金曜日, 5月 16, 2025
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巨大なPC画面をスマートグラスで持ち歩く–「Spacetop」は理想の作業空間を実現するか


 筆者の理想の環境はこうだ――。ノートPC、あるいは手元のタブレットやスマートフォンをスマートグラスに接続すると、目の前に大きな仮想ディスプレイが広がる。必要な情報を一望できる、自分だけの無限のモニター空間。重いデバイスを持ち歩かなくても、自分だけの空間をいつでも確保できる、いわば「目のためのヘッドホン」だ。

 XREALなどから登場しているスマートグラスは、さまざまなデバイスと接続することでテレビのように大きな仮想ディスプレイを表示できるが、複数のアプリを同時に起動し、タスクを並行処理することはできない。最近テストした「Spacetop」のソフトウェアに興味をそそられたのは、これが理由だ。今後、スマートグラスなどと連携できるソフトウェアが多くの企業から登場すれば、この分野はまちがいなく広がっていくだろう。

Spacetopとは?

 Spacetopの開発元であるSightfulは、筆者が2023年に取材したスタートアップ企業だ。同社は当時、ディスプレイのないノートPCのキーボード部分をXREALのスマートグラスと有線接続し、ノートPCのモニターとして使うという構想に取り組んでいたが、製品化には至らなかった。同社はQualcomm製プロセッサーを搭載したChromebook風カスタムノートPCの開発計画を中止し、Intel製プロセッサーとAI処理ユニット(NPU)を搭載した最新の薄型AIノートPCを活用する方向へと舵を切った。その方がパフォーマンスが高く、スマートグラスと接続するための専用デバイスを独自に開発する必要もないとSightfulのチームは言う。

 「AIコンピューターに関する(Microsoftの)発表を見た瞬間、つまり、今後数年のうちに、誰もが所有するコンピューターがAIコンピューターになるという発表を見た瞬間、自分たちで統合ソリューションを構築するよりも早く、オーディエンスに力を与えられると確信した」と、Sightfulの創業者Tamir Berliner氏とTomer Kahan氏は筆者に語った。2024年秋、Sightfulが事業計画を大きく転換した時のことだ。現在のSpacetopは斬新なARノートPCではなく、特定のWindowsノートPCとスマートグラス「XREAL Air 2 Ultra」の特定のモデルをつなぐサブスクリプション型ソフトウェアだ。

Spacetopがもたらす180度のデスクトップ体験

 Spacetopを実行すると、スマートグラスの向こうに湾曲したディスプレイが表示され、点線で囲まれた領域内にWindowsアプリを自由に配置できる。ドラッグして移動させたり、サイズ変更したりすることも可能だ。まるでノートPCのデスクトップのようだが、画面サイズはずっと大きい。使用にあたって、ノートPCのディスプレイは必要ない。スマートグラスをかける手間はあるが、筆者が求める作業環境に近い。どこでも自分だけのディスプレイを表示でき、かさばるデバイスを持ち歩かなくても、広々としたオフィス空間がいつでも手に入るような気分だ。

 Spacetopは、コンピューターとつなぐことでスマートグラスの可能性を広げようとしている。ほとんどのスマートフォンやノートPC、タブレットは、まだスマートグラスを十分に活用できていない。

 XREALの最新のスマートグラス「XREAL One」は、湾曲したディスプレイを空間に固定できるが、SpacetopはノートPCとの連携を強化することで機能を拡大した。Qualcommも、この種のソフトウェアの開発に乗り出しており、Android端末で動き、スマートグラスと連動するソフトウェア「Snapdragon Spaces」を開発している。Googleが開発する新たなXRデバイス用プラットフォーム「Android XR」にも、同じような機能が搭載される見込みだ。Appleの「Vision Pro」も多くのiPadアプリを実行できる。「Mac」の画面をミラーリングして、アプリを好きな場所に配置することも可能だ。しかし、Vision Proはスマートグラスよりも物理的に大きく、どうしてもかさばる。しかも、Spacetopのようにアプリを空間に自由に配置するためには「MacBook」も併用しなければならない。

 現時点では複数の2Dアプリを開くくらいのことしかできないが、日常的な作業には十分だ。Spacetopの想定ユーザーとしては、出先でもノートPCより広い画面で仕事がしたいビジネスパーソンなどが考えられるが、利用にはサブスクリプションへの加入が必要だ。会議中など、現実世界に目を配りつつ、自分の周囲に仮想のウィンドウを並べたい時などは便利だろう。奇妙に思うかもしれないが、十分に現実的だ。実際、筆者は1月、XREAL Oneをかけた状態でプレゼンを聞き、気になったポイントをスマートフォンでメモしながら、メモを発表者の横に浮かべることができた。

便利な機能といくつか気になる点

 Spacetopには便利な機能がいくつかある。まずはアプリランチャーとして機能する小さなツールバーだ。宙に浮かんだデスクトップの下部分には、ノートPCの画面が複製される。ウィンドウの配置は、実際のディスプレイとほぼ同じだ。宙に浮かんだウィンドウを眺めた後、ノートPCの画面に目を落とし、設定を調整するといった作業も自然にできる。マウスカーソルも、筆者の動きに合わせてフローティングディスプレイとノートPCの画面の間をなめらかに移動する。

 しかし、まったくトラブルがないわけではない。ウィンドウの表示に時間がかかることもあるし、そもそもウィンドウが開かないこともある。そのような場合は一度スマートグラスとの接続を解除し、再接続するようSightfulは案内している。

 スマートグラスの視野は限られていることも忘れてはならない。XREALのスマートグラスは高品質のOLEDディスプレイを空中に投影できるが、一度に見える範囲は視界の中央に浮かぶ、箱のような長方形の中だけだ。大きさは中型から大型のモニター1台程度だろうか。2、3個のウィンドウ(または1つの大きなウィンドウ)なら同時に視界に収められるが、それ以上のアプリを配置した場合は頭を動かして、湾曲したデスクトップの他の部分に顔を向けなければならない。XREAL Air 2 Ultraは、サングラスのように周囲の明るさを抑えたり、必要に応じて透過度を調整したりすることもできる。専用のスピーカーも搭載する。

スマートグラスの未来(サブスク無しだとありがたい)

 米国で販売中のSpacetopを使うためには、XREAL Air 2 Ultraの対応モデル(699ドル、約10万2000円)とは別に、年間200ドル(約2万9000円)のサブスクリプションに加入する必要がある。XREAL Air 2 Ultraと1年間のサブスクリプションのセットも899ドル(約13万1000円)で販売されている。XREAL Air 2 Ultraの特別モデルが必要になるのは、部屋全体をトラッキングする機能が必須だからだ。トラベルモードにすると、ノートPCの場所を問わず、フローティングディスプレイを常に視界の中央に表示できる。また、現時点ではIntelのNPUを搭載した特定のWindows AIノートPCでしか動作しない。今回のテストでは「HP Elitebook」を使った。

 Spacetopは、現時点ではまだ一般向けとは言い難い製品だが、筆者の夢、すなわちノートPCやタブレット、スマートフォンをスマートグラスで手軽に操作できる未来が近づいていることを示している。この未来は必ず実現するはずだ。Microsoft、Google、Appleにこの分野に本腰を入れてもらう必要はあるが、それまではSightfulのSpacetopが新たな可能性を切り拓くことになるだろう。

この記事は海外Ziff Davis発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。

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🧠 編集部の感想:
「Spacetop」のコンセプトは、未来の作業環境を示唆する興味深い取り組みです。スマートグラスを使用することで、物理的なデバイスの制約から解放され、より自由な作業が可能になります。ただ、実現するためにはさらに多くの機能や安定性が求められそうです。

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