「もう長すぎた…」宇宙飛行士・野口聡一氏が57歳でJAXAを辞めた納得のワケPhoto:Jun Sato/gettyimages

2022年にJAXA(宇宙航空研究開発機構)を退職した、宇宙飛行士・野口聡一氏。定年前の57歳というタイミングで、長年勤めたJAXAを辞めようと思ったのはなぜなのか。欧米の働き方にも触れてきた野口氏が「定年前退職」のススメを解く。※本稿は、野口聡一『宇宙飛行士・野口聡一の着陸哲学に学ぶ 50歳からはじめる定年前退職』(主婦の友社)の一部を抜粋・編集したものです。

日本的なメンバーシップ型雇用が
労働現場に悪影響を与える

 なぜ、日本の労働現場はこんなにすさんでしまったのでしょうか。

 私は、日本的な雇用制度が一定程度の悪影響を与えているからだと考えています。

 日本特有の「メンバーシップ型雇用」のことです。個々のスキルよりも、集団にちゃんと帰属して組織の構成員としてメンバーシップを得ることが優先される雇用形態です。

 このため、社会人として訓練を受けていない22~23歳の大学卒業ホヤホヤの若者が雇用され、あとは組織の中にいることに意味があるという、不思議な社会集団が形成されるのです。

 会社とは本来、ある特定の機能を果たすために結成された機能集団であって、社員はスキルを発揮して金銭的な収入を得るという契約に基づいて集まっているはずです。

 なのに日本では、機能を果たすよりも前に、運命共同体になってしまっている。生まれたときからそこに所属しているかのような幻想が生まれてしまい、社員に会社のルールを受け入れさせ、その中で成長するのが当たり前になっていました。