「そうは問屋が卸さない」は古臭い!?「現代版」を真剣に考えてみたPhoto:PIXTA

「そうは問屋が卸さない」を
アップデートしてみた

　ここ数年、ビジネスシーンやメディアで「おじさん構文」や「おじさん言葉」と呼ばれる表現が注目を集めている。

　そこには、例えば「一丁目一番地」とか「全員野球」というような、おじさん世代が当たり前のように使ってきた言葉で、若い世代には通じにくい、あるいは古臭いと感じられるものが含まれる。

　そうした中で、私自身も先日、若い人から「なぜそんなに古めかしいことわざを使うんですか」と素朴な疑問をぶつけられた。それが「そうは問屋が卸さない」という言い回しである。

　よく考えてみれば、今の若い世代が生活する中で、いわゆる「問屋」が圧倒的な力を持っているイメージは確かに薄い。むしろスーパーマーケットやコンビニエンスストア、あるいはネット上のプラットフォームを通じて商品を手に入れるのが当たり前になっているからだろう。

　そうした日常感覚の中で「問屋がうんぬん」という言葉を聞いたときに、「どうして問屋の都合で物事が決まるんですか？」と首をかしげたくなるのも無理からぬことと言えるだろう。

　しかし、これは江戸時代から伝わることわざであり、日本の商取引の歴史を端的に映し出している。さらに言うと、時代の推移とともに「問屋」に相当する大きな流通の要こそ変わっていったものの、この言い回し自体は一般化して「物事はそんなに思い通りにはいかない」という意味となって生き延びてきた。

　若い人からの質問を受けて改めて振り返ってみると、この言葉をきっかけに日本社会の流通やビジネスの仕組みがどう変化してきたかが見えてくる気がする。

　そこで今回では、歴史をたどりながら、この言い回しがどのように変わってきたか、そして今後どうなるのかについて考察してみたい。