「アスキースティックL5」や「ジョイボール」といったファミコン用入力機器を,PC用の左手デバイスとして使う動画「Raspbeery Pi Picoで左手デバイスを作ってみた」がニコニコ動画で公開されている。
35年前の入力機器が故障もせずにPCのアクセシビリティを高めるために使えるというのは驚くべきもので,当時を知る人にはうれしいものがあるだろう。
事の発端は,gangi-man氏(リンク)が「Xbox Adaptive Joystick」を見た際,形が似ているということで1990年発売のファミコン用入力機器であるアスキースティックL5を思い出したことにある。
Xbox Adaptive Joystickは障害を持つ人でもゲームを楽しめるようにと開発された,片手で扱うジョイスティックである。そして,アスキースティックL5は片手でゲームを操作できるコントローラで,もう片方の手でマッピングをしたり,攻略本を読んだりといった用途が想定されている。
障害を持つ人向けと,空いた片手を活用するといった出発点の違いはあるものの,片手デバイスという点では共通しており,デザインも似ている。
Xbox Adaptive Joystick(上写真)とアスキースティックL5(下写真)
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アスキースティックL5を使ったファミコンのプレイ風景。片手でゲームを遊べる
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そこで氏は,アスキースティックL5を現在のPCで活用することを思いついた。アスキースティックL5とPCの間に,小型のマイコンボードであるRaspbeery Pi Picoをつないで仲介させるという形式だ。アスキースティックL5の信号は,Raspbeery Pi Pico上で動作するプログラムを介し,PCにはUSBデバイスからの入力として伝わるのである。
これを氏はアスキースティックL5に対しては「ファミコンのふり」,PCに対しては「HID(ヒューマンインターフェースデバイス)のふり」をさせると表現する。こうして1990年のコントローラと2025年のPCがつながり,問題なく動作させることができたのだ。
アスキースティックL5が出力する信号を解析
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アスキースティックL5とPCをRaspbeery Pi Picoで仲介させる
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プログラムはTinyUSBが使用されている。キーアサインを変える場合は再度ビルドし直す必要があるとのこと
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アスキースティックL5には,十字キーと[SELECT/START]ボタン,[A/B]キーのトリガーが存在するが,氏のプログラムではこれらのボタンに対する2種のプリセット「キーボードモード」と「マウスモード」が用意されているという。キーボードモードでは十字キーを[W/A/S/D]キー,[SELECT/START]ボタンを[CTRL+V/CTRL+C]キー,トリガーを[SPACE/E]キーに割り振っている。マウスモードは十字キーでマウスカーソルを動かし,トリガーでクリックもできるという。
PCでネットを見て回る際は,キーボードではなくマウスだけを使うことは少なくないが,アスキースティックL5であればテーブルも必要なくブラウジングができるということだ。「PCの大きな画面を使い,できるだけ楽な姿勢でネットを巡回したい」という人には便利な機能といえるかもしれない。
「キーボードモード」(上写真)と「マウスモード」(下写真)
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こうしてPCとファミコン用入力機器の接続が実現でき,氏は「便利な使い方がある」としてジョイボールの連射機能で「クッキークリッカー」をプレイする……というところで動画は幕を閉じる。
gangi-man氏は,このほかにも3Dプリンタで孫の手を武器化する「武装孫の手を作る」,ひらがなや漢字にどれだけ水を溜められるかを測定した「ひらがな水汲み選手権」,紙パックの日本酒を模したボディに照明を仕込んでクラブシーンを盛り上げるデバイス「デジタル力士のご紹介」といったユニークな動画を公開しているので,興味のある人はチェックしてみよう。
ニコニコ動画「武装孫の手を作る」(リンク)
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ニコニコ動画「ひらがな水汲み選手権」(リンク)
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ニコニコ動画「デジタル力士のご紹介」(リンク)
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ファミコン時代のアスキースティックL5と現代のXbox Adaptive Joystick,ともに操作のしやすさを追求したデバイスであり,35年を経た両者のデザインが似ているというのは興味深いものがある。Xbox Adaptive Joystickの場合は障害を持つ人に向けている部分が違いであり,これは時代の流れを示しているといえるだろう。
「アスキーグリップ」「アスキースティックスーパーL5」「グリップコントローラPS」「スーパーロボット大戦コントローラ」など,片手用デバイスはさまざまなプラットフォームやタイトルで発売されている。振り返ってみると,現代のPCシーンにマッチしたものもあるかもしれない。