これまでの研究では睡眠と食事が密接に関連していることがわかっており、睡眠時間が長くなると摂取カロリーが減って体重が落ちるという研究結果や、食生活の改善によって健康的な睡眠をサポートできるという研究結果などが報告されています。新たに筑波大学の研究チームが、食事や睡眠に関するスマートフォンアプリの分析結果から、「タンパク質や食物繊維の摂取量が多い食事は、より長く質のいい睡眠をもたらす」ということを発見しました。
Journal of Medical Internet Research – Relationship Among Macronutrients, Dietary Components, and Objective Sleep Variables Measured by Smartphone Apps: Real-World Cross-Sectional Study
https://www.jmir.org/2025/1/e64749
アプリデータで睡眠と栄養の関連を大規模調査 | 医療・健康 – TSUKUBA JOURNAL
https://www.tsukuba.ac.jp/journal/medicine-health/20250203140000.html
アプリデータで睡眠と栄養の関連を⼤規模調査.pdf
(PDFファイル)https://www.tsukuba.ac.jp/journal/pdf/p20250203140000.pdf
High-Protein And Fiber Diet Linked to Longer, Better Sleep, Study Finds : ScienceAlert
https://www.sciencealert.com/high-protein-and-fiber-diet-linked-to-longer-better-sleep-study-finds
研究チームは人々の食生活と睡眠の関連について調べるため、食事管理アプリの「あすけん」と睡眠ゲームアプリ「ポケモンスリープ」を同時に使っている被験者4825人から収集したデータを分析しました。被験者の平均年齢は36.7歳で、全体のうち81.6%を女性が占めていたとのこと。
研究に用いられたデータには、「あすけん」で記録された毎日の食事から数値化された14項目の栄養素や、「ポケモンスリープ」で記録された総睡眠時間、消灯や床に就いてから就寝までの時間(睡眠潜時)、中途覚醒時間といったものが含まれていました。
これらのデータを用いて各栄養素の摂取量と睡眠との関連を調査したところ、総摂取カロリーが多い人ほど総睡眠時間が短く、中途覚醒時間が長いということが明らかになりました。また、タンパク質の摂取量が少ない人よりも多い人の方が総睡眠時間が長いことや、食物繊維を多く摂取している人は総睡眠時間が長く、睡眠潜時と中途覚醒時間が短いことなども確認されています。
以下の表は、主要な栄養素と睡眠変数の相互依存関係を示したもの。タンパク質の総摂取量が6%増えると睡眠時間が16.2分長くなり、逆に6%減ると睡眠時間が36.6分短くなることや、一価不飽和脂肪酸と多価不飽和脂肪酸の摂取量が多い人は睡眠時間が短いこと、多価不飽和脂肪酸の摂取が多い人は睡眠潜時と中途覚醒時間が短くなること、一価不飽和脂肪酸の摂取量が多いと睡眠潜時と中途覚醒時間が長くなることなどがわかります。
また、以下のグラフは「総カロリー摂取量」「脂肪摂取量」「食物繊維摂取量」「摂取Na+/Ka+比(摂取したナトリウム対カリウム比)」が少ない順に、被験者を1st・2nd・3rd・4thに分類した上で、1stグループを基準にして「総睡眠時間」「睡眠時間(睡眠潜時の誤記と思われます)」「中途覚醒時間」との関連を示したもの。総摂取カロリーが多いほど総睡眠時間が短くなり、食物繊維摂取量が多いほど総睡眠時間が長くなることや、食物繊維の摂取量が多いほど睡眠潜時が短いことなどが読み取れます。
食生活と睡眠の関連性には、複数の要因が関係している可能性が高いと研究チームは考えています。たとえば以前の研究では、タンパク質を多く食べると脳内でメラトニンやセロトニンの産生が促され、これらのホルモンが睡眠の調節に役立つ可能性が示唆されています。
これらのホルモンの産生は、食物繊維の摂取が腸内細菌に影響を及ぼすことでも促進されると考えられます。研究チームは、「最近の研究では、腸内細菌叢(そう)の変化が睡眠と栄養素の吸収に影響を与える可能性があることが示唆されています」と述べました。
一方で、今回の研究では自己申告データのみを使用しており、直接的な因果関係は示されていないという点に注意が必要です。また、「あすけん」や「ポケモンスリープ」といったアプリを使用している人々は、一般的に健康に関心がある可能性が高いという点も、結果に影響を及ぼしている可能性があるとのこと。
研究チームは、「本研究により、タンパク質、多価不飽和脂肪酸、食物繊維が豊富な食事習慣により、睡眠が改善する可能性が示唆されました。今後は、実際の食事介入などによる効果検証を行い、より詳細な因果関係等を究明する予定です」と述べました。
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🧠 編集部の感想:
この研究結果は、食事が良質な睡眠に与える影響を示していて、特にタンパク質と食物繊維の重要性が強調されているのが興味深いです。アプリを通じたデータ分析は現代のライフスタイルに即したアプローチで、実用的な使用法も期待できます。ただし、因果関係を確認するためのさらなる研究が重要ですね。
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