CP+2025の会期中、ソニーαのキーマン2名に短時間ながら話をうかがう機会を得た。
お話しいただいたのは、ソニー株式会社イメージングエンタテイメント事業部の大島正昭事業部長と、同レンズテクノロジー&システム事業部の岸政典事業部長。
海外では「α7 IV」も好調
——発売以来、「α1 II」が品薄の人気になっています。先代「α1」に続いて最高レベルの性能を目指した機種ですが、現時点ではどういったユーザー層を想定されているのでしょうか。
大島: 高解像度とスピードを両立したフラッグシップということで、もともとはトッププロを中心にお送りしたのが「α1」でした。さらに幅広いお客様に体験していただきたく、「α1 II」では「α1」からの進化を含めてお出ししました。世界中で好評を持って受け入れていただいています。実際、「α1」もラインアップに残しているのですが、想定以上に「α1 II」への需要が高いと感じています。
——プロ向けの製品といえば、グローバルシャッター採用の「α9 III」もあります。現在のスポーツシーンでのソニーのシェアは?
大島: 着実に上がっていると感じます。フォトグラファーがシーン毎に機材を使い分けているのを目にしていて、同じフォームファクター、同じ操作性を提供できたのは良かったです。「α9 III」はもちろんスポーツの現場で貢献しているカメラですが、グローバルシャッターという特徴により、ボリュメトリックキャプチャーなど、スポーツ以外での同時露光の世界に広がっています。
——近年は「α7C II」がヒットし、本来ベーシックモデルを謳っていた「α7 IV」の影が薄く感じます。後継機の話もまだのようですし、どうお考えでしょうか。
大島: 日本だとそうなのでしょう。ただし、ワールドワイドだと「α7 IV」の方がまだ台数が出ていますね。「α7 IV」「α7C II」のどちらも、お客様の多様性を広げるキーモデルとして好評いただいています。
VLOGCAM戦略と動画クリエイターの広がり
——「VLOGCAM ZV-E10 II」ですが、「VLOGCAM ZV-E10」よりもスチルカメラとしての完成度が高まった印象です。VLOGCAMへの戦略は変わったのでしょうか?
大島: 戦略そのものは変わっていません。「VLOGCAM ZV-E10 II」は、よりステップアップしやすいところを目指したモデルで、実のところ我々自身は、「より動画に振ったモデルとみられるのでは?」と考えることもありました。スチルも充実しているとみていただけるなら、がんばったエンジニアの成果なのでしょう。
——フルサイズの「VLOGCAM ZV-E1」もあります。こちらは発売から間が空いていますが、現在はどのような役割を果たしているのでしょうか。
大島: E10系やZV-1系などより、領域としてはニッチなモデルと考えています。ポテンシャルをわかっていらっしゃる方が、FX3などのサブカメラとして使われるケースが見られますね。もちろん我々はVLOGCAMのトップとしてみていますし、ここからさらにステップアップして、FXに目を向けていただけるような役目も果たしてくれていると考えます。
——さらに発売から時間がたっているのが「α7S III」です。後継機に期待したいのですが、FXや他のαとの関係性はどうなっていくのでしょうか。
大島: 昨今、ビデオクリエイターが多様化していると感じています。それにあわせ、例えばFXと「α7S III」を使い分ける方もいらっしゃれば、「α7S III」でスチルとビデオの両方を撮りたい方もおられます。そういう意味では「α7S III」とFX系を用意したことで、多様化する使い方に対してきちんと対応できている。ライブストリームや空間撮像なども多様化の例でしょう。それらに対応するにはボディだけでは限りがあるので、レンズでもきちんと応えていく必要がありますね。もちろん、「α7S III」は発売から5年がたち、色んなリクエストが来ることは想定してます。
真正性実現への取り組み
——最新ファームウェアにより、1月には「α1」「α1 II」「α9 III」が、3月には「α7 IV」が電子署名書き込み機能に対応しました。これについての狙いは?
大島: 撮影されたものであることを証明する「電子署名」を写真データに付けることで、カメラが撮影したデータの真正性実現に取り組んでいます。新たにC2PAフォーマットに対応したことで、C2PAのワークフローの中でも流通できる電子署名になりました。リアルが持つ価値を担保しつつ、AIが手助けできるクリエイティビティも取り入れる。両方あるからこそ成り立つところを目指しています。
まだ一般の方のクリエイターの権利保護までは達していませんが、世界の通信社などのワークフローの中での採用を進めていただいています。商用化を一部入れ込んだ形で、サービス展開をはじめたところです。
ニーズに対応する新規性の高いレンズを
——レンズとしては「FE 16mm F1.8 G」「FE 400-800mm F6.3-8 G OSS」を新たに発表しました。最近、Gレンズが元気だと感じますが、G MasterとGの関係性に変化はありますか?
岸: これまで通りですね。一切の妥協なく、最新の技術を惜しみなく投入したのがG Masterで、Gレンズはその技術をカスケードダウンしながら、よりリーズナブルに最新の技術を取り入れたシリーズで構成されています。
——先ほど多様化の話がありましたが、レンズ側から見た多様化への対応とはどういうものなのでしょうか。
岸: 今回の2本がまさにそうです。例えばFE 400-800mm F6.3-8 G OSSですが、野鳥撮影をする方から「800mmを使いたい」という声は多くいただいていました。しかし800mmの単焦点レンズだと使いどころが限られ、結局400mmも一緒に持って行く。だったら400-800mmのズームレンズにしたら、それぞれの焦点距離の良さを生かしつつ、問題を解消できるのでは……といった具合です。400mmで被写体を捉えてからズームアップするような使い方を想定して、ズームリングを軽くするなど、新しいデマンドをキャッチアップして商品に展開していますね。
——最近のソニーは昔ながらの王道の焦点距離や開放F値ではないレンズを出していますが、それが理由の1つなのですね。
岸: いままでのトラディショナルな製品を磨き上げるのも大事ですが、それ以外にも需要はあります。我々のレンズに「FE 14mm F1.8 GM」がありますが、星を撮る方々から、レンズ前面にソフトフィルターを付けたいという声がありました。超広角・大口径、かつフロントフィルターも付けられる「FE 16mm F1.8 G」を出すことで、その声に応えられればと考えています。
——しかも小型軽量です。他社も含め、現在はレンズを軽く小さくするトレンドになっているのでしょうか。
岸: 小型軽量には需要があります。そういう意味では「FE 28-70mm F2 GM」は驚きの声を持って迎えられました。F2だからといって重くすると特殊なレンズになります。いままで同じような使い方、普通に使えるF2ズームを目指しました。
——F2.8ズーム3本もII型で小型軽量になりましたしね。
岸: プロからも「1日中走り回るときなど、体力的にありがたい」と好評です。小型軽量化については、さらに技術を加速させていきたいですね。