映画のスタートシーンを絶賛し、主人公と中学生の関係に焦点を当てています。登場人物たちの大阪弁やユーモアに触れつつ、ヤクザが抱える底知れぬ闇と同時に彼の優しさも描かれています。合唱部の活動やコンクールにおける「愛」の不在というテーマが重要視され、特にさとみくんの心の葛藤や成長が強調されています。エンドロールの選曲や、ヤクザの見方についても示唆に富んだ考察が行われ、最終的には合唱部の仲間たちとの絆と、人間の持つ多様な愛の形が描かれています。
※以下ネタバレを含みます。
雨の中、傘もささずに歩く男。雨に打たれ、肌に張り付いたワイシャツからは背中一面に彫られた入れ墨が透けている。周囲の人はずぶ濡れの男のことなど気にも留めず、傘をさして歩いていく。男は天を仰ぎ、土砂降りの只中にいるにもかかわらず煙草を吸おうとして、ふと顔を上げる。歌声が聴こえる。
こんなクールな始まり方、あるでしょうか。
原作を知らないけど、原作でもこうなんですか?
いまだかつてこんなかっこいい始まり方の邦画を知りません。おしゃれなクライムサスペンスでも始まりそうです。
実際にはコメディーなのですが。
ある事情から歌が上手くなりたいヤクザが、合唱部の中学生に歌の指導を頼むというハートフルコメディーです。舞台は大阪。
大阪は吹奏楽が強いイメージがあるけど、合唱も強いのでしょうか。
登場人物みんなセリフがこてこての大阪弁で、そこだけちょっとフィクション感が強かったです。テレビやYoutubeを見ているいまどきの大阪の人はもうちょっとマイルドな喋り方をすると思うんです。知らんけど。
主人公のヤクザのお兄さんを演じるのは綾野剛(推定)です。
最近、綾野剛と、綾野剛にすごく似ている俳優さんがいるんですが、これはどっち?
綾野剛だとして。この人って、愛嬌があって人懐こくて、でも底知れない闇がありそうなお兄さん役が世界一似合いますね。
歌も上手です。最初に歌う「紅」は裏声がミスマッチではありますが、音程は合っています。
ヤクザが自分の組について説明するとき、あくまで一般の「ブラック企業」と建前で言っておきながら、ついつい「組長」とか「組員」とか言ってしまうの、愛くるしいですね。そしてそれをすべて分かって聞いている聡すぎる中学生のさとみくん。
途中までヤクザのカラオケ大会が何かの隠語かと思って観ていたのですが、本当にカラオケ大会の話でした。
いつ物騒なことになるのかとハラハラしていましたが、ヤクザは意外と優しくてお茶目です。さとみくんが苦し紛れで渡した合唱部のテキストを真面目に読み込んできたり、めちゃめちゃ素直でもあります。
あれ?ヤクザって実はいい人たちなのかな?
そう思った矢先にヤクザの車のダッシュボードを開けることになってしまい、やっぱり常識(ルール)が違う世界の住人なんだということを痛感させられます。
終始クールな表情を保っていたさとみくんもこれには耐えられませんでした。
さとみくんは表情や態度は大人っぽいですが、やっぱり中学生なので、ヒモという人種を知らなかったり、純粋です。
たぶん胸中は年相応に葛藤とかもやもやが渦巻いていると思います。心中を表に出す表情筋がまだ成長していないようにも見えます。くるくると表情が変わる綾野剛とは対照的に。
高得点を取ってドヤ顔の綾野剛かわいいので見てください。
さとみくんが所属する合唱部がコンクールで1位を取れなかった理由を、顧問の先生が「愛が足りなかったかな」と濁す場面があります。
つまり審査員にハマらなかったというようなことだと思うのですが、目に見えない、あるかもわからない、届くかどうかは受け取り方次第というものにぴったりだと思いました。
さとみくんは愛という言葉自体は知っていたでしょうが、ここで初めて「愛って何?」と悩むわけです。
そこで出されるアンサーが、母が無言で父の皿にパスする鮭の皮。ありがた迷惑にも見えるかもしれないけど、それは当事者しかわからない。 愛とは与えるものであると同時に、受け入れてもらって初めて意味を持つのです。
一見トンチキな「狂児」という名前ですら、それは親の愛なのかもしれません。狂という字は人名に使うことが可能なのでしょうか。
昔読んでいたラノベでは、バキバキの悪役が「愛とは与えることだよ」と言っていました。
星の王子さまは、本当に大切なものは目に見えないと言っていました。
そしてこの映画では、鮭の皮です。
上手に歌うことが重要なのであれば、音域的に歌いやすく、覚えやすい曲を選んでは?とさとみくんは初め提案するのですが、結局狂児が熱い思い入れを持つ曲「紅」を勝負曲に決めます。安定して点数が取ることより、どうしてもこの曲を組長に聴かせたいという狂児の執着が伝わったから。
というか、エンドロールで出てくる劇中のカラオケ曲のリスト、まんまちょっと昔の年間ランキングじゃないですか?
選曲が「みんな知っている楽しい曲!」という感じなので、これだとさとみくんが狂児の音域に合わせて選んだおすすめ曲は浮くだろうなと思います。
さとみくんは綺麗に上手に歌うことにこだわりがあります。だから声変わりで思うように歌うことができなくなったとき、投げやりになってしまうのだと思います。
部活を休みがちになり、来ても真面目に歌っていない(ようにしか見えない)さとみくんに後輩の熱血ボーイはブチ切れます。確かに練習来ていない奴が本番だけ来てソロなんか任されていたりしたら、真面目な人間ほど怒っちゃうだろうなと思います。
もう綺麗に歌えないから最後のステージは諦めると言うさとみくんに、狂児が言うセリフなのですが、
「綺麗なものしかあかんかったら、この街ごと全滅や」
他の人間が言うとただの綺麗事ですが、ときには警察や政治家とも持ちつ持たれつでうまいことやっているヤクザが言うと説得力がありますね。もしかしたら街の経済にけっこう食い込んでいるのではないでしょうか。
昔、わたしが引っ越し先を探していたときのことですが、候補の部屋の内見に行くとき、賃貸の仲介業者のお兄さんに「駅前にヤクザの事務所があるので、この辺は下手なチンピラとかいなくて良いですよ」と言われたことがあります。そんなアピールの仕方があるんだ!とカルチャーショックを受けました。ヤクザがいる街は下手に隠してもしょうがないんですね。うまいこと共生していくしたたかさが必要です。
物語の終盤、テクニックとか自分の音域とかかなぐり捨てて、とうとう本気で歌ったさとみくんの「紅」はソウルフルで良かったです。それを聴くヤクザたちにも愛が感じられて、とても良かった。
あれ?ヤクザって実はいい人たちなのかな?(n回目)
なんかいい話、きれいな思い出風に終わっているけど、間違いなく非行です。
親が知ったら悲しむでしょう。でもその親に言えない感じがかえって良いのかもしれません。
わたしは子供の頃、「青いアイスは着色料だからだめ」とずっと禁止されていて、高校生になって買い食いできるようになったら駅のセブンティーンアイスの自販機で青いアイスばっかり買っていたことを思い出しました。親に内緒で食べる青いアイスは最高に美味しかった。
さとみくんが将来ヤクザになっちゃったらどうしよう。ヤクザにはもう関わらないほうがいいよ。親に内緒にするのは青いアイス(※隠語ではない)がせいぜいだよ。
余談ですが、さとみくん役の子、写真撮るとき一瞬で顔作れて、しかもばっちり可愛くて、現代っ子だなと思いました。
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