金曜日, 5月 9, 2025
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小島秀夫監督インタビュー!孤立が深まる状況下で“つながりを問い直す”続編『DEATH STRANDING 2』はどのように構築されていったのか


ビデオゲームは、アクションや緊張感といった感覚的な体験を楽しむだけのものではなくなって久しい。小島秀夫監督の『DEATH STRANDING』は、パンデミック以前の世界において「分断」と「接続」という二項対立を主題に据え、その思想性豊かな物語構造と、“配達”を軸とした移動メカニクスの刷新によって、ゲームという形式の可能性を大きく切り拓いた。

Photo by Hiromichi Uchida (The Voice)

そして今、続編『DEATH STRANDING 2: ON THE BEACH』では、かつてと同じ問いが、より複雑な形で立ち現れようとしている──「私たちは本当につながるべきだったのか?」。2025年6月26日のリリースを目前に控え、世界の分断がいっそう深まる現在、小島監督はどのような視点から再びこの物語を描こうとしているのか。

本作の開発は、コロナ禍という未曾有の状況下で進められた。テクノロジー、制作環境、そして人と人との関係性が再定義を迫られるなかで、小島監督はいかにして「つながり」の意味を見直し、再構築したのか。前作の理念を継承しつつも、その根幹を問い直す作業は、どうやら数年前から秘密裏かつ静かに、しかし着実に行われていたようだ。

小島秀夫監督に取材した本インタビューでは、制作の背景にある思想、前作からの断絶と継承、そして現代社会とゲームとの関係性について、監督自身の言葉で語ってもらった。その発言の数々からは、単なる制作過程の説明にとどまらず、ゲームがいかに現代社会と接続しうるかという視点が読み取れるものとなっている。

新たな舞台と新要素について

――『DEATH STRANDING』の続編を制作するにあたり、目指した点はどこにあるのでしょうか。

ちょっと皆さん思い出してほしいんですけど、『メタルギアソリッド』の冒頭の地点では武器が登場せず、エレベーターであがると武器がやっと手に入ります。最初の場所に武器を置いてしまうと、プレイヤーが武器を手に取って敵を倒してしまうので、意図的に武器を置かなかった。ただそこは不評で全然エレベーターにあがれないと言われたりもしましたが、ステルスを学習してもらうために、『メタルギアソリッド』にはそういう仕掛けがいっぱいありました。そして『メタルギアソリッド2』では、ステルスを理解した人がプレイするので、もうちょっと武器が簡単に使えたり、あるいは主観で部位を狙えたりして、より高度に遊べるようにしています。

『DEATH STRANDING』も同じで、「配達ゲーム」というジャンルはなかなかほかにない。今回は、配達ゲームにある程度、慣れた人がいて、そのうえで戦いたい人も自由に遊べるようになっています。武器も使えるし、車やバイクも乗りやすくしています。ストーリーは、前回はサムとクリフの物語でしたが、今回は「ルーは一体何だったのか?」というのが物語のひとつのテーマです。

――『DEATH STRANDING』では喪失や悲しみといった感情的な深いテーマが描かれていますが、監督の個人的な経験に基づくのでしょうか?

僕のなかから出てくるものは半分はリアルな体験、半分はフィクションの体験。死んでしまった人はどこへ行くのか。すごくプライベートなところからきています。

――新たな舞台として、メキシコとオーストラリアを選んだ理由は何だったのでしょうか。

これはあまり語りすぎると……(笑)。まずメキシコは地続きなので、UCA(アメリカ都市連合)の隣の都市につなぐ必要があると。サムが何度も言っていますが、それは侵略になる可能性がある。前作でアメリカ大陸を東から西に繋いでいきました。これは開拓時代をトレースしているんですけど、続編を作るには同じところでやるのかというのが問題になります。最初に考えたのは、繋いだのは大間違いで、繋いだのを外していくストーリー。しかし、それだと背景が使いまわしになってしまう。

考え方としては、アメリカ大陸と同じように東西に大陸が広がっていて、北と南は海に面しているような構造が必要です。サイズ的にはユーラシア大陸は広すぎるし、アフリカ大陸でもない。そういうところを念頭に置いて、オーストラリアにしています。それを繋げるのに苦肉の策で「プレート・ゲート」という設定を作りました。

ただ、この考え方だと続編をずっと作れる。作る予定はありませんけど(笑)

――なぜ「昼夜」という時間概念が導入されたのでしょうか?

最初は夜のシーンが真っ暗過ぎて、だいぶライティングを変えました。もっというとカットシーンのライティングが時間によって変わるんですよ。それに対応して作らないといけないので、大変でした。僕は映画のように、「ここは逆光でいきたい」とかがあるんですが、とはいえ、これはムービーじゃないので、プレイヤーによって見え方が変わる。僕としてはカットシーンを夜にやってほしいですが(笑)、皆さんに自由にやってもらって構わないです。

ベッドに行って一回寝て、朝になってから出発するとか。そういうサイクルを組み込んでいます。夜に移動するのが嫌な人もいると思うので、こういうのは意図的に入れています。「メタルギア・ソリッドV」ではタバコで時間を進める仕組みがありましたけど、今回はプライベートルームで二度寝するなど、自然な流れにしています。

――『DEATH STRANDING 2』ではバトルがより戦略的になっていると感じました。この変化はゲームデザインやストーリーテリングにどのような影響を与えたのでしょうか。

僕は戦闘を推奨しているわけではないです。基本的には荷物運びで、戦闘も柔軟にできるようになった。敵に遭遇しないように遠回りする、車やバイクを活用したり、プレイヤーが選べるようになっている。そうなると武器とかも新しくしないといけない。一緒に「メタルギア」シリーズを作っていたスタッフも関わっているので、「これはメタルギアっぽくないか?」と心配されたこともあります。でも、僕のなかでは「戦闘の快適さを追求しただけだ」と説明しています。これは、先ほども話した「つなぐべきではなかった」というテーマと表裏一体なんです。

戦争の話にもつながるんですが、今の世の中はオンラインという「なわ」でつながっている。今でもロシアで紛争がある。結局、綺麗ごとだけではつながることはできない。「なわ」だけではダメで、そういうことをヒッグスが言ってくると思います。つなぐために「棒」もいるかもしれない。どんどんそういうストーリーに展開していきます。必ずしもステルスしなくてもいいです。僕もステルスはしません。

ソーシャル・ストランド・システムと実際のSNSとの交錯

――前作のソーシャル・ストランド・システムにおいて、プレイヤーの行動で驚いたことはありましたか? それらは『DEATH STRANDING 2』の制作に影響を与えましたか。

ソーシャル・ストランド・システムは、本当にユーザーが使ってくれるかどうかは未知数でした。実際、僕のゲームスタイルでも、自分では梯子や国道は作らず、人が作ったものを利用しています。だから「国道を自分で作る人がいるのかな」と疑問に思って発売したところ、けっこうな数の人が国道ばかり作っていて、それは想定してなかった喜びでした。そういう人たちのためにも、続編を作るうえではいろいろ考慮しなければならない。今回のモノレールもそのひとつです。

前作で最初にチームで議論になったのが「いいね」です。お金じゃないし、強くもならない。そこはスタッフから反対も受けてたんですけど、やっぱり日常の「いいね」みたいに、なんの価値もないけど「いいね」をもらっている気持ちよさを重視しました。ゲームデザインとしては変なんですよ。ただ最初に反対していたスタッフも、最終的には喜んでいました。

こういうシステムは、発売してみて初めて皆さんの反応で分かるんです。「ディレクターズ・カット」では皆さんのプレイデータを見たり、そこから反省点を踏まえて作り直すという流れを取りました。今回の続編では、ユーザーの皆さんの挙動がわかったうえで開発しています。ただ僕としては、荷物をもっと降ろして戦ってほしいという思いもありました。テストプレイでも実際にはかなりの人は荷物がなくなると思う傾向があって、それは現実の生活での価値観が反映されてるのかもしれません。そこにはあまり手を加えませんでした。

――監督は普段、SNSで人々のつながりを積極的に持たれていますが、『DEATH STRANDING』の「人々がつながること」から、『DEATH STRANDING 2』では「本当につながるべきだったのか」というテーマへの変化が感じられました。

『DEATH STRANDING』はコロナ禍よりも前に開発していました。当時はイギリスがEUから離脱したりとか、分断の動きがあって、ストーリーもゲーム性もその考えのもとに作っていたんですが、作ったあとにコロナが始まって、本当に驚きました。

ただ、この21世紀にはカイラル通信……つまりインターネットですね。20世紀はスペイン風邪がありましたが、ネットがつながっていることで、僕らは生き残りました。そこで何が起こったかいうと、うちのスタジオでもリモートワークになったり、コンサートもライブイベントもなくなったりと、ネットに頼らざるを得ない状況でした。子どもたちも学校に行けず、遊ぶこともできず、ただ画面を見ているだけの生活になってしまった。これは当時、仕方のなかったことだと思います。テレビをつけると「これからはメタバースだ」と言っていましたが、移動することで偶然の出会いがあるなど、人間のコミュニケーションはそういうものじゃない。

――つまりSNSに対する監督自身の考え方に変化があり、それが作品に反映されたということでしょうか。

変な話かもしれませんが、「分断と孤立の危機があるから、つながりましょう」というテーマでゲームを作ったわけです。そして、それを出した後に本当にコロナが来た。コロナを実際に体験してしまった以上、単に「つながろう」だけでは済まされないと感じました。「棒となわ」のこともそうですし、その思いはいろんなシーンや設定に伏線として込められています。最後になってようやく分かる部分もあると思います。コロナ禍の中で僕が感じたこと、それはかなり強く作品に反映されています。

たとえば『DEATH STRANDING』の1作目のロゴには下にストランド(「なわ」)が出ています。あれは「つながり」を象徴する意匠ですが、「2」のロゴは上から糸が垂れています。『ゴッドファーザー』のロゴのようでもある。ドールマンもそうですし、兵器工場に行くと、敵が糸で浮いていたりする。いろんな糸の存在を感じさせる演出も多く入れました。つながるということは、よくよく考えるとどういうことなのか。6月末にぜひプレイしてみてください。皆さん、コロナを体験しているので、今回の作品も身近に感じられると思います。

キャスティングやアーティストのコラボについて

――新しいキャストを起用されていますが、キャスティングのプロセスや基準はどのようなものなのでしょうか。

オープニングで見せているように、サムとルーが暮らしているところにフラジャイルがやってきますよね。あれは前作を制作していた頃には書いていたシナリオです。2020年1月にレア(・セドゥ)さんに、続編が出てほしいとオファーしました。でもコロナ禍で収録はできず、結局は2~3年ちょっと遅れています。幸か不幸か、その間にPC版とディレクターズ・カット版が出せました。

今回はコロナ禍の中での制作だったため、撮影だけでも4〜5年かかっています。撮影はスキャンしてデータ化して、コスチュームを決めたり。映画みたいに3カ月をまとめて撮れない。作りながら定期的に撮る。かなりタフな作業なんです。こうなってくると誰と仕事するかは、お互いの絆です。まず僕が好きな人、その人が出演している映画を見て、一緒に仕事をしたいと思う人。その人とは僕自身が会いに行く。長い付き合いになるのでご飯を食べたりしながら「この人と一緒にやれるか」という基準で選んで、そこからエージェントを通して調整していきます。

アメリを演じたリンゼイ・ワグナーさんは僕の青春の人で大好きなんですけど、担当者の若い人は知らないんですよ。でも、毎日彼女の顔を見て作っていくうちに、やっぱりファンになっちゃうんですよね。実際、最後の収録が終わったときには、そのスタッフは『バイオニック・ジェミー』のBlu-rayを買ってました。「毎日見ていると、ファンになりました」、と。繋がりを作っておくとオーディションもしやすい。それは僕が開発している新作ゲーム『OD』でもそうです。

――『DEATH STRANDING 2』で特に気に入っているキャストの演技はありますか?

ニールとルーシーのところですね。ニールはルカ(・マリネッリ)さんが演じているんですが、僕がルカさんが出演している『マーティン・エデン』の推薦コメントを書いたんですよ。そうしたらルカさん本人から英語でメールがきました。子どもの頃から僕のファンで、僕の書いたコメントを読んだそうです。

マッツ(・ミケルセン)さんのファンの方はがっかりするでしょうが、クリフの物語は完結したので再び続編で出すのはよろしくない。ただクリフを演じたマッツさんを越える人をキャスティングしなければならない。マッツさんを超える人なんて、存在するのだろうか? と思いますけど(笑)。そこでルカさんを思い出して、オファーしました。

当時、ニールの相手役としてルーシーを演じてくれる人を探していたんですが、ルカさんから「相手役はもう決まってるのか?」という話が出てきまして、「まだ決まっていない」と言うと「じゃあ僕の妻はどう?」と。奥さんのアリッサ・ユングさんは、女優だけでなく映画監督もするみたいで。彼女と実際に会って、カウンセラー役としても抜群だったのでオファーしました。

それでニールとルーシーのシーンを撮ったんですが、ほとんどふたりっきりのシーンも多くて、それがちょっと面白くてですね……。ルカさんは舞台俳優もやっており、アリッサさんは女優であり、映画監督でもある。僕を置いて監督をやろうとしたこともありました(笑)。

パフォーマンス・キャプチャーの収録するスタジオにはメイクの人とか、記録係とか、いろんな人がいるんですよね。ニールとルーシーのシーンは、みんな魅入っていました。あれはちょっと今までなかったです。それぐらいのすごいシーンが撮れたということです。

――楽曲を提供しているウッドキッド氏とのコラボは、どのように実現したのでしょうか。その内容はどのようなものになるのでしょうか。

2020年1月のパリのイベントで、ホテルに帰ろうとしたときに「ヒデオのファンです。ミュージシャンです」と、ウッドキッドさんがロビーに来てくれたんです。そうすると彼が「今、作っている曲を聴いてほしい」と言ってきたんです。それを聴いたら最高の曲で、それが「ゴライアス」でした。まだ発売されていないときで、それで彼に惚れまして。

日本に帰って彼のPVを見たら、なんと『DEATH STRANDING』みたいなビーチやクジラが登場する世界観で驚きました。前作でコラボしたロウ・ロアーのフロントマンであるライアン・カラジヤさんが亡くなったので、「2」の楽曲をどうしようかなと思ったときに、ウッドキッドさんにオファーしたら快諾していただきました。

ただライアンさんの遺族から「未発表の曲がある」とメールがきまして。ミックスして使ってほしいと言われました。さすがに僕はライアンではないので、最初は断りました。ただ去年に、楽曲がミックスされたアルバムを送っていただいたので、そのなかから何曲かは使っています。マッツさんに変わる俳優も心配でしたが、音楽も心配で「ロウ・ロアーを超える音楽体験はあるのか」と僕のSNSにもメッセージがくるんです。イベントでウッドキッドさんの楽曲を発表したんですけど、世界中の評判がよくて安堵しました。後でウッドキッドさんからも「プレッシャーだった」というメッセージがきましたね。

――ゲーム内で使用される楽曲はどのように選定されているのでしょうか。また監督の音楽の好みはどの程度、反映されるのでしょうか。

前作同様にサウンドトラックは、ルド(ルドウィグ・フォシェル)にお願いしています。ただ、ウッドキッドさんなど、僕自身が勝手に曲を入れてしまうこともある。ミュージシャンは僕が普段から聴いていて好きな人たち。キャスティングと一緒で、僕が直接連絡を取って曲を使わせてもらったり、彼らが新曲を書きたいとキャッチボールして作った曲を使っています。

――『DEATH STRANDING 2』の制作の過程でもっともやりがいを感じた部分はどこでしょうか

コロナ禍で孤立した状態で企画書を作っていて、しんちゃん(新川洋司氏)とも週に1回顔を合わせる程度で、ほとんどは顔の見えない人たちと仕事していました。おそらく、どこのスタジオでもそうだったと思います。現場には集まれない、撮影もできない、どうしたらいいのか。そういうなかでも、なんとか皆さんに協力してもらいながら制作を進めることができました。

パフォーマンスキャプチャーを本格的に始めたのは2021年くらいだったでしょうか。でもその頃は、僕がロサンゼルスのスタジオに行くことは禁止されていたので、東京にいながらリモートでつないで、現地にいる俳優をディレクションするしかない。スマホやiPadとか、あらゆるカメラを駆使してするんですけど、リモートでディレクションするのは本当に気が狂いそうになります。

困り果てていたところ、ソニーの本社の方に窓みたいな双方向で音声のやり取りもできるモニターを2枚貸してもらって、それでなんとか収録できました。それでもやっぱり大変でしたよ。たとえば横で誰かが作業していると、「ああ、ここはこうしよう」といった発見や気づきがあるんですよね。でも、それが完全にリモートになると、報告のタイミングや内容が遅れてしまうことが多くなります。なにかミスがあってもすぐには発覚しない。それでもなんとか無事に完成にこぎつけられそうです。当時は「完成はもう無理だ」と本気で思っていました。

これは「つながり」をテーマにしたゲームです。ただ、つながるべきかどうかということ自体、いったん置いておいてもいいと思っています。それでも皆さんとお会いしました。この「つながり」は、もう消えることはありません。その体験と、『DEATH STRANDING』のなかでのバーチャルな体験を、重ね合わせていただいて、これからの時代の感覚と接続してもらえたらと思っています。

――ありがとうございました。

『DEATH STRANDING 2: ON THE BEACH』についてもっと詳しく知りたい人は、本作を30時間プレイした感想や、主要スタッフインタビューもチェックしよう。

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