金曜日, 5月 2, 2025
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世界初「ティラノ革のバッグ」を作るプロジェクトが始動!


ヘビ革やワニ革など動物を使った革製品がありますが、現在では、動物福祉や環境への配慮から非常に問題視されています。

そうした背景の中で、まさに時代の最先端を行くプロジェクトが始動しました。

英国のマーケティング企業「VML」、バイオマテリアル企業「Lab-Grown Leather Ltd.」、ゲノム工学スタートアップ「The Organoid Company」は最近、「ティラノサウルス・レックスのDNAを使って人工的な革製品を開発する」という前代未聞のプロジェクトを発表したのです。

恐竜の革製品を作るのは世界初の試みであり、同時に、生きた動物を使わないという点で環境にも優しいプロジェクトとして期待されています。

しかし、どうやってTレックスの革を復活させるのでしょうか?

目次

  • 恐竜の革製品を作るプロジェクトが始動!
  • ティラノサウルスの革はどう再現するのか?

恐竜の革製品を作るプロジェクトが始動!

今回のプロジェクトの目的は、従来の動物由来のレザーに代わる、持続可能かつ倫理的な高級革製品の開発です。

一般的なレザー生産では、牛や羊などの動物が屠殺(とさつ)されるだけでなく、大量の水資源が消費され、なめし処理に使用される「六価クロム」などの有害化学物質によって環境汚染が引き起こされます。

これに対し、共同研究チームはこうした環境負荷を大幅に低減しながら、動物虐待に関する懸念も払拭する新たな道を示しています。

Lab-Grown Leather社は現在、細胞培養によってレザーを生み出す「足場不要型(scaffold-free)」の技術を持っています。

バイオプリンティング技術における「足場」とは、細胞が三次元的な構造を形成・維持するための「支え」や「骨組み」となる人工構造物のこと。

しかし足場の使用は、余分な資源の消費や製造工程の複雑化、それに伴うコストの増大といった問題点があります。

一方で、足場不要型は細胞自身が自ら3次元的な構造を形成し、本物の革と同等の質感と強度を再現するという画期的な方法です。

生きた動物も使用せず、環境にも優しい持続的な方法として大いに注目されています。

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※ 画像はイメージです/ Credit:Generated by OpenAI’s DALL·E,ナゾロジー編集部

その新素材開発にあたって選ばれたのが、なんと白亜紀の王者「ティラノサウルス・レックス(Tyrannosaurus rex)」でした。

研究者らは、Tレックスレザーについて「高級革製品に求められる自然な耐久性、修復性、触感を提供する」と述べています。

加えて、話題性という観点でもTレックス以上のアイコンはありません。

「恐竜の革で作られたバッグ」

このインパクトは、ブランド戦略としても抜群といえるでしょう。

では、ティラノサウルスの革をどうやって再現しようというのでしょうか?

ティラノサウルスの革はどう再現するのか?

プロジェクトチームは、2007年に発表された「Tレックスの化石から抽出されたコラーゲンの断片」に着目しています(Science, 2007)。

コラーゲンは脊椎動物の皮膚や骨に広く存在するタンパク質であり、レザーの繊維構造を構成する重要な素材です。

チームはまず、Tレックスのコラーゲンのアミノ酸配列を分析し、それをもとに遺伝子情報を推定することを計画しています。

その情報を「現存する最も近縁の生物」とされるニワトリのDNAと照合し、必要な遺伝子配列を人工的に合成。

これをバイオレザー用に設計された細胞株に導入し、Lab-Grown Leather社のプラットフォーム上で人工的な恐竜革へと育てていくというのが基本の流れです。

同社のElemental-X(エレメンタル・エックス)という製品ラインで生産されるこの革は、完全生分解性でありながら、高級レザーに求められる耐久性や修復性、触感を備えているといいます。

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Tレックスの革を再現するには複雑な工程を経なければならない/ Credit: VML, Lab-Grown Leather Ltd. and The Organoid Company announce partnership to create world’s first T-Rex leather(2025)

しかし、ここで大きな疑問が残ります。

そもそも、TレックスのDNAはこれまで一度も完全な形で抽出されたことがなく、2007年のコラーゲン検出も、後に「実験器具に付着していたダチョウやワニのコラーゲンではないか」との疑念が指摘されています。

たとえ化石中にわずかなタンパク質が残っていたとしても、6600万年という時間は遺伝子の完全な復元にはあまりに長く、科学的な再現には限界があるのが現実です。

つまり、現時点で「Tレックスの革を復活させる」というのは、極めて困難な状況にあります。

それでも「太古のコラーゲンの痕跡をもとにして未来の素材を作る」という発想自体は、合成生物学とブランド戦略の境界を大胆に越える挑戦であり、多くの人の関心を集める試みであることに間違いありません。

本当にTレックスの革でできたトートバッグが誕生するかどうかは、まだ未知数です。

しかし、このプロジェクトは「革新的な素材開発とは何か」「持続可能性と物語性を両立させたモノづくりとは何か」という問いを私たちに投げかけています。

もしかしたら近い将来、恐竜の遺産が現代ファッションの常識を大きく変えるかもしれません。

全ての画像を見る

参考文献

VML, Lab-Grown Leather Ltd. and The Organoid Company announce partnership to create world’s first T-Rex leather
https://www.vml.com/news/vml-lab-grown-leather-ltd-and-the-organoid-company-announce-partnership-to-create-worlds-first-t-rex-leather

World’s First ‘T. Rex Leather’ Is Claimed to Come From Dino DNA. Is This For Real?
https://www.sciencealert.com/worlds-first-t-rex-leather-is-claimed-to-come-from-dino-dna-is-this-for-real

ライター

千野 真吾: 生物学に興味のあるWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。

編集者

ナゾロジー 編集部

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