水曜日, 4月 30, 2025
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学校銃乱射事件の犯人の多くは「銃を”絆や愛情の象徴”とみなす環境」で育っていた


学校で突如鳴り響く銃声が人々の日常を一瞬で奪います。

繰り返される「学校銃乱射事件」という悲劇はどうして生じるのでしょうか。

ドイツ・エアフルト大学(University of Erfurt)のアン・ナサウアー氏は、米国で起きた83件の学校銃乱射事件を分析。

犯人の多くが、銃を「愛情や絆、帰属意識の象徴」とする環境で育ってきたことを発見しました。

研究の詳細は、2025年4月23日付の『PLOS ONE』誌で発表されました。

目次

  • 学校銃乱射事件の犯人に共通する背景とは?
  • 学校銃乱射事件の犯人は、銃を「愛や絆の象徴」とする環境で育っていた

学校銃乱射事件の犯人に共通する背景とは?

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事件現場のサンディフック小学校 / Credit:Wikipedia Commons

2012年12月14日、米国コネチカット州ニュータウンのサンディフック小学校で最悪の乱射事件が起きました。

午前9時30分ごろに20歳の犯人が校舎に侵入。6歳から7歳の児童20人と教職員6人の命を銃で奪いました。

わずか数分間の出来事でしたが全米を悲嘆と衝撃に包みました。

いったいどうして、このような事件が後を絶たないのでしょうか。

学校銃乱射事件に関する議論では、しばしばアメリカ特有の銃文化が原因として挙げられます。

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犯行の原因は、「銃文化」? / Credit:Canva

しかし、銃文化が犯人の人生にどんな影響を与えているのか、体系的に分析した研究はほとんどありません。

そこでエアフルト大学のナサウアー氏は、従来の「所有率」や「犯人の精神状態」だけに注目するのではなく、銃が人々にとってどんな価値をもち、日常でどのように使われていたかを調査しました。

彼女は、代表的な24件の事件を詳しく調べて家族や友人との銃の関わりを分析しました。

その上で1966年から2024年までのアメリカの学校銃乱射事件83件すべてを比較し、共通する文化的パターンを浮き彫りにしました。

資料には、裁判所の文書、警察の報告書、メディア記録、銃撃犯自身の文書や動画を用いています。

さらに銃を手に入れる難しさを四段階に分類し、数値で評価することで全体の傾向を明らかにしました。

学校銃乱射事件の犯人は、銃を「愛や絆の象徴」とする環境で育っていた

調査の結果、学校銃乱射事件の犯人の多くは、銃を「家族・仲間との絆・愛情、帰属意識、アイデンティティの象徴」とする環境で育ってきたということが判明しました。

データのある52件のうち41件は、父親や祖父母と射撃や狩猟を家族行事として体験しています。

その結果として家族の大切な思い出と結びついた「銃への愛着」が生まれていたのです。

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学校銃乱射事件の犯人の多くは「銃を”絆や愛情の象徴”とみなす環境」で育っていた / Credit:Anne Nassauer(University of Erfurt),PLOS ONE(2025)

たとえばAさん(仮名)は2歳でおもちゃの銃を手にし、5歳でBBガン、10歳で実銃へと段階的に経験を積みました。

家族写真には迷彩服姿で笑顔を浮かべる彼の姿が残されており、その映像は家族イベントの象徴となっていました。

また友人の家族が主催する射撃クラブに参加したCさん(仮名、14歳)は仲間と共に銃を撃つ楽しさがコミュニティ意識を強める経験だったと証言しています。

さらに18歳以上の加害者は合法購入した銃を唯一の趣味や心の支えと表現し孤立や不安を和らげる存在にしていました。

学校銃乱射事件の犯人の中には、銃に対して強い思い入れを持ち、銃を「人生をかけて愛するもの」「唯一の友達」と表現する者もいました。

加えて、銃へのサクセスのしやすさも共通していました。

データのあった81件のうち約97.6%で「非常に容易」または「容易」に銃へのアクセスが可能でした。

たとえば、家庭内で鍵をかけずに銃が保管されており、子どもでも簡単に手に取れる状態にありました。

これらの結果は銃文化が日常の絆づくりと密接に結びつきながら、同時に犯罪の温床にもなり得るという複雑な状況を示しています。

そして銃乱射事件を防ぐためには、銃へのアクセスをより厳しく制限すべきだと分かります。

また家庭や学校での銃の扱われ方を見直し、安心して過ごせる居場所をつくることも大切です。

こうした研究と対策が世界中で進み、学校銃乱射事件という悲惨な事件が繰り返されないことを願うばかりです。

全ての画像を見る

参考文献

School shooters often grew up with guns as key symbols of bonding and belonging
https://www.psypost.org/school-shooters-often-grew-up-with-guns-as-key-symbols-of-bonding-and-belonging/

Most school shooters grew up with guns as key part of social life, study suggests
https://www.eurekalert.org/news-releases/1080718

元論文

“The only friend I had was my gun”: A mixed-methods study of gun culture in school shootings
https://doi.org/10.1371/journal.pone.0322195

ライター

大倉康弘: 得意なジャンルはテクノロジー系。機械構造・生物構造・社会構造など構造を把握するのが好き。科学的で不思議なおもちゃにも目がない。趣味は読書で、読み始めたら朝になってるタイプ。

編集者

ナゾロジー 編集部

フラッグシティパートナーズ海外不動産投資セミナー 【DMM FX】入金

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