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概要
この記事ではDraftKingsの財務分析を行い、特に2025年から2028年にかけての収益予測やリスク要因について詳述しています。収益は順調に成長しているものの、スポーツの勝敗に依存する運の要素も強調されています。また、キャッシュフローや様々な費用項目の動きについても述べられ、企業の健全性が示されています。
要約 (箇条書き)
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2025年のガイダンス
- 売上予想:62億~64億ドル(前年比32%増の中央値63億ドル)
- Adjusted EBITDA予想:8億~9億ドル(前年比370%増の中央値8.5億ドル)
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投資家向けイベント(2023年11月)
- 2026年のAdjusted EBITDA予想:14億ドル、2028年:21億ドル
- 追加州での合法化は考慮されていない
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新たなビジネス展開
- 2024年7月にワシントンD.C.でオンラインスポーツベッティング開始予定
- 2024年5月にJackpocketを買収
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運に依存する業績
- スポーツの勝敗によりEBITDAが大きく変動する可能性がある
- 2024年には試合の結果次第で業績が大きく変動した
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キャッシュフローの健全性
- 2025年のフリーキャッシュフロー予想:約7.5億ドル
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費用項目の低減
- 広告宣伝費や減価償却費が売上に対する比率が低下している
- 株式報酬費も減少傾向にあり、株数の増加ペースが鈍化する見込み
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企業の健全性
- 2024年末の自己資本比率23.6%は成長企業として健全な水準
- 結論
- DraftKingsの 業績拡大基調に変化はないが、運に依存するリスクを考慮すべき。
2025年ガイダンス
・売上:62億ドル~64億ドル ※中央値:63億ドル(前年比32%増)
・Adjusted EBITDA:8億ドル~9億ドル ※中央値:8.5億ドル(前年比「370%」増)
※2025年第1四半期の業績発表にて下方修正をした数値を記載
※2025年は2025年第1四半期決算発表時の会社ガイダンス中央値
INVESTOR DAY(2023年11月)において、追加で合法化される州の予測は含まないという前提条件の下、「Adjusted EBITDA:2026年14億ドル、2028年21億ドル」が示されている。
但し、INVESTOR DAY以降、オンラインスポーツベッティング(OSB)を2024年7月にワシントンD.C.で開始、2025年中にミズーリ州で開始予定、加えて2024年5月には宝くじアプリのJackpocketも買収したため、これら数字は上振れしていく可能性が十分ある。
※DraftKingsは、Jackpocketの買収効果として、Adjusted EBITDAが、2026年6,000万ドルから1億ドル、2028年1億ドルから1億5,000万ドル増加するとしており、これもINVESTOR DAY(2023年11月)で公表したAdjusted EBITDAに上乗せが可能だ。
※2025年は会社ガイダンス中央値、2026年・2028年はINVESTOR DAYで示された数値
<運に左右される業績>
ただし、DraftKingsの業績はスポーツの勝敗という「運」によって左右される点は注意だ。2024年の場合、試合で顧客に有利な結果がなければ、EBITDAは1.81億ドル→5.14億ドルであったことが確認できる(差額3.33億ドル、割合65%)。
※FY2024Q4 EARNINGS PRESENTATION P6より抜粋
これを端的に表すのが以下のグラフだ。
※FY2024Q4 EARNINGS PRESENTATION P12より抜粋
この表は、2024年のNFLレギュラーシーズン(全18週)のうち、10週にわたってFavorites(勝つ確率が高いと見られた側)の勝率が75%以上だったことを示している。(一般的に、多くがFavoritesに賭ける傾向があるため、Favoritesが勝利すると、払い戻しが増え、DraftKingsなどのブックメーカーの利益が圧迫される。)
また2025年第1四半期決算も、NCAA男子バスケットボールトーナメントで波乱もなく順当に進み、顧客に有利(=DraftKings側に不利)な結果となり、2025年の通期ガイダンスが下方修正された。これがなければ「業績の上方修正がされていた」とDraftKingsの経営陣が2025年第1四半期決算発表説明会の冒頭で言うくらい業績は好調であった。
※FY2025Q1 EARNINGS PRESENTATION P6より抜粋
※NCAA男子バスケットボールトーナメント(通称:March Madness):全米全土の大学チームが参加する大会で、毎年春に開催される甲子園のような一発勝負の全国大会。プロ入り前の有望選手が多く出場し、非常に盛り上がるイベント
よって、同様のことが今後も起きれば、今後も「運」によって業績が大きく変動する可能性がある。このようなスポーツの勝敗による業績への影響は同業他社にもみられ、止むを得ない側面があるものの、DraftKingsへの投資を考える場合は、頭の片隅に入れておいた方が良い。
とはいえ、逆に言えばこれらの影響がなければ2024年および2025年第1四半期の業績はもっと良かったこと、またこれがあるからと言って「DraftKingsの業績拡大基調は変わらない」ことも事実であり、一時的な業績のブレに過度に反応する必要はないだろう。
<キャッシュフロー>
安定したフリーキャッシュフローを生む状況にはなっていないが、おおむね問題ない水準を維持している。
DraftKingsは2025年のフリーキャッシュフロー(Non-GAAP)を約7.5億ドル(税引き前)見込んでいることからも、今後はフリーキャッシュフローが一気に伸びていく可能性もある。
<低減する各費用項目>
・広告宣伝費
売上に対しての低下が顕著だ。これは、知名度の向上、口込み効果などによるユーザーの自然流入、リピーターの増加、クロスセルなどが拡大している結果だ。
補足:費用項目「Sales and Marketing」を広告宣伝費としている。「Sales and Marketing」にはマーケティング部門の人件費やブランド開発費なども含まれる場合があるため、厳密にSales and Marketing=広告宣伝費とは言えないが、傾向を見ることは可能。
・減価償却費
こちらも売上に対しての低下が顕著で、規模の経済が働いていることがわかる。
・株式報酬費
一般的に、企業の成長段階では人材獲得のため株式報酬費が高くなり、成熟とともに株式報酬費の売上比率が下がるが、DraftKingsもその傾向に沿って動いていることがわかる。
株式報酬費比率の低下に伴い、株式数が急増する段階は一段落し、今後は株式数の増加ペースが鈍化する可能性が高い。
新規株式発行が減ると株数の希薄化リスクが抑えられ、EPSや1株あたりのフリーキャッシュフローにはプラス要素だ。
なお、2024年末時点の自己資本比率は23.6%であり、黒字化途上の成長企業としては健全性を保っている水準といえる。
(次回はコラム「日本の競馬とスポーツベッティングの「本質的な違い」」を予定。)
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