アジア通貨はドル安を背景にかつてない高値に達しており、域内の中央銀行は行き過ぎた通貨高を抑制するため介入を余儀なくされている。
香港金融管理局(HKMA、中央銀行に相当)は2日、香港ドルと米ドルとのペッグ(連動)制の防衛に向け、過去最大規模の米ドル買い介入を実施。台湾ドルが1988年以来の大幅高を記録したことで、台湾中銀も介入に踏み切った。オフショア人民元は昨年11月以来の高値を付けた。
こうしたボラティリティーは、トランプ米大統領による関税政策の変動で米国のリセッション(景気後退)懸念が強まる中、世界の準備通貨であるドルからの資金流出の影響が金融市場全体に波及する可能性を示している。投機的トレーダーは先週、ドルに弱気なポジションを昨年9月以来の高水準に積み上げた。投資家の間で米国資産の保有に消極的な姿勢が広がっていることがうかがえる。
「米国売り」の流れの中で、円や人民元を含むアジア通貨は、レパトリエーション(自国への資金回帰)に伴う買いと代替投資需要の恩恵を受けている。米中両国の政府は貿易戦争を巡る姿勢を軟化させているように見えるものの、この戦略自体は依然として維持されているようだ。中国は、米国側との通商協議の可能性を検討中だとしている。

ジェフリーズの外国為替グローバル責任者、ブラッド・ベクテル氏は「ドルの価値が下がれば、今回の貿易摩擦の多くは自然と和らぐだろう。したがって、アジア通貨のドルに対する若干の下落に備えることは理にかなっているかもしれない」と指摘した。
2日のアジア外為相場は急伸し、ブルームバーグ・アジア・ドル指数は2022年以来の上昇率を記録。MSCI新興国通貨指数は終値ベースで過去最高値を更新した。
新興国の通貨が上昇すれば、外国資本の流入を促し輸入コストを押し下げる一方で、輸出企業にとっては自社製品の世界的な競争力が低下するリスクがある。
ゴールドマン・サックス・グループのカマクシャ・トリベディ氏らアナリストはリポートで、「ドルが圧迫される中、米国で景気後退リスクが高まり、金利が低下する可能性もあるため、アジアの輸出企業にとって、ドル預金を維持するリスクリワードのバランスはこれまでと大きく異なっている」と指摘。人民元と台湾ドル、マレーシア・リンギットなどの通貨が上昇する可能性が高いとの見方を示した。

トランプ政権発足後100日間にドル下落
Source: Bloomberg
原題:Dollar’s Decline Is Fueling Dislocations Across Asian Currencies(抜粋)
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