昭和の大スターに憧れた少年時代の夢が、そのまま続いている。愛車は、1982年式の日産セドリック(430型)。故・石原裕次郎さんが出演した名作ドラマ『西部警察』の“劇中車そっくり”に作り変えてしまったのだ。手に入れて早26年。「ここまで来たら、もう手放せないですよ」。49歳の男性オーナーのアツ過ぎる思い入れに迫った。
愛車は世界200台限定のメルセデス…ベテラン女優のクラシックな愛車遍歴(JAF Mate Onlineへ)
きっかけは、石原裕次郎さんの13回忌だった。「小学校の頃に『西部警察』シリーズに夢中になっていて、13回忌に再放送があったんです。その時に久しぶりに見て、『セドリック乗りたいな』と思ったんです」。少年時代のワクワク感がよみがえった。1999年、当時23歳ながら、直感で買うことを決めた。
鉄道関係の仕事に就いており、鉄道模型や自動車模型も大好きだが、根っからの旧車乗りだ。高校卒業後に働き始めてすぐに、72年式の510ブルーバードをマイカーにしていた。「もともと父親が乗っていたこともあり、ブルーバードを選んだんです。セドリックは本当は(70年代年式の)230に乗りたかったのですが、親も旧車の苦労を知っているので、さすがに説得できないなと思って、この430に決めたんです」。
憧れの裕次郎さんがドラマで乗っていたのと同じモデルだ。「劇中では覆面パトカーになったりしていました。この430は、爆破されていないんですよ(笑)」。“破壊されなかった”セドリックだったという。
そこから時間と手間をかけて、劇中車にカスタムを施していった。「もともとはシルバー色だったのですが、黒にオールペン(全塗装)しました。それに、このクルマはSGLグレードなのですが、1つ下のGLグレードになるように、メッキモールを外すなど板金加工をやりました」。なんと、グレードを落とす離れわざをやってのけた。内装も徹底し、部品取り車を購入して“移植”させるなど、こだわり抜いて、西部警察仕様に作り変えたのだ。
購入価格は当時中古で35万円。「オールペンは80万円ぐらいだった。これまで計算すると……国産車1台分くらいかな? だいぶかかっちゃってますね(笑)」。クルマ愛のなせるわざだ。
愛車に乗ると、子どもの頃に熱中した“あの感覚”にいつでも浸ることができる。「最近のクルマはがっちりした感じですが、昔の日本の高級車はふわふわした感覚なんですよ」。独特な乗り心地もお気に入りだ。
クラシックカーを持つ喜びと充実感は、人生の醍醐味(だいごみ)だ。その一方で、維持する大変さも身に染みている。「部品がなくなっていっています。壊れた時に気付くことが多いです。『この部品はもうないんだ』って」。流用品を試したり、別の部品でまかなったり、苦労を重ねて、走れる状態をキープしている。
このセドリックと共に、人生を駆け抜けてきた。高校生と小学生の2人の娘も気に入ってくれているといい、「まあ、嫌いじゃないと思いますよ(笑)。今でも『西部警察』を一緒に見ることがあるのですが、『あっ、ウチの車だ』と言ってくれます」。それに、テレビで何かの機会に裕次郎さんのことが放送された際には、「娘が『出てたよ』と教えてくれるんですよ」。お父さんの情熱は、娘たちにも着実に伝わっている。
全国の『西部警察』ファンからも注目される1台だ。苦労も愛情もいろいろなものを注いできた人生の愛車。「自分よりこのクルマのことを知っていらっしゃる人もいます。そのことも実感しています。ここまでかけてしまうと、逆に手放せなくなりますよね」。これからも、夢が詰まったセドリックのハンドルを握り続けていく。
編集部の感想:
愛車への情熱が伝わってきて、心温まるストーリーですね。昭和の大スターに憧れた少年の夢が、26年後に現実となっているのが素敵です。家族と共にその思い出を共有できることも、特別な絆を感じさせます。
Views: 0