火曜日, 5月 13, 2025
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鉛から金への錬金術に成功するも、富までは程遠い – PC Watch


 欧州原子核研究機構(CERN)は8日(仏時間)、大型ハドロン衝突型加速器(LHC)における大型イオン衝突型加速器実験(ALICE)の検出器において、鉛原子核の“ニアミス衝突”により、鉛を金に変換できたことを検出したと発表した。この論文はPhysical Review Journalsに掲出された。

 卑金属である鉛は82個の陽子があり、貴金属である金には79個の陽子がある。鉛の中の陽子を3つ減らすことができれば、金になるというわけだ。以前、自然な放射線崩壊や中性子/陽子の照射により重元素をほかの元素に変化させる方法で、人工的に金を生成した例があるが、今回研究チームではLHCにおける鉛原子核のニアミス衝突という新しいメカニズムを用いて鉛から金への変化を測定した。

 LHCにおける鉛原子核同士の高エネルギー衝突は、クォーク・グルーオン・プラズマと呼ばれる高温高密度の物質状態を作り出し、宇宙におけるビックバン直後の一瞬の状態であったと考えられている。しかし原子核同士が接触することなく、かろうじてすれ違うニアミス状態では、原子核を取り囲む強力な電磁波場が、光子間および光子/原子核間の相互作用を誘発させる。

 鉛の原子核は、1個につき素電荷が1個付帯されているため、強力な電磁場を放出している。この鉛の原子核をLHC内で光速の99.999993%に相当する速度まで加速させると、電磁力線は運動方向と直交するパンケーキ状に押しつぶされ、短寿命の光子パルスが発生。その際に原子核と相互作用する光子が、内部構造の振動を励起し、少数の中性子と陽子を放出する「電磁解離」を引き起こす。

 ALICEのチームは、検出器のゼロ度カロリメータを用いて、鉛、タリウム、水銀、金の生成に関連する、少なくとも1つの中性子を伴う0~3個の陽子の放出をもたらした光子と原子核の相互作用の数を計測した。その結果、衝突点で最大で毎秒約89,000個の原子核を生成していることが分かった。

 ただ、金の原子核は非常に高いエネルギーで衝突から放出されたため、下流のさまざまなポイントでビームパイプまたはコリメータに衝突し、すぐに単一の陽子や中性子、そのほかの粒子に分裂したため、存在したのはほんの一瞬だったという。

 分析によれば、LHCのRun 2(2015~2018年)では4つの主要実験で約860億個の金の原子核が生成されたが、質量に換算するとわずか29pg(ピコグラム)だった。装置の定期的なアップグレードにより、Run 3ではRun 2のほぼ2倍の量の金が生成されたが、それでも宝飾品1子を作るのに必要な量の何兆分の1にも満たないとしている。

 鉛を金に変える「錬金術」は、中世の錬金術師の長年の追求だった。異なる化学元素であるため、化学的な手法では変換できないことが後に明らかになったが、20世紀の原子核物理学の進化によって可能性を見いだした。今回、錬金術師たちの夢は技術的に実現したものの、「富への希望は再び打ち砕かれた」とリリース内で記載されている。

 その一方で、今回の結果は電磁解離の理論モデルをテスト、改善するもので、本質的な物理的関心を超え、LHCや将来の加速器の性能に対する大きな制限であるビーム損失を理解し、予測するために活用されるとしている。



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